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ベスパ GTS150クラシック……64万9000円(2023年5月9日受注開始)
やや高めの回転域を常用、スロットルを大きく開ければ速い
1946年の「ベスパ 98」からスタートしたピアッジオ製スクーターの歴史。1996年の「ベスパ ET2/ET4」で一気に近代的な設計となり、これ以降のモデルはモダンベスパと呼ばれるようになる。このETシリーズが一定の成功を収めたことで、2003年にはボディが一回り大きなGTシリーズを追加し、2014年末にはGTSシリーズへと進化する。
現在販売されているGTSは2023年にモデルチェンジしたもので、日本ではGTS300スーパーテック(91万3000円)、GTS300スーパースポーツ(88万円)、GTS150スーパー(64万9000円)、そしてGTS150クラシック(64万9000円)の4機種を展開している。各モデル2種類ずつのカラーバリエーションが用意されており、この中での共通色は一切なし。イタリアンメーカーらしく色には徹底的にこだわっており、個性を主張したい人の目にはかなり魅力的に映るだろう。
さて、今回試乗したのはGTS150クラシックだ。300と共通のスチール製モノコック構造のラージボディに、15.8psを発揮する水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ“i-get”エンジンを搭載する。ちなみにGTS150スーパーとの違いは、車体色以外ではグリップラバーやフットボードラバー、ホイール、フロントサススプリングなどの色が異なる程度で、主要諸元は共通だ。わざわざ色違いのパーツを用意するということは、部品管理などに相当な負担が生じているはずで、そこに妥協しないことで他メーカーとの差別化を図っているのだろう。
まずはエンジンから。同日にベスパ・スプリントS150にも試乗しており、155ccという排気量こそ共通だが、スプリントS150のエンジンは空冷4ストロークSOHC2バルブで、最高出力は3.3ps低い12.5psを公称する。一方、車重はスプリントS150の方が18kgも軽く、パワーウエイトレシオでは限りなく接近するのだ。
市街地での発進や加減速は、スロットルの開け始めですぐに遠心クラッチがミートするスプリントS150の方が上で、軽量コンパクトな車体と相まってキビキビと走れる。一方、GTS150クラシックは、常用回転数がやや高めな印象で、スプリントS150のように元気良く走るにはスロットルを大きめに開ける必要がある。とはいえ、原付二種スクーターよりはわずかに力強く、街の流れをしっかりとリードできる。
一方、信号のない田舎道を坦々と巡航する際は、レスポンスが穏やかでメカノイズも静かなGTS150クラシックの快適性が光る。車名のとおりグランツーリスモ的な印象で、今回は試すことができなかったが、これなら高速道路を使っての移動も疲れにくいのではないだろうか。また、スプリントS150にはないアイドリングストップ機能の動作も適切で、特に不満はなかった。
300と供用のボディゆえに剛性が高く、大らかに向きを変える
GTS150クラシックは300と共通のラージボディということに加え、今回の試乗車には純正アクセサリーのウインドスクリーンやトップボックスが装着されていたこともあり、スプリントS150と同じ排気量とは思えないほどのボリューム感だ。また、スペック上の車重はホンダ・PCX160より17kgも重く、取り回しは決して軽いとは言いがたい。
ところが、いざ走り出すとこの重さゆえなのか、微速域から安定感があり、スプリントS150よりもフラつきにくい。そして、徐々に速度を上げていくと、スチール製モノコックボディの剛性感に安心感を覚えるようになる。身を委ねられるとでも言おうか、ギャップや横風などの外乱に対して動じにくく、さすがはラージボディと言ったところだ。
そんな剛性の高いシャシーの前後でサスペンションが適切に作動しており、乗り心地はスプリントS150以上に快適だ。2023年モデルで新型になったというフロントのボトムリンクサス、パワーユニットの両側で支えるリアショックの設定が絶妙なのだろう。加えて、乗り心地の良さには座面形状の優秀なシートも貢献しているのは間違いない。
ブレーキは、フロント:ディスク、リア:ドラムのスプリントS150に対し、GTS150クラシックは前後ともディスクを採用する。スクーターは左手=リアを主体に速度をコントロールするシーンが多いだけに、リアがディスクなのはありがたい。前後とも十分以上の制動力を発揮してくれ、ABSの介入も特に問題なかった。
なお、2023年モデルの目玉であるキーレスシステムは、キーを差し込むことなくエンジンの始動やハンドルロック、シートの解錠ができるというもの。スマートキー自体はすでに珍しくないメカニズムだが、やはり使ってみると便利であり、同様のシステムがスモールボディシリーズにも普及することを願ってやまない。
試乗車に装着されていた純正アクセサリーのウインドシールドは、上半身に近い位置にあるので多少の圧迫感があるのと、取り回しの際にハンドルを大きく着ると体に接触しやすいというネガがある。一方で、やはり防風効果は非常に高く、気温が下がるほどありがたみを実感するだろう。トップケースは、シート下のラゲッジボックスの容量不足を補うもので、これもまた試乗中にヘルメット置き場として重宝した。12月25日(水)まで開催されている「ベスパGTSシリーズ・GTV純正アクセサリープレゼントキャンペーン」は、5万5000円分(税込み)の純正アクセサリーをプレゼント、もしくは車両の購入資金として3万3000円(税込み)をサポートするもので、このGTS150クラシックを含むGTSシリーズが気になっているという方は、これを機に検討してみてはいかがだろうか。
ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)
排気量155cc、前後ホイール径12インチは共通ながら、スモールボディシリーズのスプリントS150と比べると車格の違いは一目瞭然だ。車両重量はスプリントS150に対して18kg重い150kgを公称。試乗車は純正アクセサリーのトップボックスやウインドスクリーンなどを装着していたことから、さらに重量はかさんでいた。なお、シート高はスプリントS150に対して5mmプラスの790mmであり、足着き性はほぼ同等といったところだ。