KTM|この世にDUKEは数あれど、買うべき1台は「390DUKE」である。

125~390まで基本的に共通フレームに搭載する「スモールDUKE」シリーズ。125でも使用している軽量なフレームに3倍以上の排気量のエンジンを積むなんて、そんなことして大丈夫? とも思ったものだが、390DUKEに乗ると自信をもって「大丈夫!」と言える。

TEXT●ノア セレン
PHOTO●山田俊輔

※2019年12月10日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
KTM・390DUKE

KTM 390DUKE……640,700円

 当初日本に入ってきたのは125と200のDUKEで、ちょっと遅れて390が登場したと記憶している。125と200(後に250化)は楽しいバイクで、125は日本メーカーが忘れていたフルサイズの、ちゃんと楽しいスポーツバイクを提案して新DUKEシリーズの、さらにはKTMのオンロードラインナップの充実の起爆剤的役割を果たした。200や250は高速道路も含めた公道でより現実的なパワーを持っていたし、共通のフレームでもむしろバランスが良く感じたほど良いバイク。
 ところが390が出た時にはエンジンがフレーム下にちょっとはみ出している感じがあって、子持ちシシャモを連想したのを覚えている。125ccと共通フレーム、共通足周りで390cc、大丈夫かな? と思ったものだが、乗るとむしろこれがベストバランスだった。エンジンはドスドス回るタイプのものではなくギャン!とフリクション少なく高回転域を満喫できるタイプで、振動も少なくとてもスポーティ。コンパクトな車体を活発に駆動してくれる最高のコンビネーションだった。
 発表時にサーキットでの試乗会があったのだが、(サーキットのサイズにもよるものの)690DUKEと似たようなペースが可能だったことに驚いたもの。125DUKEの大きい版、という認識はすぐに改められ、スモールDUKEは390がベストバランスで250/200/125はむしろ小さい版、というイメージへと変わったほど、390の印象は良かったのだ。

モデルチェンジで高級化

 スモールDUKEシリーズはインド生産の戦略モデルということもあって、当初ところどころ690クラスに比べると廉価に作られている箇所が見受けられた。幸いそれは性能に関係する所ではなく走りに妥協があったわけではないが、本国オーストリア生産のものに比べるとちょっと個性的というか、イメージが違う部分もあった。ところがモデルチェンジをするとそういった部分は完全になくなり、690シリーズやそれよりもさらに大きい排気量モデルと同等のフィニッシュが与えられた。写真を見てもわかるように、各部のエッジがたったデザインや特徴的なヘッドライト、シート表皮のクオリティやカラー液晶メーターなどクラスレスな豪華装備であり、もはやスモールDUKEなどとくくれないルックスを手に入れている。KTMというロゴを見なくても、何だか変わったバイク、カッコ良いバイクに乗ってるな、という感じはかなり強まったと言えるだろう。

コンパクトで自由自在

 クラスレスなルックスだが、乗ればコンパクトで軽く、走り出す前から自信が持てる。アップハンドルと短いシートはオフ車的だが、一方でステップはけっこうバックステップになっているため長身だと下半身だけが少し窮屈に感じるかもしれない。
 エンジンを始動すると前の型よりもメカニカルノイズが減っていることに気づく。アクセルのツキもよく、排気音も以前はボタタタタっという個性的なものだったが、今はもっとパルス感のある歯切れの良い音。アクセルもクラッチも軽くてハンドル切れ角も大きく、何の不安もなく走り出す。
 ストリートでの常用域はRC390といった兄弟モデルよりもかなり元気でスパイシーに感じる。エンジンのアップデートによるものなのか、ファイナルがショートになっているのか、信号からのダッシュなんて本当にスパッと決まるし、車線変更や合流車線の加速なども思いのまま。小さな車体に対してエンジンパワーに余裕があり、それでいて690以上のクラスのような有り余るパワーに気を使わなければいけないといった部分がないため、ちょっとした無敵感を怖がらずに楽しむことができるのだ。

迷ったらコレ!

KTM・390DUKE

 そもそもKTM車がけっこう好きという贔屓目もある筆者だが、その中でも390DUKEは本当に誰にでも薦められる良いバイクに思う。今国内では400ccクラスが寂しい状況だが、免許は学生の時にとった普通二輪免許だけ、という人も多いはず。高速道路ばかりを使ったロングツーリングにでも行かない限り、400ccというのは日本の道路事情に本当に良く合った排気量だと思うが、その中でも390DUKEは楽しさ、便利さ、速さ、カッコ良さなど様々な視点から見てとても高いバランスにあると思う。
 大型バイクを持っているけれどなかなか乗る機会がないというベテランも、今免許を取ったばかりという初心者も、ちょっとサーキット走行会に参加してみたいなというバイクマニア予備軍にも、まったく誰にでも薦められる390DUKEである。

KTM・390DUKE

BYBREのキャリパーをシングルディスクと組み合わせるのは初期型から同様だが、これが非常にコントローラブルでよく効くブレーキシステム。倒立フォークの剛性感や、110幅のタイヤと合わせて絶妙なコーナリングを実現する。

KTM・390DUKE

周りをぐるりと囲むポジションがありつつ、中心から左右に分かれている特徴的なライトも790以上のDUKEシリーズと共通の高級感溢れるイメージにチェンジ。

KTM・390DUKE

44馬力と数値上はソコソコながら、軽量な車体と合わせてなかなかのパンチを見せるエンジン。アンチホッピングクラッチやライドバイワイヤーといった最新装備も満載。燃費が良いのも魅力だ。

KTM・390DUKE

150幅というジャストなサイズのタイヤがまたDUKEの運動性をサポートしている。マフラーはサイレンサー別体式となり、歯切れは良いがうるさくはない、心地よい排気音。

KTM・390DUKE

シャープなテールにLEDストップランプ。タンデムシートもある程度のサイズがあるため荷物の積載も可能で、その際にテールランプを隠さない作りが好印象。

KTM・390DUKE

WP製のモノショックは柔らか目の設定だが、奥で踏ん張ってくれるためサーキット走行でも不足なし。プリロード調整も可能だ。

KTM・390DUKE
左にはより大きな排気量のKTM車と同様の十字キーが配置されるが、調整できる項目は解除も可能なコーナリングABS機能ぐらいであまり多くはない。
KTM・390DUKE
右のスイッチボックスはライドバイワイヤ―ということもあってシンプルな作り。
KTM・390DUKE

アップハンドルはとても自然な位置で、適度に手前に絞られているためいたずらにファイター感の演出もしていない。タンクがとても短く、ポジションはコンパクトだ。

KTM・390DUKE

カラーとなったことで一気に高級感の増したメーター。割に大きめで見やすく、表示の切り替えなど各部調整は手元の十字キーで行える。

KTM・390DUKE
1290DUKE同様に表皮にパターンが入っておりこちらも高級感の演出に一役買っている。また着座位置に幅があるためホールド感が高く、なかなか快適であるうえに足つきも良い。
KTM・390DUKE
シート下は限られたスペースでアクセサリー用電源などが詰め込まれていた。

主要諸元

エンジン形式: 水冷4ストローク単気筒
排気量: 373.2cc
ボア×ストローク: 89×60mm
最高出力: 32kw(43hp)9,000rpm
最大トルク: 37Nm/7,000rpm
圧縮比: 12.6:1
スターター/バッテリー: セル式/12V8Ah
変速機: 6速
燃料供給方式: Bosch製EFI(スロットルボディ:46mm)
バルブ数/カムシャフト: 4V/DOHC
潤滑方式: 2基のオイルポンプによる圧力潤滑
エンジンオイル: Motorex Formula 4T
プライマリードライブ: 30:80
ファイナルドライブ: 15:45
クラッチ: PASC™スリッパークラッチ・機械操作式
EGマネージメント/イグニッション: Bosch製EMS・RBW
トラクションコントロール: -
フレーム: スチール製トレリスフレーム(パウダーコート)
サブフレーム: スチール製トレリスフレーム(パウダーコート)
ハンドルバー: スチール、テーパー状φ26/22mm
フロントサスペンション: WP製倒立フォークφ43mm
リアサスペンション: WP製モノショック
サスペンションストローク(F/R): 142/150mm
ブレーキ(F): 4ピストンラジアルマウントキャリパー、ディスクブレーキφ320mm
ブレーキ(R): シングルピストンフローティングキャリパー、ディスクブレーキφ230mm
ABS: Bosch 9MB 2チャンネル(解除可能)
ホイール(F/R): アルミキャストホイール 3.00×17”/4.00×17”
タイヤ(F/R): 110/70 ZR-17/150/60 ZR-17
チェーン: メリング 5/8×1/4"
サイレンサー: ステンレススチール製ブライマリーサイレンサー/アルミ製セカンダリーサイレンサー
キャスター角: 65°
トレール量: 95mm
ホイールベース: 1,357±15.5mm
最低地上高: 185mm
シート高: 830mm
燃料タンク容量: 約13.4ℓ
車輌重量: 約149kg(半乾燥)

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著者プロフィール

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ノア セレン

実家のある北関東にUターンしたにもかかわらず、身軽に常磐道を行き来するバイクジャーナリスト。バイクな…