250㏄アドベンチャーツアラーは国内ツーリングの相棒に最適

「クォーターアドベンチャーツアラーの旅力」ベネリTRK251に乗って再確認。

デュアルパーパス性があって快適なツーリング能力を発揮してくれるアドベンチャーモデルは世界中で高い人気を誇っています。中でもリッターオーバーの大型アドベンチャーツアラーはハイレベルな走行性能や快適性で多くのファンを獲得しています。一方で、体格が小柄な日本人には取り回しがつらかったり、日本の道路環境に合っていない部分もあります。そこで注目したいのが、250㏄クラスのアドベンチャーツアラーです。強大なパワーを発揮するわけじゃありませんが、小回りが効いてどこでも扱いやすく、そして快適性があるのですからツーリングファンには魅力的なバイクだと思います。ベネリがラインナップしているTRK251で、ツーリングユースにおけるクォーターアドベンチャーツアラーの可能性を探ってみました。

撮影:徳永茂
協力:(株)プロト https://www.plotonline.com/benellimotorcycle/
ベネリ東京練馬 https://www.benelli-tokyo.jp/

コンパクトなボディながらゆとりある快適なポジションを実現

アドベンチャーツアラーというと大柄なボディをイメージします。それは悪路走破性を高めるために前後サスペンションのストロークを長くしたりタイヤ径を大きくした結果、一般的なバイクに比べて背が高くなってしまうためです。しかしTRK251のボディは、ひと目でアドベンチャーツアラーと理解できるスタイルながら全体にコンパクトで、威圧感は一切ありません。250という排気量を考えればあたりまえなのかもしれませんが、だれにでも親しみやすいアドベンチャーツアラーの存在意義は大きいと思います。とくに日本の状況を考えれば、道路は狭いし都市部は渋滞必至ですから、コンパクトなバイクのほうが利便性が高いのです。
一方、ロングツーリングとなるとまた話はちがってきます。コンパクトなバイクはポジションにゆとりがなく快適性に欠けるという側面があるからです。大きくてゆったり走れるほうがラクチンですからね。ところがTRK251のコンパクトなボディは、リラックスして乗ることができる快適なポジションも両立しているのです。

ベネリTRK251……649,000円(消費税込み)

178㎝と高身長の僕が乗っても窮屈な感じはありませんでした。アドベンチャーツアラーの性質上、比較的車高があって上体もアップライトだからでしょう。ヒザの曲がりがきつくないのも好印象です。
シート高は800㎜あります。なので小柄なライダーには乗降がしにくいかもしれません。しかし乗車してしまえばわずかですが前後サスが沈みますし、シートからタンクにかけてうまく絞られた形状となっていることもあり、意外と足つき性は悪くありません。車重は176㎏あるのですが、引き起こしに重さを感じることはないし、押し歩きに際しても取り立ててしんどいなんてこともありませんでした。このサイズ感ならアドベンチャーツアラーを取りまわしているという重圧なく、日常からツーリングまで気軽に付き合えると思います。

アドベンチャーツアラーながらコンパクトなボディとしているTRK251。しかしポジションには十分なゆとりがあり、快適なロングツーリングが可能
アップハンドルに手を添えれば、上体は垂直となり、高い視線から周囲の状況を確認できる
シート高は800㎜と低めの設定。加えて足が下しやすいシート形状もあって両足をラクに着けることができた
178㎝の身長がある僕の場合、両足がかかとまでベッタリと着けられる。平均的な体格のライダーでも両足のつま先が着けられるはず

このように250㏄のいわゆるクォーターアドベンチャーツアラーは日本のさまざまな環境に合っていると考えられるのですが、ベネリTRK251のほかにも同カテゴリーに位置するモデルが国内販売されています。つまりTRK251のライバルというわけですね。
まず思い浮かぶのが日本のツーリングユーザーに人気のスズキVストローム250です。TRK251とちがって2気筒エンジンを採用しているため車体が重いのですが、スムーズなエンジン特性で快適なロングツーリングができます。同じシングルエンジンで比較するなら、スズキVストローム250SXとKTM250アドベンチャーがあります。しかしTRK251がオンロードをメインステージにしているのに対し、Vストローム250SXとKTM250アドベンチャーはオフロード寄りの特性となっています。そうした観点から、ベネリTRK250はVストローム250とVストローム250SX、KTM250アドベンチャーの中間的な特性のモデルだといえるでしょう。たしかにライバルモデルは存在しますが、独自路線を進んでいるクォーターアドベンチャーツアラーということができます。

クォーターアドベンチャーにはライバルモデルも存在する。同じシングルエンジンモデルならスズキVストローム250SXとKTM250アドベンチャーがある。ただしこの2台はオフロード寄りの設定となっている。またTRK251と同様にオンロードメインのアドベンチャーツアラーでは、並列2気筒エンジン搭載のスズキVストローム250がある。価格はスズキVストローム250SX:569,800円、スズキVストローム250:668,800円、KTM250アドベンチャー:769,000円

シングルらしさを感じさせる穏やかなパワーフィーリングのエンジンはライダーにストレスを与えない

スクランブラーであるレオンチーノ250と共通のフレームに搭載されたエンジンは、249㏄の水冷DOHC4バルブ単気筒。最高出力19kW/9,250rpm、最大トルク21.1Nm/8,000rpmというスペックです。ライバルとなるVストローム250がそれぞれ18kW / 8,000rpm、22Nm / 6,500rpm、そしてVストローム250SXが19kW / 9,300rpm、22Nm/ 7,300rpmというスペックなので、比較するとやや高回転型のエンジンとなっています。
セル一発で目覚めたエンジンは、250としてはやや大きめなサウンドを放ちます。かといって耳障りな音ではないので、長時間走行で疲労を誘発するようなことはありません。 シングルエンジンということでタタタッと歯切れのあるパワーフィーリングを想像していたのですが、実際にはかなり穏やかな感覚で、その中に力を体感するといったものです。吹け上がりはそれほど俊敏ではなくアクセル開度に合わせて回転が上昇するタイプです。しかもフラットな特性なので、パンチ力こそありませんが非常に使いやすいエンジン特性だと感じました。このように全体に穏やかさが目立つエンジンですが、スタートダッシュで他車に後れを取ることはありませんし、高速道路の進入で加速不足を感じることもありません。さらに高回転までストレスなく回るエンジンなので、高速走行も余裕でこなしてくれます。全回転域で同様の特性を発揮してくれるため、市街地からワインディング、フラットダート、そして高速道路まで気を遣わずにアクセルコントロールできます。

前後17インチタイヤが軽快なハンドリングに貢献

骨格であるトレリスフレームは剛性が高く、倒立フロントフォーク、モノショック式リアサスの足回りもしっかりしていて、ハンドリングは軽快でスポーティです。前後17インチのオンロードタイヤを履いていることも軽快性に貢献しています。操縦性にクセもないし、荒れた路面を通過しても挙動変化は小さいので、道を選ばず安心して走ることができます。ただし、サスペンションの動きにしなやかさを感じないので、硬い乗り味になってしまっているのが気になる部分でした。ツアラーらしく荷物満載での走行を想定したものかもしれませんが、ユーザーになったあかつきには自分好みにセッティングしてあげれば、さらに走行性は良くなると思います。
流行りのキャンプツーリングや夏のロングツーリングに最適なバイクであることはまちがいありません。しかも多くのライダーがオンロードをメインにツーリングしますから、ベネリTRK251の方向性がピッタリとはまります。もちろんスズキVストローム250やVストローム250SX、KTM250アドベンチャーと選択肢が多いカテゴリーですが、自分の志向に合ったバイクを選んで、ツーリングを楽しんでもらいたいと思います。

ディテール解説

フラットな特性で全回転域で扱いやすい水冷シングルエンジン。俊敏なレスポンスを発揮するタイプじゃないが、だからこそ不安なくアクセルコントロールできる
アドベンチャーツアラーらしく後部が跳ね上げられたマフラー。力強いサウンドを放つ
ステアリング周りの剛性が高く、ばねした重量の軽減に寄与する倒立フロントフォークが採用
リアサスにはモノショック式を採用
フロントブレーキはΦ280㎜ローターに2ポットキャリパー装備のシングルディスクが採用。ABS装備だ。タイヤは110/70R17サイズ
リアブレーキはΦ240㎜ローターのディスク。ABS装備だ。タイヤは150/60R17サイズ
パイプ製のアップハンドルは良好なポジションを実現してくれる。スイッチ類の配置や操作性もいい
メーターはデジタル式の液晶ディスプレイを採用。必要な情報はすべて表示されるので、ツーリングにも心強い
燃料タンクの前方上部にUSB給電ソケットが装備されている。スマホのナビを利用する際に使いやすい位置にあるのもうれしい
ロングタイプのウインドスクリーンが走行風から体を守ってくれる。デュアルヘッドライトはLEDを採用
テールランプ、ウインカーランプ共にすべてLEDとしている
ニーグリップ性に優れた燃料タンクは18L容量。燃費(WMTCモード)は31.3km/Lなので満タンで500㎞以上走行できる計算だ
シートはセパレートタイプを採用。パニアケース装備にも対応する大型リアキャリアを備えている
オンロード走行メインらしくステップにはラバーが装着。オフロード走行に対応するためラバーは着脱式だ。またブレーキペダルの高さ調節もできる

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…