【90%が新設計】KTM・390DUKE 海外試乗記|排気量アップで一段と力強く、高速コーナーもピタッと安定!

MotoGPやダカールラリーなど、トップカテゴリーのレースで活躍しているKTM。アグレッシブなイメージそのままに進化を重ねてきたスポーツネイキッドモデルがDUKEシリーズだ。今年は誕生から30周年ということで気合の入ったモデルが続々投入されている。その中で日本でも馴染みが深いのが400ccクラスに当た「390DUKE」だろう。スペインで
開催された新型DUKEシリーズの国際メディア試乗会からケニー佐川がレポートする。
KTM 390DUKE/海外試乗インプレッション

90%が新設計の新世代マシンへと進化 

KTMきっての元気なストリートモデルが390DUKEだ。最新の2024年モデルでは全面的にアップデートされた第三世代として登場した。エンジンや車体、外装など90%のコンポーネンツが新設計となり、まったく新しいマシンへ進化した。
デザインは以前のストリートファイター風からより洗練されたスポーティな雰囲気へとブラッシュアップ。フューエルタンクの形状や表面の質感も改良され、LEDヘッドライトやTFTディスプレイも新しくなり高級感もぐんと増している。
エンジンも次世代型に進化し、軽量でコンパクトな水冷単気筒は従来の375ccから399ccへと排気量を拡大。シリンダーヘッドとギアボックスも新設計となり、最高出力は従来から1ps向上して45psを発揮。同時にEURO 5+にも対応している。
シャーシも新設計で、フレーム剛性を最適化したスチール製トレリスタイプと軽量アルミダイキャスト製サブフレームの2ピース構造が初採用され、車体のディメンションも見直された。強化された車体を支えるサスペンションは前後ともトラベル量150mmを確保し、軽量アルミホイールと改良されたディスクブレーキを装備。ミシュランの新型タイヤも含めて足まわりだけで4.3kgの軽量化を実現するなど、ハンドリングを向上させている。
さらに、ライドモード(ストリート/レイン/トラック)やスーパーモトABS、コーナリングMTC、ローンチコントロールなどの電子制御を標準装備し、オプションでクイックシフターも用意。また、KTMコネクトアプリを介して音楽プレーヤーや着信応答、ナビゲーションなどの機能も充実されるなど、30周年記念に相応しい新世代のマシンとして生まれ変わった。

試乗インプレッション

軽快でクイック、走りもよりパワフルに

390DUKEの2024年モデルは見た目からしてまさに別モノ。外見から感じるアグレッシブな印象はそのままに、デザインも新しくよりスポーティでスタイリッシュに洗練された。従来モデル同様インドで生産されているが、ヘッドライトまわりの彫の深い造形や緻密なマフラーの取り回しなども含め、ディテールの作り込みも確実にクオリティが向上している。
「LC4c」と名付けられた新開発の水冷単気筒DOHC4バルブエンジンは、排気量が増えているにも関わらずフレームの中にコンパクトに収まっている。エンジンは力強く回転は滑らか。単気筒というとドコドコ感をイメージしがちだが、「LC4c」はめっぽうスムーズで高回転までよく回る。スロットルレスポンスはマイルドで開けやすく、4000rpmからは「コーナーロケット」の異名どおり、甲高くレーシーなサウンドとともに爽快な加速が楽しめる。またクイックシフターも滑らかで、短いストロールでカチッと6速まで吸い込まれていくのが気持ちいい。開発スタッフに聞くとユーロ5+への対応には苦労したようだが、排気量アップとともに1馬力でも上回ってきた企業努力はあっぱれだと思う。

ハンドリングは軽快かつシャープ。従来よりもサスペンションのダンパーが効いている感じで、車体の動きはクイックだが安定している。とりわけ高速コーナーでのビタッとしたスタビリティの高さに感心した。シャーシの剛性強化が効いていると思うが、そういうところにレースを知り尽くしたKTMならではのフィードバックを感じる。
また、個人的にポイントが高かったのがライポジの自由度が増したこと。シートはよりフラットになり前後の長さにも余裕が増えている。シート高を10㎜下げつつウレタンの厚みは増して快適性も向上。結果として長距離走行でも疲れにくく、ユーザーフレンドリーな仕様になっている。
一方で車重は153kgから165kgへと増加しているが、実際に乗るとそのハンデは感じさせない。車体ディメンションの変更や、軽量ホイールと軽量なタイヤ(ミシュラン・パワー6)の採用によるところが大きいようだ。軽さと足着きの良さを生かして街中での使い勝手も良好。Uターンでも十分なハンドル切れ角があり、ノロノロ運転でもトルクが安定していて扱いやすさは変わらなかった。また、タンク容量の増加により航続距離も向上するなど、ツーリングでの使い勝手も向上している。
まとめると、新型390DUKEは見た目にもグレード感が高まり、パワーとハンドリングも向上、電子デバイスもさらに充実した。KTMの本気が込められたマシンだ。

スタイリング

新型390DUKE エレクトロニック・オレンジ
新型390DUKE エレクトロニック・オレンジ
新型390DUKE アトランティック・ブルー
DUKEシリーズ誕生から30周年となる2024年。試乗会場では初620DUKEをはじめ歴代モデルが展示されるなど大いに盛り上がっていた。

ディテール解説

1.LEDヘッドライトの外側を囲むLEDポジションランプが斬新なフェイス。タンクスポイラーも大型化され、各部デザインもより鋭くアグレッシブさを増した。※以下写真はKTM390DUKEパワーパーツ装着車。

捩じり剛性を高めた新設計スチール製トレリスフレームにコンパクトに収められたエンジン。スイングアームピボットもフレーム内側へと追い込まれ車体もスリム化された。
写真はオプションのエンジンガードを装着。
LC4cと名付けられた水冷単気筒DOHC4バルブエンジンはストローク量を24㎜伸ばして排気量399ccに拡大。シリンダーヘッドとギアボックスの最適化などにより従来比1psアップの45psを実現した。末尾の「c」はコンパクトの意味。
フロントにφ320mmディスクとラジアル4Pキャリパーを装備。スポーク数を減らした新型ホイールにインナーローターのない新型ディスクを採用するなど、徹底してバネ下の軽量化が図られた。
リアも軽量化されたφ240mmディスクと2Pキャリパーを装備。湾曲タイプの新型アルミ製スイングアームの採用により、車体下側にショートマフラーをコンパクトに配置。
メインフレームとスイングアームは直接リアショックでつながれたシンプルな構造になっている。リアショックを車体右側にオフセット配置することでシート高を10㎜下げつつエアボックスとタンク容量も拡大。
シート形状をスーパースポーツタイプへと変更。座面はフラットでライポジの自由度も向上。フォームの厚みを増して快適性も高められた。
ステップバーは従来のラバータイプから滑り止めローレット加工が施されたスチール製へと変更。バー先端にもギザギザがあり積極的にステップワークしやすい。
テールライトは面発光LEDタイプの新しいデザインを採用。
※撮影用にウインカーやライセンスホルダーは取り外された状態。
新型5インチTFTディスプレイにはライドモードやMTC、ローンチコントロールに加えスピードリミッター機能やラップタイマーも装備。またKTMコネクトアプリによる音楽プレーヤー、着信応答機能、ターンバイターンナビゲーション機能も搭載。
TFTディスプレイを操作するためのスイッチギアは人間工学的に最適化された新デザインを採用。照光式スイッチで夜間でも見やすく、指先の感覚でも操作しやすい形状になっている。

KTM・390DUKE/主要諸元

●エンジン
トルク:39Nm
トランスミッション:6速
バッテリー容量:8Ah
冷却:水冷
KW出力:33kW
スターター:セルスターター
ストローク:64mm
ボア:89mm
クラッチ:PASC™ アンチホッピングクラッチ、機械操作式
排気量:398.7㎤
EMS:Bosch製 EMS ライドバイワイヤー
デザイン:単気筒、4ストロークエンジン
潤滑:ウェットサンプ

●シャシー:
ABS:Bosch 9.3 MP Two Channel(Supermoto ABS)
フロントブレーキディスク径:320mm
リアブレーキディスク径:240mm
フロントブレーキ:4ピストンラジアルマウント固定式キャリパー、ブレーキディスク
リアブレーキ:2ピストンフローティングキャリパー
チェーン:520 X-Ring
フレームデザイン:スチール製トレリスフレーム。パウダーコート塗装
フロントサスペンション:WP APEX 43
リアサスペンション:WP APEX - Monoshock
シート高:820mm
サスペンションストローク(フロント):150mm
サスペンションストローク(リア):150mm

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