排気量250ccの水冷Vツインエンジン。乗り味が気になってしまう存在です。モダン系ボバー、ヒョースン・GV250S-EVO シュプリーム試乗記

2024年3月の東京モーターサイクルショーで初公開され、10月に発売が予定されているネオレトロボバー、ヒョースンの「GV250S-EVO シュプリーム」に一足早く試乗することができた。GV250Sボバーをベースに、フロントフォークを倒立化&フル液晶メーターを導入した上位モデルであり、価格は4万4000円アップに抑えられる。250cc水冷Vツインの乗り味やいかに!

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ヒョースンモーター・ジャパン(https://www.saku-corp.jp/hyosung/index.html)

ヒョースン・GV250S-EVO Supreme……68万7500円(予価、2024年10月発売予定)

GV250Sボバー(予価64万3500円)をベースに、フロントフォークをφ35mm正立式からφ41mm倒立式に変更。車重172kgやホイールベース1,425mmに変更はないが、トレール量が103mmから97mmへとわずかに減少している。
車体色はマットブラックのみ。ホイール径はフロント16インチ、リヤ15インチで、タイヤサイズはGV250Sボバーと共通だ。
筆者はおよそ3年前の2021年10月に原付二種のGV125Sボバーに試乗している。GV250S-EVO シュプリームがABSを採用するのに対し、125のブレーキは前後連動式となっている。現在の車両価格は58万3000円。インプレッション記事はこちら
2022年の東京モーターサイクルショーに展示されていたGV300Sボバー。最高出力は29.4psで、価格は69万3000円。現在の車体色はマットブラックのみ。

スムーズなだけではない、味わいをプラスした水冷Vツイン

ヒョースンは1978年に韓国で誕生した二輪メーカーで、現在は中国のQINGQI(クインキー、現地での発音はチンチー)とのジョイントベンチャー「QINGQI KR」を立ち上げ、クルーザーモデルをメインにグローバル展開している。

水冷Vツインを搭載するこのGVシリーズは、まず125と300が当時に開発され、2017年のEICMAで発表されている。日本市場では2021年5月からユーロ5に対応した最新仕様が販売されており、筆者は翌2022年にGV125Sボバーを試乗している。60度Vツインのスムーズな吹け上がりと高い旋回力が印象的で、これでもう少しパワーがあれば……、でも300だと車検があるしなぁ、などと思っていた矢先に舞い込んだ朗報が「GV250Sボバー」の登場だ。

今回試乗したのは、GV250Sボバーをベースにフロントフォークを倒立化し、フル液晶メーターやフルLEDの灯火類を採用した上位モデル「GV250S-EVO シュプリーム」だ。GV250Sボバーとともに今年10月に発売予定で、価格差は4万4000円となっている。装備の違いを考えると、シュプリームのコストパフォーマンスはかなり高いと言えるだろう。

まずはエンジンから。ボア径はGV300Sボバーと同じφ58.0mmで、ストロークを56.0mmから47.0mmに短縮していることから、3兄弟の中で最もショートストローク比となった248.4cc水冷60度Vツイン。歯切れの良い排気音とは裏腹に、体に伝わる微振動は非常に少なく、GV125Sボバーと同様に吹け上がりは非常にスムーズだ。

何より感心したのは、街中で多用する3,000~5,000rpmにしっかりと実用的なトルクがあることだ。125よりも明らかにキビキビと走ることができ、流れの速いバイパスでもストレスを感じない。付け加えると、低~中回転域にはフワッと盛り上がるような脈動感があり、これが実に心地良いのだ。わずかにロングストローク設定の125はスムーズさが際立っていたが、250はそこに絶妙な味わいが付加されている。レッドゾーンの始まる10,000rpmまで回せば確かにパワフルだが、このエンジンはポンポンと早めにシフトアップし、3,000~5,000rpm付近で流すのが粋というものだろう。

なお、トランスミッションは125の5段に対して6段となっている。ややフォワード気味のステップバーに合わせて長めのシフトリンケージが使われているが、変速に関しては特に問題はなかった。

ボバーの姿を借りたネイキッドかと思わせるほどに旋回力は高い

続いてはハンドリングだ。直接のライバルとなるであろうホンダのレブル250が前後に16インチホイールを履くのに対し、ヒョースンのGVシリーズはフロントに16インチ、リヤに15インチを採用。さらにホイールベースは、レブル250に対して65mmも短いのだ。

そうした違いもあってか、このスタイリングにして旋回力は高く、ハンドルやステップにきっかけを与えてさえしまえば、あとは気持ち良く向きを変えていく。フロントの操舵は穏やかであり、基本的にはバンク角主体で旋回するタイプだが、十分以上のバンク角が与えられており、ステップが簡単に接地してしまい興を削がれる、なんてことがないのだ。

このシュプリームのトピックである倒立式フロントフォークについては、まだ新車ということもあり伸縮の動きこそ渋かったが、下りコーナーで積極的にフロント荷重で進入できるほどの剛性があり、この部分に関してはネイキッドも顔負けなほど。ボバースタイルでありながらワインディングロードを快走することができ、パフォーマンス的にはなかなかにあなどれないのだ。

ブレーキについては、前後連動式を採用する125に対し、250は一般的なABSを採用する。125はリヤが入力に対してやや利きすぎると感じたが、250にそうした不満はなく、絶対制動力、コントロール性ともに良好だった。

レブル250の車両価格は61万500円、同Sエディションは64万9000円なので、それらと比べるとGV250S-EVOシュプリームはわずかに高めだ。しかし、エンジンの味わいではホンダの水冷シングルを断然上回り、しかもボバーらしいスタイリングも個人的にはこちらの方が好みだ。レブルが欲しいけれど他人とかぶるのはちょっと……、という人におすすめしたい秀作である。

ライディングポジション&足着き性(175cm/67kg)

共通のシャシーを採用するGV125Sボバーは、2022年に試乗した際はフラット気味のハンドルとミッドコントロールのステップを組み合わせていたが、のちにグリップ位置が約4cm高くなるアルミテーパーハンドルを採用。合わせてステップバーを約10cm前進させている。GV250S-EVO シュプリームもこれらを踏襲しており、コンパクトながらもクルーザーらしいライポジが形成される。
シート高は710mmを公称。直接のライバルであるホンダ・レブル250より20mm高いが、車体がスリムな上に、足を下ろす方向にステップバーがないので、足着き性は抜群にいい。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…