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ヒョースン・GV250S-EVO Supreme……68万7500円(予価、2024年10月発売予定)
スムーズなだけではない、味わいをプラスした水冷Vツイン
ヒョースンは1978年に韓国で誕生した二輪メーカーで、現在は中国のQINGQI(クインキー、現地での発音はチンチー)とのジョイントベンチャー「QINGQI KR」を立ち上げ、クルーザーモデルをメインにグローバル展開している。
水冷Vツインを搭載するこのGVシリーズは、まず125と300が当時に開発され、2017年のEICMAで発表されている。日本市場では2021年5月からユーロ5に対応した最新仕様が販売されており、筆者は翌2022年にGV125Sボバーを試乗している。60度Vツインのスムーズな吹け上がりと高い旋回力が印象的で、これでもう少しパワーがあれば……、でも300だと車検があるしなぁ、などと思っていた矢先に舞い込んだ朗報が「GV250Sボバー」の登場だ。
今回試乗したのは、GV250Sボバーをベースにフロントフォークを倒立化し、フル液晶メーターやフルLEDの灯火類を採用した上位モデル「GV250S-EVO シュプリーム」だ。GV250Sボバーとともに今年10月に発売予定で、価格差は4万4000円となっている。装備の違いを考えると、シュプリームのコストパフォーマンスはかなり高いと言えるだろう。
まずはエンジンから。ボア径はGV300Sボバーと同じφ58.0mmで、ストロークを56.0mmから47.0mmに短縮していることから、3兄弟の中で最もショートストローク比となった248.4cc水冷60度Vツイン。歯切れの良い排気音とは裏腹に、体に伝わる微振動は非常に少なく、GV125Sボバーと同様に吹け上がりは非常にスムーズだ。
何より感心したのは、街中で多用する3,000~5,000rpmにしっかりと実用的なトルクがあることだ。125よりも明らかにキビキビと走ることができ、流れの速いバイパスでもストレスを感じない。付け加えると、低~中回転域にはフワッと盛り上がるような脈動感があり、これが実に心地良いのだ。わずかにロングストローク設定の125はスムーズさが際立っていたが、250はそこに絶妙な味わいが付加されている。レッドゾーンの始まる10,000rpmまで回せば確かにパワフルだが、このエンジンはポンポンと早めにシフトアップし、3,000~5,000rpm付近で流すのが粋というものだろう。
なお、トランスミッションは125の5段に対して6段となっている。ややフォワード気味のステップバーに合わせて長めのシフトリンケージが使われているが、変速に関しては特に問題はなかった。
ボバーの姿を借りたネイキッドかと思わせるほどに旋回力は高い
続いてはハンドリングだ。直接のライバルとなるであろうホンダのレブル250が前後に16インチホイールを履くのに対し、ヒョースンのGVシリーズはフロントに16インチ、リヤに15インチを採用。さらにホイールベースは、レブル250に対して65mmも短いのだ。
そうした違いもあってか、このスタイリングにして旋回力は高く、ハンドルやステップにきっかけを与えてさえしまえば、あとは気持ち良く向きを変えていく。フロントの操舵は穏やかであり、基本的にはバンク角主体で旋回するタイプだが、十分以上のバンク角が与えられており、ステップが簡単に接地してしまい興を削がれる、なんてことがないのだ。
このシュプリームのトピックである倒立式フロントフォークについては、まだ新車ということもあり伸縮の動きこそ渋かったが、下りコーナーで積極的にフロント荷重で進入できるほどの剛性があり、この部分に関してはネイキッドも顔負けなほど。ボバースタイルでありながらワインディングロードを快走することができ、パフォーマンス的にはなかなかにあなどれないのだ。
ブレーキについては、前後連動式を採用する125に対し、250は一般的なABSを採用する。125はリヤが入力に対してやや利きすぎると感じたが、250にそうした不満はなく、絶対制動力、コントロール性ともに良好だった。
レブル250の車両価格は61万500円、同Sエディションは64万9000円なので、それらと比べるとGV250S-EVOシュプリームはわずかに高めだ。しかし、エンジンの味わいではホンダの水冷シングルを断然上回り、しかもボバーらしいスタイリングも個人的にはこちらの方が好みだ。レブルが欲しいけれど他人とかぶるのはちょっと……、という人におすすめしたい秀作である。