368kgの重量級だが、足つきはいい。しかも気軽に流せる信頼感と心地よさ。|ハーレーダビッドソン・ストリートグライド試乗記

古くからハーレーダビッドソンのブランドイメージを代表するカテゴリーに「グランドアメリカンツーリング」がある。それを象徴するFLH直系の伝統は「ウルトラリミテッド」に受け継がれているが、同様な機能性をモダンなテイストで仕上げられているのが「ストリートグライド」である。今回はスタイリングが一新され、1月25日に販売開始された2024年最新モデルの試乗インプレッションをお届けします。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●HARLEY-DAVIDSON JAPAN
Black Trim Whiskey Fire

ハーレーダビッドソン・STREET GLIDE…….3,693,800円(消費税込み)〜

Chrome Trim ビビッドブラック

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カラーバリエーション

●ブラックトリム(Black Trim)…….3,953,400円〜

アトラスシルバーメタリック…….3,989,700円
ビビッドブラック…….3,953,400円
White Onyx Pearl…….3,989,700円
Sharkskin Blue…….3,989,700円
Whiskey Fire…….3,989,700円
Blue Burst…….3,989,700円

●クロームトリム(Chrome Trim)…….3,693,800円〜

Billiard Gray…….3,693,800円
ビビッドブラック…….3,762,000円
White Onyx Pearl…….3,798,300円
Whiskey Fire…….3,798,300円
Blue Burst…….3,798,300円
Alpine Green…….3,798,300円

ストリートグライドの昨2023年モデルには、スペシャルとSTの2タイプがリリースされていた。スペシャルはクラシカルな雰囲気を備え、搭載エンジンはMilwaukee-Eight™114(1868cc)。一方STはシェイプアップした車体にハイパフォーマンスな同117(1923cc)を搭載していた。
ハーレーダビッドソンのラインナップは6種のカテゴリーに分類され、ストリートグライドは「グランドアメリカンツーリング」に属している。日本国内市場で同カテゴリーの販売実績は15%程度と言うが、本国アメリカの市場では約半数の人気を占めているそう。
その中心を担う主力モデル(ストリートグライド&ロードグライド)に大きな資金が投入され次代を見据えた最新型へとモデルチェンジされたのである。

新開発のポイントは次に示す四つ。
①:スタイル
②:パフォーマンス
③:コンフォート性能
④:イフォテイメント
先ずスタイルは、サイドビューにおけるフロントセクションからタンク、そしてリアセクションまで前から後方への流れが直線的に繋がるデザインに一新された。フロントには、空力効率とライダーの快適性に配慮された新型バットウイングフェアイリングを装備。
鷹が翼を広げているような力強さを表現するイーグルウィングデザインが新鮮。それはフロントフォークにマウントされている。シンプルなセンターヘッドランプには逆Ω字状から左右に広がるLED式シグネチャーライトを装備。左右両側部分はウインカーも兼ねる方式だ。
伝統的なティアドロップタンクにはクロームのセンターベゼルが豪華にあしらわれ、サドルバックのデザインも含めていくらかスマートな印象にリフレッシュ。それでも22.7Lのタンク容量はキープ。サドルバッグ容量はSTとの比較で64Lから69Lへ増えている。
また、スペシャルとの乾燥重量比で8.2kgの軽量化を達成。例えばステアリングブラケット部はアルミニウム鍛造で新設計され約3.8kgの軽量化に貢献。燃料タンクも軽量鋼で造られている。

パフォーマンスもしっかり向上している。横置きの45度Vツインエンジンは、ピッチが細かく重ねられた冷却フィンが美しい、いかにもハーレーダビッドソンを象徴する堂々と立派なデザイン。そんなMilwaukee-Eight™117エンジンもアップデートされている。
ロングストロークタイプのボア・ストロークや気筒当たり4バルブ構造のOHV。そして冷却方式(ヘッド水〈液〉冷&圧送式ドライサンプ)は共通ながら、ツインスパークのプラブ周りを一新し冷却効率を向上。燃焼室やバルブ形状も変更され圧縮比は10.2対1から10.3対1になっている。
結果的に排気量の同じ117エンジンでも最高出力は3%、最大トルクは4%の増加に成功。114エンジンと比較すると排気量は3%大きいものの、最高出力は11%、最大トルクは7%もの向上を果たしているのである。ちなみに最大トルクは176Nm/3,250rpmを発揮する。同時に1軸バランサー他も熟成されて振動やノイズも低減された。また主要諸元値ながら、燃料消費率が16.4km/Lから16.7km/Lに向上している点も見逃せない。

コンフォート性能では、軽量化設計と共にスチールパイプ製バックボーンフレームの剛性バランスが見直されている。これまでの進化の過程では、ハイパフォーマンス化と共に車体は必然として高剛性化を目指す流れがあった。「キング・オブ・ザ・バガーズ」でサーキットを疾走するシーンを知るとさもありなんである。               
ただストリートグライドの基本コンセプトには、快適なツアラーとしての機能性に真のニーズがある。振動やノイズ、そして操縦性などの快適性を追及するに相応しい剛性バランスを求めて車体とサスペンションが一新されたのである。
スチール製フレームとスイングアームは軟鋼管状材で製造されている。リアフレームはボルトオンされ、リアフェンダーは鍛造スチール製ステーで支持される方式。前述のステアリングブラケットは、液圧を利用するアルミ鍛造技術が使われている。
リアサスペンションには、SHOWA製のコイルスプリング式ツインショックを採用。従来比で1.5倍にもなる76mmのストロークを誇っているのが新しい特徴。左側には油圧式のプリロードアジャスターを備えている。路面追従性と快適性の向上が期待できるのだ。
その他、エンジン冷却に欠かせないフィン付きラジエターは低い位置に移設され、熱気による不快感が改善されている。左右の開閉可能フラップやスクリーン下側のスプリットストームベントと相まってライダーの快適性向上が期待できる。

最後にインフォテイメントは、最新のSKYLINE™OSを搭載。12.3インチというワイドなフルカラーTFTタッチディスプレイを装備し、様々な連携機構を誇る。タッチ操作あるいはハンドル左右のスイッチ操作で多彩な制御選択や情報案内が受けられる。もちろんスマホアプリとの連携も可能となっているのである。
タンデムライディング時のインカム操作や4チャンネル200Wの高出力オーディオやグーグルナビ。電話やラインのやり取りなど豊富な機能に対応してくれている。

揺るぎない贅沢な乗り味が魅力的。

試乗車を目の当たりにするとなんともボリューム感がハンパない。いかにもアメリカン。「巨漢」と呼ぶに相応しい堂々たるフォルムに圧倒される。先ずはその存在感そのものに大きな魅力があることを再認識させられた。手に触れるハンドルグリップの太さ、左右両レバーの厚み、まるで車のそれを思わせるブレーキペダル、ワイドなシートとタンク。タンク容量は20Lを超えている。フェンダーデザインなどウルトラリミテッドと比較するといくらか軽快な雰囲気もあるが、何と言っても全てが剥き出しにされた45度Vツイン117エンジンの迫力と美しさが見逃せない。CVOを除外すると、まさに同ブランド最大の排気量である。
車体寸法の比較で、今やこれよりも大きなバイクの存在は珍しくないが、同ブランドの歴史的背景も含め、そこに漂う「風格」と大きさ感は、やはりピカイチのものがある。
ちなみに試乗車の価格は3,762,000円。車両重量は368kg。近寄りがたいオーラーが漂っているのも間違いない。しかしその反面「ホッ」と救われるのはシートに跨がった時の足付き性が抜群に良いこと。細身で体力的にも乏しい筆者にとっても、安心要素となり大きな安堵感を覚えられるのである。
もちろん油断は大敵。座り心地の良いシートに腰を落ち着けてしまうと、ふと緊張感が緩んでしまう。さらにシートに腰を下ろし、どっかりと尻を落ち着けてしまうと身体の筋力が緩むし、なによりもバイクを支える両足に加わる接地荷重が抜けてしまうから注意が必要。場合によってはツルンと足を滑らせてしまいかねないからだ。

さて、決して軽くはないクラッチレバーを握りローヘシフトしてスタート。1軸バランサーを持つエンジンは、アイドリング時も既に身震いするような振動はない。回転フィーリングとしては優しさが感じられるが、図太くも乾いた排気音など、ハーレーダビッドソンらしい鼓動感は健在。
ローのギア比はわりと高めな設定だが、それにも関わらずスムーズに難なく発進できる。巨漢をものともしないトルクは流石。排気量の大きさとバイクとしてはエンジン回転を欲張っていない出力特性とクランクマスが大きく頼り甲斐のある柔軟な出力特性が生きている。
バイクのインプレッションでは、とかくエンジンパフォーマンスの優劣に言及しがちだがバイクが動き始めた瞬間から別次元の乗り味に独特の心地よさを覚える。
速いとか遅いとかは、もはやどうでも良い世界感がそこにある。乗る直前までは恐れ多いバイクと思い、乗るのを遠慮したい気持ちもあったハズ。ところが車輪が少しでも回転を始めると、巨漢を素直に操れてしまう事実にに大きな悦びと確かな満足感があるのだ。
セカンドへシフトしクラッチミートするとググッとさらに強い押し出し感を覚え、サードでも同様に太いトルクを発揮。エンジン回転にしたためられるエネルギーの大きさや、エンジン回転変動の緩慢さも印象深い。
ライダーもそんなゆったりとした心持ちに合わせて扱い、好きなところへと舵を向けて行く先に自由で素敵な世界が見えてくるような気がするのである。
どっしりと落ち着きはらった乗り味。発進も減速もコーナリングもゆったりと悠然な挙動を楽しむところに、とても豊かな非日常の世界がある。そんな贅沢な乗り物のひとつとして大きな魅力と価値が感じられるバイクであることは間違いない。

足つき性チェック

ご覧の通り足つき性の良さは抜群。シート高は715mm、膝にも余裕を持ってバイクを支えることができる。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…