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ビークルファン・T BOARD LIGHT……6万6000円(10%消費税込)
2022年、道路交通法の一部を改正する法律案が閣議決定された。現在開催中の第208回通常国会で法案が成立すれば、2024年頃までに施行されると考えられる。法案の主な内容は電動キックボード/立ち乗り電動スクーターの運転資格は16歳以上で、運転免許は不要。ヘルメット着用は義務ではなく推奨といった規定が含まれる。
国土交通省が2月28日に開催した第3回新たなモビリティ安全対策ワーキンググループでは、電動キックボードや立ち乗り電動スクーター等の新たなモビリティ(特定小型原動機付自転車)についての「車体」の安全確保のために必要となる技術基準等に関する検討が行われた。
道路運送車両法の規制緩和に向けて、国交省の事務局側が提示した案では、特定小型原動機付自転車」の定義は、最高速度は15〜20km/h、寸法は自転車と同程度(長さ190cm×幅60cm内)に収まる車体であること。動力は電動に限り、定格出力は600w以下。乗員は1名としている。また、ブレーキに関しては、「油圧式ディスクブレーキ」と「回生ブレーキ」のように独立した2系統を有する必要があるなど、現在、保安基準の内容が細かく検討されている。
規制緩和の一方で、従来タイプのキックボードに乗ってみた。
今回試乗したT BOARD LIGHTは歩道走行を想定しているため、最高速度を時速6km/hにリミッター制御されているタイプ。車両としては高齢者が利用している電動カートと同じ区分となる。つまり運転免許不要で、年齢制限もなし。だれでも気軽に運転できるというのが大きな特徴だ。車体重量は10kgと軽量で、ハンドル部を折り畳むことができるため、両手で(力のある人なら片手で)持ち運び可能。クルマへの積み込みも容易にできるのが魅力。
充電は家庭用100Vを利用。1回の充電(2~4時間)で、航続距離は20km(使用条件により前後する)。モーターはフロントインホイール式を採用し、フロントタイヤが回転するしくみ。「パワーモード」への設定変更により、坂道走行時でも時速6km/hをキープすることができる。
最大乗車重量は120kg。前後タイヤはノンパンクタイヤが装備済み。街中や出先での移動など、楽しく便利に利用できるのが特徴だ。
歩道において最高速度6km/hは妥当なスピード。自転車専用道路を走るならば……
T BOARD LIGHTは右グリップのホルダー箇所がスロットル(アクセル)で、親指にてプッシュすれば前進するしくみ。左グリップホルダーはブレーキとなっており、親指でプッシュすると停止する。なお、リアフェンダーを足で押し下げても摩擦力で停止するのが嬉しいところ。
T BOARD LIGHTの最高速度は、最高時速6km/hに設定。このスピードは、大人の早歩きに相当するもの。歩行者や自転車が行き交う歩道走行を前提にしているため、あえて歩行速度である6km/hに抑えられている。実際に歩道を走ってみると、歩行者との速度差がほとんどないので、危険や恐怖を感じることはなく、万が一、歩行者と接触しても互いにケガをすることはあまりなさそうなスピードだと感じた。
走り方は簡単。電動モーターなしのキックボードをスタートさせる要領で、片足で地面を軽く蹴り出しながらスピードを乗せつつ、右グリップホルダー部(突起部)のスロットルを親指で押し下げながらスタート。するとフロントホイールに設置されたインホイールモーターが作動し、スムーズに前進する。
今回試乗したのは、ビークルファン本社&ショールームのある、東京都江戸川区松江の歩道。庶民的な風情が漂う同地の歩道には、近隣にスーパーマーケットや商店もあるせいか、常に多くの歩行者や自転車が行き交う。また、お年寄りが多いのも特徴だ。
最高速度が6km/hに設定されたT BOARD LIGHTは、歩行者や自転車の多い歩道においては、極めて安全なスピード設定だと感じる。このスピードならば、仮に前を行く歩行者が突然進路を変えても、スーパーマーケットや店舗から自転車が飛び出してきても、瞬時に停車できる速度範囲だと思う。ただし自転車専用道路や路肩などを利用する場合、最高速度6km/hでの走行は、かなりのストレスとなるかもしれない。
なお、先述の通り、2022年3月4日(金)、道路交通法の一部改正案が閣議決定され、電動キックボードは今後16歳以上であれば運転免許証不要で乗ることができる見通しとなっている。このT BOARD LIGHTに関しても、この新たなルールに適応する様に、走行シーンに応じて、最高速度を任意に6km/h〜、15km/h、20km/hと切り替え可能なシステムを導入されれば、さらに便利になると感じた。
ただし、その一方で、極端に小さなホイールとほぼリジッドに近い車体構造かつ着座しないスタイルのまま20km/hで巡航し、路面のギャップや轍にハンドルをとられることはないのだろうか。車道脇を走っていて、路上駐車のクルマを20km/h以下の速度で追い越す際に、後続車に引っ掛けられたりしないだろうかなどなど、この新たな制度のことを考えると、頭に不安がよぎったのが正直なところ。そう考えると、「6km/hで歩道を走るT BOARD LIGHT」は、なかなか無難な選択なのかもしれない。
今回の閣議決定に伴い、ネットなどでは、「利用しやすくなる」という声がある一方、「危険じではないか?」「講習などで交通ルールを教えるべき」という意見が多数あるのも事実。現況、電動キックボードは利用者の常識(最低限の交通ルールを知ること)やモラルに委ねられている。ただし電動キックボードによる事故が増えれば、当然取り締まりや道路交通法も厳しくなってくる。利用者は自分で自分の首を絞めることないよう交通ルールを守り、事故ないよう安全運転を心がけて欲しい。