「予算2000円」で旅に出る。ゆるカブツーリング・第一回|大月市・猿橋 

カブでツーリングすることはいまでは珍しいことじゃありません。日本一周した人だってたくさんいます。ストイックじゃないボクはもっぱら日帰りでツーリングを楽しんでいます。走行距離は200㎞以内。燃料満タンで余裕でめぐることができる範囲です。予算は2000円程度。そんなゆるカブツーを紹介していきたいと思います。今回は日本三奇橋に数えられる甲斐の猿橋を見に行きます。

旧甲州街道をたどり江戸情緒を満喫しながら猿橋を目指す

だれでもそうだと思いますけど、混雑する国道を走るのは好きじゃありません。ましてや幹線道路は大型トラックが多くて視界が悪いし、安全上の不安もあります。なのでツーリングでは県道や市町村道、農道といった裏道を走ることが多いのです。遠回りになることが多いけれど、交通量が極めて少ない道をスーパーカブでのんびり走ると、たっぷりと景色が眺められるからいいのです。というわけで今回も、裏道である旧甲州街道を走りつなぎながら大月市の猿橋へと向かうことにしました。
都内から山梨方面へは、中央自動車道と国道20号線が走っていて、猿橋までの道のりもこの2本の道がメインルートになります。そのうち中央道は除外します。ボクが乗るスーパーカブ110は高速道路が通行不可の原付二種だからです。というわけで国道20号線で目指すことになるのですが、極力国道を避けたいので、途切れながら続く旧甲州街道をたどって行きます。
高尾から相模湖までは国道20号で大垂水峠を越えます。旧甲州街道の小仏峠はハイキングのための登山道になっていてバイクは走れないからです。というわけで、大垂水峠を越えた先から旧甲州街道を進むことにします。旧街道には当然のことながら宿場町があるのですが、小仏峠から先は小原宿~与瀬宿~吉野宿~関野宿~上野原宿~鶴川宿~野田尻宿~犬目宿~鳥沢宿~猿橋宿と10か所の宿場町があります。せっかくなのでそれらの宿場町を踏破しながら行くことにします。
小仏峠と小原宿の間にある旧甲州街道の案内柱
小原宿本陣は県の重要文化財
本陣は内部の見学ができる
小原宿の名物(?)。寿堂の酒まんじゅう
狭隘な道の先に与瀬一里塚がある
吉野宿にある高札場跡
小原宿に入る前に小仏峠に向かう道を進んでみます。甲州古道の案内板が所どころに建っていて、馬頭観音の石碑もあります。国道20号線に出て少し行くと右手に小原宿の本陣があります。県の重要文化財に指定されている建物は、内部を見学することができます。ここ小原宿で目に付いたのが「酒まんじゅう」の幟です。寿堂という和菓子屋さんで製造している名物なのですが、なんとなく宿場町の雰囲気にピッタリだったので、1つ購入しおやつにしてみました。価格は160円でした。

相模湖インター入口の手前で国道20号線を離れて脇道を進みます。坂を上り民家が点在する辺りが与瀬宿です。一里塚跡があるらしいのですが、見つけられませんでした。そのまま旧甲州街道を走って国道20号線に出る手前に吉野宿の高札場の木柱があります。国道沿いには本陣跡などもあります。
関野宿と上野原宿の間にあった諏訪関所。現在は石碑がある
県道30号線に入ってまず最初にある宿場町が鶴川宿だ
集落の一角にはいまも江戸情緒が残る
次の関野宿までは国道20号線を走ることになります。藤野を過ぎた沿道に本陣跡の道標などがあるそうですが、見落としました。ここでまたまた国道を離れて境川へと下っていきます。相模国(神奈川県)と甲斐国(山梨県)の国境だった小さな堺沢橋を渡り、県道520号線に合流後、右に進路を取ってヘアピンカーブを抜けると、諏訪関所跡の石碑があります。たしかに国境なので関所があっても不思議じゃないのですが、初めて知ったので新鮮でした。

上野原宿は通過。国道20号線で市街地を抜け、市役所を通り過ぎた先で県道30号線に入ります。この県道が旧甲州街道にほぼ並行していて、個人的にも好きでよく通る道なのです。沿道には鶴川宿、野田尻宿、犬目宿と3つの宿場町があって、江戸の風情を垣間見ることができます。『旧甲州街道』の標識も至る所にあり、未舗装の箇所があったり、石畳の道が残っていたりと、歴史オタクにはたまらないルートなのです。まあボクは歴史オタクじゃないので入れ込むことはありませんが、交通量が少なくて風情があるから国道を走るよりはるかに楽しめます。
鶴川宿と野田尻宿の間に大椚宿発祥の地の碑がある
大椚にある吾妻神社
昔ながらの佇まいを見せる野田尻宿
旧甲州街道をたどると、ときとして未舗装の道に出会う
犬目峠付近からは富士を眺める
犬目宿
犬目宿の集落を行くと、旧甲州街道は山道となって続いている
犬目宿と鳥沢宿の間には恋塚一里塚がある
昔の面影を残す石畳の道
梁川駅近くにある「たてる屋」
梁川名物だというトロロそば
鳥沢宿の外れにある馬頭尊の石碑
犬目宿を過ぎて国道20号線に出たところで、いったん梁川方面へ戻ります。国道沿いに名物梁川つけトロロそばと幟のある店があったので、そばを食べることにしたのです。すでに昼時を過ぎていたので客はボクひとり。昭和歌謡が流れる店内で名物のトロロそばを味わいました。価格は850円。
日本三奇橋に数えられる甲斐の猿橋は、両岸から張り出した四層のはねぎによって支えられている特殊な構造の木造橋
お腹を満たしたところで鳥沢宿へと国道20号線を走ります。宿は国道沿いに町並みが続いていて、趣ある建物が軒を連ねています。そんな宿場町風情を走りながら眺め、甲斐の猿橋に到着しました。猿橋は防州・岩国の錦帯橋、越中・黒部の愛本橋とともに日本三奇橋といわれています。ただし愛本橋は現存しないため、日光の神橋や祖谷のかずら橋を仲間入りさせたりしているようです。しかし橋の構造的に異なっているので、錦帯橋と猿橋だけでいいんじゃないかと思っています。日本人はどうも3という数字にこだわりすぎますね。桂川の渓谷に架かる猿橋は、橋脚はなく、断崖の両岸から四層に重ねられた「刎木(はねぎ)」とよばれる支え木をせり出して橋を支る構造となっています。刎橋という形式なのだそうですが、なかなか見応えのある構造物だと思います。

こうして旧甲州街道をたどって猿橋まで走ってきたのですが、犬目宿、鳥沢宿、そして猿橋宿と続いていることに「あれっ?」と感じた人もいるんじゃないでしょうか。そう、犬、鳥、猿とくれば桃太郎です。桃太郎の鬼退治の昔話はだれでも知っていると思いますが、その舞台は吉備の国、つまり岡山県です。しかしここ山梨にも桃太郎伝説があるみたいです。まあ山梨は桃の里でもあるので伝説があってもおかしくないですね。
ということで無事に猿橋に着いたところでゆるカブツーは終了です。帰りも県道30号線をたどって、上野原からは仕方がないので国道20号線で東京へと戻りました。走行距離は135㎞。使用したガソリンは2L。かかった費用は1326円でした。

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…