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短足犬は東海道をゆく!
日本橋出発はやっぱり正午前になった。毎度、早出を誓うのにきまって寝坊してしまう。ガチで楽しみなイベントだったら寝坊しないタカハシだが、東海道なんか走りたくて走ってるわけじゃないから、つい寝坊するんだろう。(←「おれ本気だしてない」系の言い訳)
東海道ガス欠チャレンジも、PCX、ハンターカブ、モンキー125、シグナスXに続いて、もうこれで5回目だ。いつもどおりに混みあう東京市街を、いつもどおりに京都をめざし、平常運転で走り出した。
復活ののろしをあげたDAX125
今回の東海道旅の相棒、ホンダ DAX125は、2022年に発売されたレジャーバイクだ。カブ系123cc空冷シングルに、クラッチレバーレスの4速リターン(だけど停止時はロータリー式なので、体感的には単なるロータリー)ミッションを備えている。
そろそろ払う年金の額よりも、貰う年金の額が気になる年頃のライダーなら、誰もがよく知るとおり、1960年代から原付ファニーバイクとして長らく人気を誇っていたDAXシリーズのリバイバル&スケールアップ版だ。
そしてDAX125に乗っていると、通りすがりの人にやたらと話しかけられる。彼らの第一声は、たいてい「新しく125が出たんですよね?」だ。
もともとDAXシリーズは、鋼板バックボーンフレームの短足胴長ボディを小型愛玩犬のダックスフントになぞらえて名付けられた原付バイク。1969年に発売されたダックスホンダ ST50がその嚆矢(こうし)となった。
その後、DAXはモデルチェンジを重ねつつ販売されたが、1981年型をもって生産を終了。1995年、50ccエンジンのまま「ホンダDAX」としていったん復活し、さらに27年を経た2022年、125エンジンを積んで華々しく2度目のカムバックを果たした。それが現行DAX125だ。
黒船撃破をねがった砲台跡
混みあう都心の道を抜け、パラつく小雨を衝いて国道15号を西へ。品川区の浜川砲台に立ち寄った。
この砲台は、幕末、ペリー提督ひきいる黒船の二度目の来訪が戦争になるだろうと踏んで、幕府があちこちに作ったもののひとつ。住宅地にある小さな公園にぽつんと大砲の原寸模型が置かれていた。
湘南はすでに夜
浜川砲台をあとにすると、陽はみるみる落ちて、気の早い冬の夕暮れが迫ってきた。吐く息でヘルメットシールドが白い。
横浜市戸塚区を西へ渡り、神奈川県道30号へそれて海岸線をめざす。まもなく道は藤沢市に入った。
すっかり陽が落ちた頃に辻堂海岸に着いて小休止。薄明りでもあるうちは、季節を問わずキャッキャうふふなムードをまき散らしまくっているクソむかつく湘南の海だが、さすがにとっぷり日暮れた冬の夜となれば、寂しく冷たい波打ち際にすぎない。海をひきあげ、そばを通りがかったイケメンサーファーすらも、ついイキるのを忘れ、寒そうに背中を丸めていた。
辻堂海岸をあとに、平塚まで国道134号を一気走り。駅前のバイク駐車場にDAX125を放り込むと、安宿までは徒歩5分。部屋に転がりこむとシャワーを浴び、コンビニ飯を掻き込んだ。ちょっと横になったとたん睡魔に襲われ、そのまま朝までぐうぐう眠り続けた。