ディスクブレーキキャリパーのマウント方法で何が変わる?|レーシーな「ラジアルマウント(縦置型)」とスタンダードな「アキシャルマウント(横置型)」【ゲイルスピード】

高性能なディスクブレーキシステムは、キャリパー、ディスクローター、キャリパーサポート、マスターシリンダーなどで構成。昔ながらの「アキシャルマウント(横置き)型」のキャリパーは、現在ではスタンダードなストリート向けのモデルに多用。一方「ラジアルマウント(縦置き)型」のキャリパーは、MotoGPマシンを始めとしたレースマシンや超高性能な市販のスーパースポーツモデルの定番。アクティブが2002年に立ち上げた自社ブランド「ゲイルスピード」の高性能キャリパーを例に、伝統のアキシャルマウント型とレーシーなラジアルマウント型の違いを比べてみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
アクティブ http://www.acv.co.jp/
ゲイルスピード https://www.acv.co.jp/galespeed
※注:下記価格はすべて税込

アクティブが立ち上げた自社ブランド「GALE SPEED(ゲイルスピード)」のディスクブレーキシステム

アクティブがプロデュースしたカワサキZRX1200DAEG改。写真はアクティブのアルミスイングアーム、ゲイルスピードのType-J(コントラスト オプション KOHKENカラーアルマイト)リアホイール、リア2Pアキシャルビレットキャリパー、専用キャリパーサポート、ディスクローター、マスターシリンダーを組み合わせ。

「GALE SPEED(ゲイルスピード)」はパーツメーカーのアクティブが2002年に立ち上げた自社ブランド。強度と耐久性のある鍛造アルミニウムを、運動性能のいい重量配分で削り出したビッグバイク用スポーツホイールや、ミニバイクカスタム用12インチアルミキャストホイール等々、高性能な足周りパーツを展開。

2009年には鍛造ホイール製造で培ったノウハウと技術を投じ、「ブレーキシステムプロジェクト」が発足。国内外のレースサポートを通し、ブレーキディスク用のマスターシリンダー、キャリパー、キャリパーサポートなどのパーツを開発中だ。

2010年、ゲイルスピードの鍛造ホイールはロードレースの最高峰・MotoGPのMoto2クラスで採用。“世界ブランド”への大きな一歩を踏み出した。2011年にはレース専用ホイール「TYPE-GP1」を発表。現在は国内外の多くのチームが使用し好成績を残している。

レーシーな「ラジアルマウント(縦置き)型」キャリパーは、ホイールの中心線に向かって垂直方向にボルト止め

写真はブレンボ製のラジアル型キャリパー装着車。レーサー等の定番であるこのキャリパーは、進行方向にボルト止めされているのが特長。

ラジアルマウント型キャリパーとはホイールの中心線に向かい、垂直方向(フロントの場合はほぼ進行方向)にボルトで固定されたタイプ。一般的にこのタイプは、ブレーキの効きや制御性に優れているのが特長。その性能が評価・実証され、現在ではMotoGPマシンを始めとしたレースマシンや、超高性能な市販のスーパースポーツモデルの定番となっている。

ゲイルスピード Elaborate フロント4Pラジアルキャリパー 108mm……チタンボルト版:12万1000円/SCM(クロモリ)ボルト版:10万7800円

高性能・高剛性・高品質のラジアルマウント型キャリパー。「ストリートやスポーツ走行をメインステージとした、上質で精巧なアルミビレットキャリパー」をコンセプトに、ブランク材を3D切削加工。Elaborate(精巧な・技巧的な)の名に相応しい機能美溢れる性能に仕上げている。取り付けピッチ100mm版(フロント用 チタンボルト版:12万1000円/SCMボルト版:10万7800円)、リア用(2POT/取り付けピッチ60mm/チタンボルト版:7万400円/SCMボルト版:6万3800円)もあり。

■ラジアルマウント(取付ピッチ108mm、オフセット22.5) ■ボルトピッチ:P1.00 ■ブレーキパッド:シンタードメタル材(付属) ■対応ディスク:φ250~330(厚み4.0~6.0mm) ■アルミ(A6061)製 2ピースボディ ■12ポイントブリッジボルト ■フル三次元切削加工 ■表面処理:ブラックハードアルマイト ■ダストシール、パッドスプリング内蔵 ■重量:チタンボルト仕様900g、SCMボルト仕様920g
2ピース構造のボディを12ポイントのボルト4本で締結。軽量で錆びに強いチタンボルト仕様と、剛性重視のSCM(クロモリ)ボルト仕様を設定。オイル取り出し位置やフルード通路、ブリーダー位置を最適にして作業性もアップ。
ボディに施されたフィンはヒートシンクの役割を持ち、放熱性を向上。
モノブロック式では削り出し難いピストン・パッド収納部も無駄なく切削。ディスクをはさむスペースを最小にすることでピストン吐出量を抑えダイレクトなタッチを実現。
センターブリッジが制動時の圧力によるキャリパーボディの開きを抑制。
写真はリア用ラジアルキャリパー(2POT/取り付けピッチ60mm)。専用キャリパーサポートを駆使して取り付けている。
写真は試作のチタンピストン。熱伝導率の低いチタン素材は、ブレーキディスクから伝わる熱ダレによるフルードの温度上昇を緩やかにするのが特長。

スタンダード&コスト安な「アキシャルマウント(横置き)型」キャリパーは、ホイールの中心線に対して平行にボルト止め

写真はゲイルスピード製のアキシャルマウント(横置き)型キャリパー装着車。昔ながらのスタンダード版であるこのキャリパーは、進行方向の垂直にボルト止めされているのが特長。

アキシャルマウント型キャリパーとはホイールの中心線に対し、平行(進行方向に向かって垂直)にボルトで固定された昔ながらのタイプ。レーサーやスーパースポーツモデルが上記のラジアルマウント型に移行したため、現在ではスタンダードなストリート向けのモデルに採用されている。

ゲイルスピード Elaborate フロント4Pアキシャルキャリパー……チタンボルト版:9万9000円/SCM(クロモリ)ボルト版:8万5800円

「ストリートやスポーツ走行をメインステージとした、上質で精巧なアルミビレットキャリパー」をコンセプトに、ブランク材を3D切削加工された、Elaborate フロント4Pキャリパーのアキシャルマウント型バージョン。リア用(2POT/取り付けピッチ84mm/チタンボルト版:6万4900円/SCMボルト版:5万8300円)もあり。

■アキシャルマウント(取付ピッチ40mm) ■ボルトピッチ:P1.00 ■ブレーキパッド:シンタードメタル材(付属) ■対応ディスク:Φ250~330(厚み4.0~6.0mm) ■アルミ(A6061)製 2ピースボディ ■12ポイントブリッジボルト ■フル三次元切削加工 ■表面処理:ブラックハードアルマイト ■ダストシール、パッドスプリング内蔵 ■重量:チタンボルト仕様950g、SCMボルト仕様970g
上記のラジアル型と同様、2ピース構造のボディを12ポイントのボルト4本で締結。軽量で錆びに強いチタンボルト仕様と、剛性重視のSCM(クロモリ)ボルト仕様を設定。センターブリッジが制動時の圧力によるキャリパーボディの開きを抑制。
モノブロック式では削り出し難いピストン・パッド収納部も無駄なく切削。ディスクをはさむスペースを最小にすることでピストン吐出量を抑えダイレクトなタッチを実現。
ボディに施されたフィンはヒートシンクの役割を持ち、放熱性を向上。オイル取り出し位置やフルード通路、ブリーダー位置を最適にして作業性を向上。写真は専用キャリパーサポートを駆使して取り付けた例。

ゲイルスピード フロント4Pアキシャルビレットキャリパー……4万4000円

シンプルで軽量なコンパクトなキャリパー。ストリートでの十分な性能を維持しつつ、軽量化を計ったミドルレンジモデル。2D切削で仕上げるフラットでシンプルな造形は、ネイキッドやネオクラシックスタイルを始め、様々なストリートモデルに馴染むデザインが特徴。

ボディを2ピース構造とすることで、内部を無駄なく切削。ディスクを挟み込むスペースを最小にしてピストン吐出量を抑え、ダイレクトなタッチを実現。リア用2POT(取付ピッチ84mm/カラーはシルバーとブラックあり/3万3000円)もラインナップ。

■取付ピッチ:40mm ■ピストン径:Φ34/φ30 ■ボルトピッチ:P1.00 ■ブレーキパッド:専用品付属(ストリート向けシンタードメタル材) ■対応ディスク:φ250~330(厚み4.0~6.0mm) ■アルミ(A6061)製 2ピースボディ(アルマイト) ■ダストシール、パッドスプリング内蔵 ■パッド込み重量:846g
カラーはシルバーとブラックあり。
2ピース構造のボディをSCM(クロモリ)ボルトで締結し、剛性とメンテナンス性を両立。フロント用はブレーキパッドの冷却効率を高める導風口も装備。
写真はブラックカラーの装着例。GALE SPEEDのロゴは色を付けず、削りのみで表現。主張しすぎないフラットなデザインにより、どんな車両にも馴染む存在感に仕上げている。
写真はシルバーカラーの装着例。
リア用2POT(取付ピッチ84mm/カラーはシルバー)。
専用キャリパーサポートを使い、リア2Pアキシャルビレットキャリパーを取り付けた例。

社外キャリパー取り付け時の必須アイテム! 各車専用のキャリパーサポート

純正のディスクブレーキ用キャリパーからゲイルスピード製やブレンボ製、ニッシン製等々、純正とは形状・大きさ・取り付けピッチの異なるディスクブレーキ用キャリパーに変更するには、取り付けるキャリパーに合わせた専用の「キャリパーサポート」が必要。

アクティブやゲイルスピードなど各社からは、各キャリパーや車種に応じた専用のキャリパーサポートが各種リリース。取り付けピッチなどをチェックし、愛車に合致するか? ホイールとのクリアランスに問題はないか?(小径ホイルに大型のキャリパーを取り付ける場合、キャリパー本体に削り加工が必要な場合あり)などをしっかりと確認しよう。

もしも愛車に合致するキャリパーサポートがない場合、各種工作機械を使って自らワンオフ、もしくは専門業者に依頼する方法もある。カスタムビギナーはバイクショップやパーツショップに相談してみるべし。

ゲイルスピード製のアルミ削り出しキャリパーサポート。装着車両や組み合わせるキャリパーの種類により、キャリパーサポートの形状は異なるのが特徴。
ホンダ・グロムのフロントに、アクティブ製キャリパーサポートとブレンボ製4POTキャリパーを組み合わせたところ。写真はホイールの中心線に対し、平行(進行方向に対して垂直)にボルトで固定された昔ながらのアキシャルマウント型キャリパー。
ホンダCBR250RRのフロントに、アクティブ製キャリパーサポートとブレンボ製4POTキャリパーを組み合わせたところ。写真はホイールの中心線に対し、平行(進行方向に対して垂直)にボルトで固定された昔ながらのアキシャルマウント型キャリパー。
写真はホイールの中心線に対し、垂直にボルトで固定されたスポーティーなリア用ラジアルキャリパー(2POT/取り付けピッチ60mm)。専用キャリパーサポートを駆使して取り付けた例。

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