ライバルはホンダPCX|SYMの125ccスクーター、JET X 125は走りで語れるオールマイティなスクーターだ

台湾のSYM(エス・ワイ・エム)が群雄割拠の125ccクラスに満を持して投入したのが、スタイリッシュなJET X 125だ。センタートンネルを持つ前後14インチホイールのシャシーに、12.6psを発揮する水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンを搭載。オールLEDの灯火類やスマートキー、USB電源など装備面でも日本メーカーのライバルに追従。その走りをじっくりとチェックしてみた。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●SYMジャパン(http://www.sym-jp.com/)

SYM JET X 125……363,000円

逆スラントのヘッドライトが特徴的なJET X 125。燃料タンクはシート下にレイアウトされており、センタートンネル内にあるフレームは剛性バランスを優先した設計と思われる。
直接のライバルとなりそうなのがホンダ・PCXだ。下の表に詳しいが、価格は5,500円安いうえに、アイドリングストップやトラクションコントロール、燃費計まで備えているのだ。
車体色は写真のレッド以外にブラックとホワイトを用意。いずれもホイールは黒となる。

ノイズや微振動はやや気になるが、エンジンの基本性能は十分以上

2010年のデビュー以来、国内の原付二種クラスの販売台数においてトップを快走しているホンダ・PCX。そんな絶対王者に対抗できるであろうモデルが台湾からやってきた。このJET X 125、ホイール径は前後14インチで水冷エンジンのボア径はφ52.4mmなど、3代目以前のPCXとの共通点が多く、積極的に研究したであろうことがうかがえる。

まずはエンジンから。124.6ccの水冷SOHC4バルブ単気筒エンジンは最高出力12.6psを公称し、原付二種クラスのスクーターとしてはトップクラスのスペックだ。停止状態からスロットルを開けていくと4,000rpm付近で遠心クラッチがつながりはじめ、140±5kgの車体をスルスルと加速させる。PCXやヤマハのNMAXらと比べると全域でノイズや微振動が多めなのと、クラッチがミートする際のバイブレーションがやや気になるが、エンジンの基本性能としては高いレベルにある。加減速シーンが連続する街中では交通の流れをリードしながらキビキビと走れるし、渋滞の中で停止するかしないかの場面においてもエンジンの出力をコントロールしやすい。そしてパワーについても、10%近い上り勾配で不足を感じなかったことから、スペックに近いデータは出ているものと思われる。


装備面ではライバルに一歩譲るも、シャシーの完成度は高レベルだ

続いてハンドリングについて。ホイールベースは現行PCXの1,315mmに対し、このJET X 125はやや長めの1350mmを公称。それもあってか微速域から安定性が高く、ふらつかずに発進できる。そして、どんな操縦でも車体を傾けさえすればしっかりと舵角が付き、スムーズに向きを変えるという印象はPCXに近い。さらに、フロントブレーキを残しながらの倒し込みや、旋回中にギャップを通過したときに感じるシャシーの剛性感は、PCXを上回っているのではとすら感じる。前後サスの動きも良好であり、これは石畳が各地に残る欧州市場の要望に応えたものだろう。

ブレーキは、フロントのみにABSを採用するPCXに対し、JET X 125は左レバーを操作すると前後が連動するコンバインドタイプを選択する。前後ともディスクなのでコントロール性が高く、また左レバーだけで事足りるほど十分以上の制動力を持つ。Uターンなどリヤだけ利かせたい場面ではフロントも連動することのネガ(車体が起きようとする)が出るが、気になったのはその程度だ。

趣味性の高いモーターサイクルとは違い、通勤通学の足としてシビアに選択されることの多い原付二種スクーター。ほぼ同価格のPCXに対し、アイドリングストップ機構やトラクションコントロールがないこと、ラゲッジスペースと燃料タンク容量が小さいことなどはマイナス要素となるはず。その一方で、この攻撃的なスタイリングとそれに見合う走行性能を有している点は高く評価したい。この外観にピンと来たら、ぜひ実車をチェックしてみてほしい。


ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

フロアは足を伸ばせるデザインとなっており、窮屈感はなし。防風効果は及第点レベルだ。
シート高は770mmを公称する。座面前方が適度に絞り込まれているので足着き性は良好だ。

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