今回の予算は800円。ゆるカブツーリング・第二回 町田市・小野路

クマやサル、シカ、イノシシといった野生動物が人里に姿を現すことが珍しくなくなりました。農作物に被害が出たり、さらには人的被害も発生していて社会問題になっています。野生動物が人間の生活圏に入り込んでいる要因のひとつが里山の減少だといわれています。でも、里山っていったいどんなところなのか、都市部に暮らす僕にはいまいちピンときません。そこで、身近にある里山を探してカブツーリングしてみることにしました。

購入から4年が過ぎたところでバッテリーを交換

里山探しのゆるカブツーに出る前に、バッテリーを交換することにしました。1ヶ月ほど前からセルが回らなくなっていたのです。まあキックで始動できるので走行には問題ないのですが、新しいバッテリーに換えることにしました。
スーパーカブは経済性に優れていて、バッテリーも5~6年はラクに持つと思っていたのですが、酷暑の夏と激寒の冬は乗らないという健全なバイクライフを送っているので、購入から4年目で寿命となってしまったようです。そうなると販売店にバッテリー交換を依頼するというのが一般的なんでしょうが、純正バッテリーはそれなりの価格ですし、作業のための工賃もかかります。というわけで、お金はないが時間はタップリある僕としては、自分で交換するということになります。
なにはともあれバッテリーをネット注文します。適合するバッテリーはたくさんありましたが、価格が手ごろな台湾ユアサのものをポチっと購入。2日ほどで配送されました。
さっそく作業に取りかかります。スーパーカブのバッテリーはシート下の前方に収納されています。その位置に着脱式のカバーがあるので、ビスを外してカバーを取り外します。
内部には電装パーツなどが格納されています。バッテリーを取り出す場合にはまず、バッテリーを押さえているカバーを外します。2本のビスで留められているのでこれを外します。次にバッテリーのマイナス端子の接続を外します。その後プラス端子のボルトを外して、バッテリー本体を引き出します。これで古いバッテリーの取り外しは完了です。
ネット通販で購入したバッテリーは充電済みとなっていたのでそれを信じて作業を進めました。本来なら電圧チェックをするのでしょうが、あいにく電圧テスターを持っていなかったので、そのまま取り付けることにしました。作業手順は外したときの逆に進めていきます。バッテリーを収納したらプラス端子を接続し、その後にマイナス端子を接続します。この時点で一応セルを回してみます。元気よく回って始動しました。最後にバッテリーカバーを取り付けて、シート下のボディのカバーを装着すれば終了です。作業時間は30分ほどでした。
ラフ&ロードのフロントフロアバッグを装着しているので、まずはバッグを取り外していく。バックルで接続しているだけなので簡単に着脱できる
シート下からフロアにかけて装着してあるカバーは上部にあるビス1本で固定してある。これをプラスドライバーで外したが、コインでも外せすことが可能
カバーの取り付けビスはこんな感じ。頭部分の切り欠きが大きいので10円玉などのコインでも回せるようになっている
カバーを取り去ると内部はこんな感じです。ドライバーがここに収納されている。手前にあるDユニットは電源確保のため装着したもの
バッテリーからマイナス端子の接続を外す
バッテリーを押さえているカバーを取り外し、プラス端子の接続を外す。カバーは2ヶ所でビス止めされている
左が装備されていたGSユアサのバッテリー。右は互換性のあるバッテリーの中から今回選んだ台湾ユアサのバッテリー
新しいバッテリーを収めたところ。その後プラス端子、マイナス端子の順に接続し、カバー類を元どおりに装着し完了

にほんの里100選に都内で唯一選ばれている町田市小野路へ向け出発

景観、生物多様性、人の営みを基準にいまも里山を維持している地域を100ヶ所選び出したのが「にほんの里100選」です。朝日新聞創刊130周年と森林文化協会創立30周年の記念事業として2008年に選定されたもので、東京都で唯一選ばれたのが町田市小野路です。「小野路」と聞いてもピンとこない人が多いと思いますが、今年サッカーJ1に昇格し、物議を醸したFC町田ゼルビアのホームスタジアム「町田GIONスタジアム」に隣接するところです。一帯は多摩丘陵となっていて、いまも自然が色濃く残り、原風景を見ることもできるエリアとなっています。また小野路は中世から江戸時代にかけて鎌倉古道、大山道など旧街道の宿場町として栄えました。幕末には新選組の近藤勇や土方歳三らもここ小野路に立ち寄ったという歴史もあります。

ということで、バッテリーが新しくなって元気にセルが回るスーパーカブで小野路へと向かいます。でもまっすぐに行ってしまうのはつまらないので、「吐道」の異名を持つ都道155号をたどって行くことにします。
都道155号は国道20号の八王子市大和田から都道57号相模原大蔵町線の町田市図師町とを結ぶ道で、かつての多摩テックのすぐ脇を通ります。この多摩テック脇もかなり狭いのですが、尾根幹線道路の南側、町田市上小山田町あたりがかなりの狭隘道となっています。一応幅2m以下、2t以下の車の通行は可能ですが、軽自動車でもすれ違いはできません。山を切り開いたようなそんな道をスーパーカブでスイスイ走るのは快感です。沿道には森と田畑しかありません。住宅が点在するあたりでT字路になり、都道は左に進みますが、いったん右に進路を取ります。1.5車線ほどの道を北に進んでいくと、尾根に上る手前に小さな池があります。実はこの池、鶴見川源流の泉なのです。鶴見川はこの源流から町田市、川崎市、横浜市を流れて京浜工業地帯まっただ中の鶴見区で東京湾に注ぐ全長42.5㎞の一級河川です。川の源流が身近に見られるのですから、なかなか感動的です。
狭い山道のような都道155号。冬のこの時期は落ち葉も多くて足元に注意しながら走ることになった
こんな感じの道が1㎞ほど続く。軽自動車でもすれ違いは困難な、まさに「吐道」
小さな公園のように整備された鶴見川源流の泉
中央の丸い池が源流で、底から湧き出している
小野路に向けてスーパーカブを走らせます。ひと口に小野路といってもエリアはそれなりに広いので、目的地はかつての小野路宿として周辺をめぐることにしました。高校野球の強豪である日大三高の東側には、にほんの里百選の候補となったであろう田園風景が点在します。ちょうどこのあたりが町田市北部の丘陵地帯に広がる約36haの図師小野路歴史環境保全地域となっているようです。農家を中心とした地元住民による任意団体「町田歴環管理組合」が東京都から委託を受け管理をしているとのことです。スーパーカブでほんの少しだけ畦道に入り込んでみると、まさに里山そのもの。田舎に帰ってきたような気持ちになる人も多いんじゃないだろうかと思いました。東京で生まれ育った僕の場合は、田舎を疑似体験したような感覚です。
「にほんの里100選」に東京で唯一選定された小野路の里山
小野路宿だったエリアにはいまも江戸情緒を思わせる家並みが残っています。その中心的な存在となっているのが「小野路宿里山交流館」です。かつてあった一軒の旅籠、旧「角屋」を改修し、観光交流の拠点として再整備した施設で、物産販売コーナーでは地元産の新鮮野菜、果物や工芸品などを販売。さらに食事処もあって小野路産の地粉を使用した小野路うどんが人気です。そこで昼食に小野路うどんを注文しました。野菜などが入ったつけ汁うどんに野菜のかき揚げがセットになっていて600円と格安。紅葉した庭木を千本格子の窓越しに眺めながら味わううどんはまた格別です。
小野路里山交流館には駐車場がないのですが、バイクは敷地内に留めることができるようになっているので、プチツーリングで立ち寄るには最適です。
小野路宿にある小島資料館は、近藤勇や土方歳三と親交のあった小島鹿之助の屋敷
かつては「角屋」という旅籠だった建物を改修し、観光交流の拠点として整備した施設が「小野路里山交流館」
小野路里山交流館には物販コーナーのほか食事処もある。名物はつけ汁うどんの小野路うどん(600円)
中庭にはみそ蔵などもあり、昔の暮らしぶりを垣間見ることができる
小野路里山交流館の裏手の狭い道をたどって行くと、田んぼが広がるエリアがあったり、山の斜面に築かれた段々畑や牧場などもあります。軽自動車がやっと通れるような舗装路が入り組んでいるのですが、舗装が途切れるとさらに道は狭くなり、バイクなら走れるといったダートが続いていたりします。バイクといっても大型車では二の足を踏む状況ですが、スーパーカブなら鼻歌交じりで走破できます。
町田市小野路は原風景ともいえる里山の風情と、江戸情緒を見せてくれる宿場町の風情、そしてスーパーカブの機動性の高さを実感させてくれたところでした。
走行距離は71㎞。使った費用は食事代とガソリン代で約790円でした。
宿場町の裏手の山には、段々畑や牧場があり、さらに奥が小野路城跡となっている
多摩丘陵にはこのようなダート道が何本も走っている。大半が田畑に通じる道なのだが、スーパーカブならラクに走破できる

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…