MotoGP第6戦フランスGPが、5月9日から11日にかけて、フランスのル・マン-ブガッティ・サーキットで行われ、ヤマハのファビオ・クアルタラロが今季2度目のポールポジションを獲得した。
スプリントレースは4位、決勝レースは転倒リタイアに終わったが、ヤマハの前進を印象付けた。
クアルタラロのポールタイムと、予想していたレースの難しさ
フランスGPの週末は、日曜日の決勝レースで劇的な優勝を飾ったヨハン・ザルコ(ホンダ)が、最後にル・マンの歓声を一身に浴びた。だが、土曜日にファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)が見せた、Q2(予選2)のラップタイムもセンセーショナルだったことは間違いない。
ヤマハは、ル・マンで新しいエンジンを投入している。クアルタラロとチームメイトのアレックス・リンスは金曜日を終えて、新エンジンについて概ね前向きなコメントをしていた。といっても、そのコメントから劇的前進、というわけではないことも窺えた。
このエンジンが大きく貢献したのではないだろうが、クアルタラロは、マルク・マルケス(ドゥカティ)が金曜日午後のプラクティスで記録したオールタイム・ラップ・レコード、1分29秒855を更新する、1分29秒324を叩き出したのだ。前戦スペインGPに続き。今季2度目のポールポジション獲得。そして、3戦連続のフロントロウ(1列目)である。
土曜日午後のスプリントレースでは4位、複雑なウエットコンディションとなった日曜日の決勝レースでは、転倒リタイアに終わったものの、レースで苦戦することは、クアルタラロ自身も織り込み済みだった。
土曜日のスプリントレース後、クアルタラロは囲み取材でこう語っている。
「レース全体は予選より難しいとわかっていたよ。どんな細かい部分も重要になるからね。でも1周だけのタイムアタックでは、基本的にもっと“クレイジー”なんだ。いいラップだった」
「僕たちのバイクで本当に重要なのは、まさにこの“一発の速さ”なんだ。パワーがすごいわけじゃないのは分かってるし、グリップも足りない。エアロも他に比べて劣っていて、足りないものはたくさんある。1周だけならそれほど問題にはならないけど、レースになると全てが影響してくる。ただ、レースを1列目からスタートするのと2列目後方からスタートするのとでは、全く別の展開になるのは間違いない」
「僕たちにとって予選の“一発”は強みなんだ。今は、フロントロウを取るために、本当に速く、そして限界までプッシュしなきゃいけないんだよ」
YZR-M1にはグリップ、パワーが欠けており、ウイリーが問題だと、クアルタラロは指摘している。
転倒で終えた決勝レース後もまた、「優勝や表彰台は難しいペースだとわかっていた」と語っていた。
クアルタラロは、ル・マンにおいて、今のYZR-M1ではレースでドゥカティ勢と競い合うことが難しいとわかっていた。そして、実際のところ、結果はその見解の通りとなった。しかし、2024年までのヤマハならば、クアルタラロが得意のサーキット(ヘレス)や母国のル・マンでいかに全力で攻めようとも、現在のような予選結果を出すことは難しかっただろう。
クアルタラロとリンスは、イタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリでプライベートテストを実施してイギリスGPに乗り込むという。改善の模索は続けられている。当然、ドゥカティとて改善し続けており、前進するライバルに追いつくことは容易ではない。クアルタラロがそう感じているように、ドゥカティ勢と「戦う」のは、すぐにとはいかないだろう。ただ、今、最も重要なことは、ヤマハは確かに前進しており、それが結果に結びつきつつあるということだ。
