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コンパクトなボディながらゆとりある快適なポジションを実現
アドベンチャーツアラーというと大柄なボディをイメージします。それは悪路走破性を高めるために前後サスペンションのストロークを長くしたりタイヤ径を大きくした結果、一般的なバイクに比べて背が高くなってしまうためです。しかしTRK251のボディは、ひと目でアドベンチャーツアラーと理解できるスタイルながら全体にコンパクトで、威圧感は一切ありません。250という排気量を考えればあたりまえなのかもしれませんが、だれにでも親しみやすいアドベンチャーツアラーの存在意義は大きいと思います。とくに日本の状況を考えれば、道路は狭いし都市部は渋滞必至ですから、コンパクトなバイクのほうが利便性が高いのです。
一方、ロングツーリングとなるとまた話はちがってきます。コンパクトなバイクはポジションにゆとりがなく快適性に欠けるという側面があるからです。大きくてゆったり走れるほうがラクチンですからね。ところがTRK251のコンパクトなボディは、リラックスして乗ることができる快適なポジションも両立しているのです。
ベネリTRK251……649,000円(消費税込み)
178㎝と高身長の僕が乗っても窮屈な感じはありませんでした。アドベンチャーツアラーの性質上、比較的車高があって上体もアップライトだからでしょう。ヒザの曲がりがきつくないのも好印象です。
シート高は800㎜あります。なので小柄なライダーには乗降がしにくいかもしれません。しかし乗車してしまえばわずかですが前後サスが沈みますし、シートからタンクにかけてうまく絞られた形状となっていることもあり、意外と足つき性は悪くありません。車重は176㎏あるのですが、引き起こしに重さを感じることはないし、押し歩きに際しても取り立ててしんどいなんてこともありませんでした。このサイズ感ならアドベンチャーツアラーを取りまわしているという重圧なく、日常からツーリングまで気軽に付き合えると思います。
このように250㏄のいわゆるクォーターアドベンチャーツアラーは日本のさまざまな環境に合っていると考えられるのですが、ベネリTRK251のほかにも同カテゴリーに位置するモデルが国内販売されています。つまりTRK251のライバルというわけですね。
まず思い浮かぶのが日本のツーリングユーザーに人気のスズキVストローム250です。TRK251とちがって2気筒エンジンを採用しているため車体が重いのですが、スムーズなエンジン特性で快適なロングツーリングができます。同じシングルエンジンで比較するなら、スズキVストローム250SXとKTM250アドベンチャーがあります。しかしTRK251がオンロードをメインステージにしているのに対し、Vストローム250SXとKTM250アドベンチャーはオフロード寄りの特性となっています。そうした観点から、ベネリTRK250はVストローム250とVストローム250SX、KTM250アドベンチャーの中間的な特性のモデルだといえるでしょう。たしかにライバルモデルは存在しますが、独自路線を進んでいるクォーターアドベンチャーツアラーということができます。
シングルらしさを感じさせる穏やかなパワーフィーリングのエンジンはライダーにストレスを与えない
スクランブラーであるレオンチーノ250と共通のフレームに搭載されたエンジンは、249㏄の水冷DOHC4バルブ単気筒。最高出力19kW/9,250rpm、最大トルク21.1Nm/8,000rpmというスペックです。ライバルとなるVストローム250がそれぞれ18kW / 8,000rpm、22Nm / 6,500rpm、そしてVストローム250SXが19kW / 9,300rpm、22Nm/ 7,300rpmというスペックなので、比較するとやや高回転型のエンジンとなっています。
セル一発で目覚めたエンジンは、250としてはやや大きめなサウンドを放ちます。かといって耳障りな音ではないので、長時間走行で疲労を誘発するようなことはありません。 シングルエンジンということでタタタッと歯切れのあるパワーフィーリングを想像していたのですが、実際にはかなり穏やかな感覚で、その中に力を体感するといったものです。吹け上がりはそれほど俊敏ではなくアクセル開度に合わせて回転が上昇するタイプです。しかもフラットな特性なので、パンチ力こそありませんが非常に使いやすいエンジン特性だと感じました。このように全体に穏やかさが目立つエンジンですが、スタートダッシュで他車に後れを取ることはありませんし、高速道路の進入で加速不足を感じることもありません。さらに高回転までストレスなく回るエンジンなので、高速走行も余裕でこなしてくれます。全回転域で同様の特性を発揮してくれるため、市街地からワインディング、フラットダート、そして高速道路まで気を遣わずにアクセルコントロールできます。
前後17インチタイヤが軽快なハンドリングに貢献
骨格であるトレリスフレームは剛性が高く、倒立フロントフォーク、モノショック式リアサスの足回りもしっかりしていて、ハンドリングは軽快でスポーティです。前後17インチのオンロードタイヤを履いていることも軽快性に貢献しています。操縦性にクセもないし、荒れた路面を通過しても挙動変化は小さいので、道を選ばず安心して走ることができます。ただし、サスペンションの動きにしなやかさを感じないので、硬い乗り味になってしまっているのが気になる部分でした。ツアラーらしく荷物満載での走行を想定したものかもしれませんが、ユーザーになったあかつきには自分好みにセッティングしてあげれば、さらに走行性は良くなると思います。
流行りのキャンプツーリングや夏のロングツーリングに最適なバイクであることはまちがいありません。しかも多くのライダーがオンロードをメインにツーリングしますから、ベネリTRK251の方向性がピッタリとはまります。もちろんスズキVストローム250やVストローム250SX、KTM250アドベンチャーと選択肢が多いカテゴリーですが、自分の志向に合ったバイクを選んで、ツーリングを楽しんでもらいたいと思います。