ホンダの原付モデルが熱い。スーパーカブはご存知のように大人気なうえ、初代C100をモチーフにしたC125が2018年に発売された。さらには1981年に発売が開始され国内では1986年に、海外仕様でも2012年に生産を終了していたCT110が2019年にハンターカブ・CT125として復活する。また1960年代に発売され2009年までの長い歴史に幕を閉じたモンキーも、2018年に125モデルとして復活している。いずれも125ccエンジンを用いて排ガス規制を乗り切り、車体を大きくしつつも過去のスタイルを巧みに取り入れていた。ここまで続くと、ファンならずとも期待するのがダックスの復活。その声に応えるよう、ホンダは2022年3月19日に開幕する大阪モーターサイクルショーでダックス復活を明らかにしたのだ。
1969年に発売された当初はダックスホンダを名乗り、ベーシックなST50と同70、さらにはアップマフラーを採用したエクスポートの計4機種でスタート。エンジンはスーパーカブのものを流用して遠心クラッチによる3速ミッションが組み合わされていた。この初代は1981年まで数度のマイナーチェンジを実施して生産され続けたが、販売終了後も根強い人気を誇り1995年に復活を遂げる。その際に車名が単にダックスとなり、エンジンも50ccのみという仕様だった。この2代目は初代と同じTボーンフレームなど、ほぼ同じスタイルのままで復刻したものの1999年に生産を終了している。
今回復活がアナウンスされた3代目は、ここしばらく続いているリバイバル原付と同じように125ccエンジンによるもの。そこでフレームは刷新され、ボディ自体も大型化している。
どれだけ大きくなったかは実際にまたがった写真をご覧いただくとわかりやすいだろう。ちなみに筆者は身長163cmで純和風な短足体型だ。それゆえ足つき性にはシビアなわけだが、新型ダックスは両足だと足指の付け根まで届くので不安感はない。片足ならしっかり踵まで届くので、取り回しに苦労することはない。初代ダックスホンダST70エクスポートを所有していた経験があるので「ずいぶんと大きくなったな」という印象は拭えないが、このサイズと125ccエンジンであることなどから、街中を走っていて怖い思いをすることはなさそうに感じた。
エンジン自体はグロム用として開発されC125やCT125、モンキーにも転用されたものと考えていいだろう。グロム用だとシリンダーもヘッドも黒く塗装されているが、ダックスではシリンダーヘッドが黒、シリンダー自体はシルバーと色分けされている。モンキーだといずれもシルバーなので、同じエンジンとはいえ印象は変わる。エキゾーストは直後に車体後ろへ伸びてキャタライザーを経由した後、また前に戻してアップマフラーへと繋げている。マフラーガードのデザインは1995年に復刻されたダックスと似たものとされ、初代エクスポートとは印象が異なる。
ダックスといえば「クルクルハンドル」などと呼ばれ、取り外しが可能なハンドルが特徴だった。だが今回の新型では一般的なアップハンドルが装備されている。以前のモデルはハンドルを外して4輪のトランクに積載可能なサイズだったから意味があったけれど、新型は気軽に積めるサイズではないので、これも致し方ない。ハンドルの幅は実測で75mm。ハンドルホルダーはモンキー用と違うデザインのものだが、丸いデジタルメーターはモンキー125と同じものだろう。
Tボーンフレームとともにダックスのスタイルを特徴付けているのが反り上がるデザインのシートだろう。こちらもサイズを計測してみたところ、長さが530mmで前側の幅が220mm、後側の幅が230mmだった。これだけのサイズならダンテムしても無理なく走れることだろう。シートに沿うようにデザインされたタンデムバーは標準装備されるのか、オプション部品なのかは現時点で不明。またLEDによるテールランプはモンキー125と共通に思える形状だった。
前後とも10インチタイヤを採用して伝統を継承しているが、ホイールは前後ディスクブレーキとなったことでキャストホイールになっている。5スポークでグロム用とよく似たデザインだ。ツインショックとなるリヤサスペンションは実測で340mmの長さとなり、スイングアームはモンキー125ともグロムとも異なるデザインとされている。
最後に過去発売された歴代ダックスと写真で比較してみよう。新型が非常にうまく過去のデザインを現代に甦らせているとわかるはずだ。