モトコンポを速くするに数多くの方法が試されてきた。そもそも採用されたエンジンはロードパル用に開発された2ストローク単気筒49ccのAB12E型で、変速機構のない自動遠心クラッチ仕様。ところがベースのロードパルには2段変速が採用されていたので、この駆動系を移植することも可能。だが加工に要する労力の割に見合った速さとは言い難い。変速するため1速時の加速はもちろん別物になるのだが、エンジンが変わっていないから最高速もほぼ変わらない。それなら同じロードパル系エンジンのカレン用をそっくり移植してしまうのが効率的だし、パワーも加速も段違い。今回紹介するモトコンポは群馬県の今井義正さんが製作した1台で、カレンのエンジンを載せている。
ノーマルのモトコンポだと時速40kmを出すのが精一杯だが、カレンのエンジンに載せ換えることで一般道の制限速度くらいはラクに実現できてしまう。もちろん加速も段違いで、発進時には注意しないとウィリーしてしまうほどパワフル。見た目はそのままでも速いモトコンポが欲しい!という人にうってつけの載せ換え術なのだ。
そもそも基本構造が同じエンジンなので、モトコンポの車体にカレンのエンジンを載せるのは至極簡単。エンジンマウントが同じなので問題になるのはリヤショックの処理だけ。カレン用もモトコンポ用も長さが合わないため、ちょうど良いサイズのリヤショックを用意しなければならない。一般に市販されている汎用の280mmのものなら大体使えるが、車体側やエンジン側のマウントを加工しなければならない場合もある。今井さんがどうされたかというと、ガレージの転がっていた適当なものを入れたらちょうど良かった、とのこと。
カレンエンジンに載せ換えて変わってしまうのがホイールベース。カレンのエンジンはモトコンポ用より寸法が若干長いのだ。そのためロングホイールベースになってしまう。またタイヤもカレン用は10インチでモトコンポ用が8インチと違いがあるため、混成にしなければならない。
ノーマル時のモトコンポの画像とカレンエンジンを載せた画像を見比べていただくと一目瞭然。リヤの車高が上がっているのはホイールベースが伸びたことでタイヤがフェンダーと干渉してしまわないよう、長めのリヤショックを入れているからなのだ。
マフラーはカレン純正をそのまま使っているが、カバーは取り外している。また全体をシルバー塗装にしているため、見た目の印象が変わっているのはそのためだ。またキャブレターは他車流用としている。というのもメインジェットが変更できないタイプだからで、セッティングを変更できるようにするためキャブ本体を変更してある。
エンジンを載せ換えた以外に変更しているのは自作のボディ上面カバーと、白いシートカバーくらいのもの。モトコンポのスタイルを変えることなく速さを味わえる仕様といっていいだろう。加工はほぼ必要なく、ウィリーするほどのパワーが手に入るのだから、チューニングする予定なら検討していただきたい方法だ(カレンのエンジンも希少になりつつはあるが……)。