近頃125ccスクーターが気になるから! ヤマハNMAXに乗ってみたら、オッサンにも最適だと思った!

新車の納車待ちが半年以上も待たされるのがザラな状況にある昨今のバイク市場。ないと言われると欲しくなるのが人情でもある。50歳を過ぎたオッサンは贅沢なもので落ち着いたスタイルや挙動、デイリーユースからツーリングまで使えるオールラウンダーに心惹かれる。ただ軽二輪もいいけれど、維持費のことも考えると、自動車保険のファミリーバイク特約で賄える、原付2種あたりがなかなか良さそう。すると気になるのがヤマハNMAXだった。ちまたホンダPCXとライバル視されるNMAXだが、果たしてどんな乗り物なのだろう?

REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ヤマハNMAXに乗ってみた。

先日「新型PCX VS ライバル対決 試乗編」という記事を書かせていただいた。記事の元になっている動画は筆者が記念すべきバイク雑誌デビューを果たすことになったモトチャンプが動画配信している「モトチャンプTV」の1プログラム。記事にするため何度か動画を視聴したところ、ホンダPCXとヤマハNMAXのライバル度合いが印象に残った。動画に登場するのは160ccと155ccの軽2輪モデルだが、あまりのガチさぶりは若き頃に見てきたHY戦争さながらだな、なんて懐かしくなったもの。同時にライバル対決を見ていて「軽2輪より原付2種スクーターで構わないし、それ以上なら大型でしょ」と個人的には思った。

ホンダPCXなら太鼓判だろう。

PCXとNMAXはともに125ccモデルが存在する。どちらも2021年発売のブランニューモデルであり、価格はPCXの35万7500円(税込)に対してNMAXは36万8500円(税込)。どちらも諸費用込みで40万円ほどか。ただ、NMAXにはスマートフォンとブルートゥース接続して車両情報をモニターできるYコネクトと呼ばれる装備がある。スマホとペアリングすれば通話着信を知らせてくれるほか、燃費管理やメンテナンス時期、最終駐車位置や故障通知などがスマホで確認可能になる。1万1000円高いけれど、前述の動画でPCXよりNMAXがスポーティという部分に気になった。では実際乗るとどうなのか、「実際に購入するならば」という観点から確認してみることにした。

ヤマハNMAX ABS 36万8500円(消費税込み)

どこかしら落ち着いた雰囲気が漂うヤマハNMAX。
ヤマハNMAXは36万8500円(税込)。

借り出したのは4色から選べるカラーリングの中でパステルダークグレーと呼ばれるボディカラーを纏った1台。個人的にはこの色かマットダークパーブリッシュブルーメタリックが好みだったので、これは嬉しいところ。単体の写真で見ても分かりづらいが車体寸法は全長1935mm/全幅740mm/全高1160mm/ホイールベース1340mm。実はこの数値、同じヤマハのシグナスグリファスとかなり似ている。価格も似たようなもので、PCXよりむしろシグナスグリファスがライバルなのかもしれない。けれど、50歳を過ぎた筆者にシグナスはちょっぴり恥ずかしい。それほど「やる気」もないのだから。

163cm(短足ぎみ)の足つきチェック

両足は足指の付け根付近まで着地。
片足で尻をずらせば踵も着地する。
これだけ着けば文句なし。

モーターファンBIKESで何度も足つき性を話題にしてきた。それは50歳過ぎのオッサンが身長163cm、純和風短足体型なため足つきが悪いバイクだとシビアな場面に遭遇することが多いから。例えば数年前にスズキ・Vストローム1000XTを試乗した。シート高が850mmもあり片足でもつま先がツンツン状態で、信号待ちのたびに高くなっている路肩を探さなければならなかった。走り出しちゃえばいいバイクなのだが、とてもじゃないが買う気にならない。そんなオッサンでもNMAXは絶対の自信を持って扱うことができる。ま、スクーターなのだから当たり前なのだが……。

使い勝手はどうだ?

広過ぎず自然と手を伸ばしたところにあるハンドル。
左スイッチ。上からメーターのメニュー切り替え、ハイ/ロー、ウインカー、ホーンの順で並ぶ。
右スイッチ。上からアイドリングオン/オフ、ハザード、スタータースイッチの順。
キーレス仕様でメインスイッチの左右にポケットを装備。
給油口はメインスイッチ下のボタンで開く。
ポジションの自由度が高いシート形状。
ヘルメットは頭頂部を下に向けて収納する。今回はジェットだがフルフェイスでも収納可能。

標準装備するモデルが増えてきたが、NMAXはキーレス仕様。キーの代わりになるリモコンを持って近づけばメインスイッチが操作可能になるので、抜き差しせずに乗り降りできるのはなかなか便利。短足なオッサンでもポジションに不満はなく、自然と手を下ろした位置にハンドルが構えている。左右のスイッチ操作に手こずることもなく、操作系は誰にでも分かりやすい構成だ。給油口やシートロックの解除はメインスイッチの下にあるボタンを押せばいいだけで、リモコンが近づかないと動作しない。これも個人的にとてもいい装備だと思う。もちろんシート下の収納力に不満はない。

運動性能はどうだ?

フロントディスクブレーキと13インチアルミホイール。
リヤディスクブレーキにもフロントと独立したABSを装備。
水冷124cc4バルブSOHCエンジンと駆動系。
消音機能に優れつつメリハリある排気音を奏でるマフラーと2段階調整可能なリヤサスペンション。

落ち着きあるスタイリングのNMAXだが、走りはスポーティという印象を前述の動画で抱いていた。実際に乗ってみて一番に感じたのは、スポーティというよりスタイル同様に落ち着きある前後サスペンションによる挙動に感心してしまったこと。250ccビッグスクーターとまでは言わないけれど、足を置くフットボードが広く、前方に足を投げ出すような姿勢でスタートすると、荒れた路面でのしなやかな乗り心地に驚いたほどだ。これで125ccなの?と思うほど路面を問わずしなやかな身ごなしを演じ、鋭い突き上げやタイヤの接地感が失われることもない。125ccスクーターというと通勤スペシャル的な乗り物を想像するのだが、NMAXならツーリングに連れ出そうとさえ思える。絶対的にはコンパクトなので通勤でも使えるだろうが、用途を限定しない懐の深さを備えているのだ。

さらに感心したのがブレーキ。フロントはシングルながら前後にφ230mm径のディスクブレーキを採用しつつ、前後独立したABSを装備している。ABSが効くかどうかといった領域までレバーを握ると、車体がブレることなく前後サスペンションが沈み込んで思った通りの制動力を発生する。絶対的な制動性能だけでなく特筆したいのはブレーキング中の挙動。乗り味同様、実に安定して落ち着きある挙動のままハードブレーキングが可能なのだ。

BLUE COREエンジンは以前にも試乗したことがあり、どのような特性なのか知っているつもりだった。エンジン回転数によりローカムとハイカムが切り替わる可変バルブ機構(VVA)を装備して、124ccの排気量から12ps(9.0kW)を生み出す水冷SOHCエンジンはスペック通りといった印象だが、一定速で流れている状況からフルスロットルを与えると印象は一変。カムの切り替わりを感じさせないままスルスルと車速が伸びていく。しかも、このような状況にあっても乗り心地やブレーキングで感じた落ち着きある挙動を維持する。またこのエンジンはアイドリングストップシステムを採用している。エンジンが温まると車体が完全に止まると同時にエンジンが停止。ブレーキをリリースしてもエンジンは再始動せず、スロットルを若干操作するとタイムラグなしに再始動してくれた。

前後13インチタイヤを備える足回りもここまでの印象通りの挙動を示し、ブレーキングからの倒し込みが自然なら挙動に不安感は一切ない。試乗した路面は一部に砂が浮いていたため若干不安はあったのだが、コーナリング中でも安定した姿勢を維持して何事もなくクリアしてしまう。トラクションコントロールシステムを採用しているためでもあるのだろう。これなら1車線しかないような細いつづら折れが続く山道でも安心してツーリングできそうだ。

スタイルはどうだ?

2眼6灯LEDヘッドライト。
LEDテールランプ。

冒頭でシグナスグリファスだとオッサンは気恥ずかしいと書いた。シグナスは代々スポーティなスタイルと動力性能が支持され、カスタム人気も高い。だからオッサンより若い世代にジャストなスクーターと感じるのだ。ところがNMAXは場違いなオッサン的イメージを抱くことはないし、かといって実用車のような雰囲気もない。どちらかと言えば高級感さえ漂うスタイリングだと思う。走って感じた「落ち着き」をスタイル全体でも表現しているといったところだろうか。かといって若者に勧めないわけではない。むしろ短足なオッサンよりセンスのある若い世代が乗りこなしてしまうのかもしれない……。

NMAX ABS 主要諸元

全長/全幅/全高:1,935mm/740mm/1,160mm
シート高:765mm
軸間距離:1,340mm
最低地上高:135mm
車両重量:131kg
エンジン形式 水冷4サイクル直列単気筒SOHC4バルブ
総排気量:124cc
内径×行程:52.0mm×58.7mm
圧縮比:11.2:1
最高出力:9.0kW(12ps)/8,000rmin
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/6,000rmin
燃料タンク容量:7.1L(無鉛レギュラーガソリン)
燃料供給方式:フューエルインジェクション
タイヤサイズ(前/後):110/70-13M/C (48P)/ 130/70-13M/C (63P)
制動装置形式(前/後):油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後):テレスコピック/ユニットスイング

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…