馬力はPCXよりもちょっぴり上。125ccスクーター、SYM・ジェットX試乗記

SYMは台湾初のモーターサイクルメーカーだ。1954年に設立されて以降、着々と発展を遂げ、現在では世界各国にスクーターとモーターサイクルを販売展開している。今回紹介するJET Xは原付二種クラスのパフォーマンススクーターである。

SYM・JET X……363,000円(消費税込み)


JET XのベースになっているJET 14は扱いやすくてトータルバランスの優れたスクーターだった。Jet XはこのJet14を進化させたパフォーマンススクーターという位置づけ。

エンジンの形式や排気量はJet14と変わりないが、最大出力、最大トルクともにアップ。最大出力は9.3kw/8000rpmと、このクラスで人気となっているPCXの9.2kw/8750rpmをわずかに上回っている。最大トルクに関してはPCXの12Nm/6500rpmに対してJet Xが 11.5Nm/6500rpm。わずかに負けているものの拮抗している。

フロントマスクのアグレッシブなデザインも個性的で、このマシンの走りの鋭さを強調しているような感じだ。

快活なエンジンのフィーリング

実を言うとJet Xに関しては何の前知識もなしに乗ったのだが、エンジンをかけてスロットルを捻ったときに元気よく吹け上がる様子を見て、かなり走りが期待できそうだと感じた。そのままスロットルを開けていくとクラッチのつながる回転数が高い。4000rpm弱から動き出し、更にスロットルを開けると6000rpm,くらいで鋭い加速に移る。全開にすると7500rpm位をキープして車速がグングン伸びていく。最大トルク、最大出力近辺をキープして最大現の加速力を引き出す設定だ。チューニングスクーターのような感じ・・・・といったらオーバーかもしれないが回転が上がってからクラッチがミートされる特性は面白い。

安定感の高いハンドリング

動き出して超低速で走っているときはステアリングの動きが重かったので、もっさりした感じのハンドリングなのかなと思っていたのだけれど、少し速度が出て、普段ストリートを走っているくらいの速度域になったら調度よいバランスになってきた。フロントの安定感が高く、交差点などでペースを上げてコーナーリングすると14インチタイヤの恩恵もあってスクーターらしからぬ安定感を発揮する。峠などは攻めていないが、街なかであれば車体もしっかりしているしサスの動きも悪くない。サスペンションのダンピングはあまり効いていないが、ストリートを走るくらいならこれくらいの設定のほうが軽快に走ることができる。

ABSなしでも不満なし

ブレーキはコンバインドシステムで右のブレーキレバーを握ったときはフロントのみで、左のブレーキレバーを握ると前後ブレーキがかかるシステム。左手だけでブレーキレバーを握るだけで強い減速力を発揮する。ストリートを普通に走る程度なら十分すぎるくらいの利き方だ。ハードに攻めるときなど、更に強い制動力が欲しい場合は右手のブレーキを追加で使用する。

ABSは装備されていないが、前後同時に制動力を発生するコンバインドブレーキは車体姿勢も安定していて、ハードブレーキングを何度か試みてみたがとても扱いやすく、普通のアスファルト路面なら相当に強くブレーキを握ってもタイヤがロックして姿勢が乱れるようなことはなかった。試しに右のブレーキレバーだけでフルブレーキしてみたが、右手だけだと制動力が足りていないし、車体の安定感も保たれないので減速のために右手のブレーキだけを使うのはあまり意味がない。あくまでも左レバーで前後ブレーキを使うことを基本とし、より強い制動力が必要なときは右手を追加するというのがこのバイクに合った使い方だろう。

個人的にはスクーターよりもミッション車のほうが大好物な性格ではあるのだが、Jet Xは60km/h位までがとても速くて運動性も良いから、試乗はとても楽しかった。ただ、クラッチのつながる回転数が高めだから、低速で曲がるときはスロットルを開ける量が少ないとパワーがかからずに車体が安定しないし、走行中も比較的高い回転を維持するのでノンビリと走りたいライダーにとってはせわしく感じるかもしれない。好みは分かれるだろうが、それがこのスクーターの個性。ストリートをキビキビ走りたいライダーに是非乗っていただきたいスクーターである。

ポジション&足つき(身長178cm 体重74kg )

ゆったりしたポジション。長時間走っても疲れは少ないはずだ。

シート高は770mmあるがシートの前側が細くなっているので足つきに関しては特に悪いという感じではない。テスターの体型だと両足の踵がついて膝も曲がっている。

ディテール解説

フロントタイヤは100/90-14。フロントフォークはリーディングアクスル。アクスルシャフトがフォークの中心よりも前についている。
リアタイヤは100/80-14。ホイールは左右非対称のデザイン。
サイレンサーには樹脂のプロテクターが装備されている。アルミのプレートでリアホイールを右側からも支持している。
変速システムはCVT。
リアブレーキはΦ220mmのディスクに対抗ピストンキャリパーの組み合わせ。
リアのサスペンションはツインショック。
フロントブレーキはΦ260mmディスクにスライトピンタイプの2ポットキャリパーの組み合わせ。
シート下には収納スペースとガソリンタンク。タンク容量は7.5リットル。
シート下の収納スースはヘルメットが一つ入る大きさだ
スポンジが厚く座り心地は良好。座面が広くてタンデムしても十分な余裕がある。
左のハンドルスイッチにはライトのハイ・ロー切り替え、ウインカー、ホーンボタンを配置。
右のスイッチボックスにはキルスイッチとスターター保団を配置。
パイプハンドルは適度にアップしていてバイクを操りやすい形状。
左側には収納ボックスがあって小物などを入れておくことができる。
スマートキーシステムを採用。イグニッションのオン、オフやハンドルロックはこのノブを回して行う。
スマートキー。このボタンを押すことでメインの電源のオン、オフを行う

主要諸元

エンジン型式 水冷単気筒4ストローク OHC4バルブ 排気量 124.6cc
ボアストローク Φ52.4×57.8mm 最大出力 9.3kW / 8,000rpm
最大トルク 11.5Nm / 6,500rpm 燃料供給システム E.F.I
トランスミッション C.V.T フロント:サスペンション テレスコピックフォーク
リヤ:サスペンション デュアルショック フロント:ブレーキ ディスクΦ260mm+CBS
リヤ:ブレーキ ディスクΦ220mm+CBS フロント:タイヤ 100/90-14
リヤ:タイヤ 110/80-14 全長×全幅×全高 2,000×760×1,115(mm)
シート高 770mm ホイールベース 1,350mm
タンク容量 7.5L アクセサリー クイックチャージ2.0充電器

キーワードで検索する

著者プロフィール

後藤武 近影

後藤武