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似てるけど大きく違う ジャイロキャノピーe:は荷台もバンク、ジャイロe:の荷台はノンバンク
ホンダ・ATビジネスバイクは、2020年4月に二輪タイプの「ベンリィe:」、2021年4月に三輪タイプで大型低床荷台の「ジャイロe:」で電動化が進み、それぞれ法人向けに発売されています。電動化された3モデルは、すべて異なる特徴を備えて、それぞれが違ったビジネスシーンで使うことが想定されています。
例えば、ベンリィe:を採用する最も大口の顧客は日本郵便。二輪タイプで機動性があり、フロントとリアの両方に積載を想定した設計になっています。一方、ジャイロe:は三輪タイプを生かして、3モデル中で最も大型の荷台を備え、その荷台が地上455mmと最も低床。ビールケースや発砲スチロールのトロ箱などを搬送に適していることから、酒販店、生鮮市場関係者などの利用が想定されています。
今回の「ジャイロキャノピーe:」は「ジャイロe:」と同じ三輪タイプ。外見は「ジャイロe:」に大型ウインドスクリーンとルーフを備えた全天候型のようにも見えますが、ジャイロe:の超大型の荷台よりはコンパクトに、荷台の高さも上がっています。
最も大きな違いは走行中の車体挙動です。ホンダの三輪タイプは、ライダーの乗車位置と荷台が二輪タイプのように一体ではなく、機構によってつながり別の動きをします。ライダーが車体をバンクさせても、ジャイロe:の荷台は地面と平行を保つのに対して、ジャイロキャノピーe:の荷台は、車体といっしょに傾きます。
ジャイロe:は高積みしても荷崩れしないなど荷物優先、ジャイロキャノピーe:はルーフ付きで、ライダーの操縦性と荷物を両立したバランスを優先させ、拡大するフードデリバリーや定期巡回など適しているというわけです。
ビジネスモデルで一括りにするのではなく、使われ方に合わせて二輪だけでなく三輪も用意して車両を造り込む。スーパーカブからビジネスバイク市場を発展させたホンダの“本気”が、ここには現れています。
電動化3年目にしてモバイルパックeで、航続距離をさらに延長
ホンダのビジネスバイクの電動化は、交換式バッテリーシステム「モバイルパワーパック」が支えています。3モデル共通でパワーパック2個直立系96V系EVシステムですが、ジャイロキャノピーe:では、このモバイルパワーパックの性能をあげた「モバイルパワーパックe:」を採用。ゼロから満充電まで約5時間。30kmの定地走行試験値で1充電あたり77kmの走行距離、原付1種バイクの最大積載量30kgのフル積載時にも14度の登坂を可能にしました。これはモバイルパワーパックを約20%引き上げた性能です。
モバイルパワーパックe:は、モバイルパワーパック仕様のベンリィe:、ジャイロe:でも共通で使うことができます。
ホンダはベンリィe:、ジャイロe:、ジャイロキャノピーe:のオートマチック電動3モデルを「Honda e: ビジネスバイクシリーズ」として、バイクの脱炭素化の環境対応の先駆けに位置づけています。
市場投入に先立ち、ホンダの販売会社「モーターサイクルジャパン」室岡克博社長は、こう話します。
「ホンダは、あえて過酷な使用用途のビジネス領域から電動化にチャレンジすることで、使用状況や使い勝手、交換式バッテリーの有用性についてご意見を聞き、知見を増やし、技術をフィードバックすることで、お役立てできるように製品の開発販売に努めたい」
また、同社営業部法人販売課の古賀耕治主査は、その目標を示しました。
「ホンダのビジネスモデルのうち、オートマチックスクーターのベンリィシリーズ、ジャイロシリーズの販売構成比を2025年に7割以上で電動化モデルの販売を目標にする。eシリーズで普及促進を目指す」
ジャイロキャノピーe:は71万5000円(税込み)ですが、経済産業省関連の補助金6万円のほか、地方自治体の助成金36万5000円(東京都の場合)などの支援があり、ほぼガソリン車並みの価格に抑えられます。法人向けで、ホンダe:ビジネスバイクシリーズの専用サイトからの申し込みが必要です。