トリシティ125を170ccにボアアップ|マフラーとエアクリはノーマル、燃調セッティングはスマホ!

前2輪・後1輪の特異なスタイルで注目されているヤマハ・トリシティ。2018年にモデルチェンジしてエンジンが4バルブ化されたわけだが、それより前の前期型を魅力的にしてくれるボアアップキットが登場した。今回は初期モデルの初2バルブエンジンをベースにボアアップしたモデルに試乗してみた!

REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
170ccにされたトリシティの実力や、いかに?

2018年にモデルチェンジして4バルブBLUE COREエンジンとなったトリシティ。先日試乗して2輪のバイクとは一味違う楽しみを再確認したわけだが、なんとトリシティにもボアアップキットが存在すると編集部の山田から教えられた。それはぜひとも試してみたい! と聞けば、製作したのは195ccまでボアアップしたNMAXに試乗させていただいたカムイ八王子だという。どうせならトリシティにも乗らせて欲しいと思うのは自分だけでないだろう。ということで、NMAXに続いてトリシティも試乗させてもらうことになった!

小排気量車用を中心に、数々のカスタムパーツ、チューニングパーツが並ぶカムイ八王子の店内。
トリシティのボアアップチューンを提案する瀧田店長。

店長の瀧田さんにお話を聞けば、トリシティをボアアップすることにされたのは前期型が買いやすい価格帯にあるからだという。確かに2018年にモデルチェンジしているので、古い2バルブエンジンだった前期型は安くなっていることだろう。そこで相場を確認してみることにした。

前期型トリシティの相場チェック!

グーバイクで安い順に並べてみると、確かにお値頃。

まずショップの売り物をグーバイクで見てみることにする。すると、これは確かに安い。最安値は14万円台から見つかり、一般的な売り物でも20万円を切るくらいがボリュームゾーンのようだ。

ヤフオク!で検索すると。

そこでヤフオク!でも探してみることにする。すると、あるわあるわ、安いトリシティが何台も出品されていた。しかもヒト桁万円なんて個体まであり、確かに買いやすい状況にあるようだ。ただ、これらの格安物件は走行距離が伸びていたり、入手後にトラブルが発生する可能性も大きい。過走行なものであればエンジンのオーバーホールくらいは視野に入れておくのが確実だろう。だとすると、カムイ八王子が開発したボアアップキットを組んでしまうのと費用的に変わらないはずだ。おそらく店長の瀧田さんもこのような見解からこのキットを導入したのだろう。

170ccボアアップ仕様

外観はリヤキャリアを装着しただけでほぼノーマルだ。
モデルチェンジ後と大きく変わらない、控えめのスタイル。
170ccにボアアップしてあるが駆動系もエアクリーナーもノーマルのまま。
メーターもノーマルだけで追加メーターはない。

写真を見ればお分かりのように、ボアアップされた前期型トリシティはエンジン以外ほぼノーマルのまま。カスタムするにもパーツが少ないモデルらしいところだが、特徴的なスタイルだからわざわざ極端なドレスアップをする意味もないだろう。

肝となるエンジンはTTMRCの61mmボアアップキットで、2バルブ前期型のストロークは57.9mmだから排気量は169ccとなる。ちなみにトリシティ(前期型)のノーマルのボア×ストロークは52.4mm×57.9mmで、排気量は124cc、最高出力は8.1kWとなっている。今回の試乗車には61mmのボアアップキットが組み込まれているのだが、シリンダーヘッドについては純正のまま。ハイカムシャフトやビッグバルブなどは使用せず、あえて純正ヘッドのまま排気量を上げるだけに留めている。というのもピークパワーを狙ってチューニングを突き詰めてしまうと、どんどん乗りにくい特性になってしまうからだ。またセッティングには苦労したそうで、普通に組むと圧縮比が高くなり過ぎてしまい、ヘッドガスケットの厚みを増やすことで、街乗りを難なくこなせるようになったそうだ。

ECUは社外製フルコン、aRcaerに変更済み

純正ECUの代わりにaRcaer製フルコンを使用。これによって燃調マップを細やかにプログラムできる。
燃料タンク脇にAF-2をセット。

制御ユニットは定番のaRacerを使う。aRacerの利点はMAPが白紙ではなく数パターンから選べることにあり、さらにセッティングのしやすさも抜群。少々値段は張るものの、インジェクションモデルのボアアップには欠かせない存在だ。ところがインジェクターをはじめ吸排気系はノーマルのまま。そもそも純正で155ccエンジンが存在するため、純正のインジェクターも170cc程度までなら十分に対応できてしまうのだ。そう考えるとお財布に優しいボアアップキットといえるだろう。

燃調や点火時期のセッティングは、スマホのBluetooth通信で行う。

燃調や空燃比が連動させたスマホで確認できるのは画期的。しかもスマホでセッティングもスマホ上で変更できるので、一度慣れてしまうと他社製品には戻れないと瀧田さんも語っている。またモニター画面はタコメーター表示にもなるので、ホルダーで固定すれば追加メーターも必要ないのだ。

エンジン回転数や、電圧、水温、空気圧までスマホ画面で一目瞭然選。
横向きにして使うことも可能。

クラスを超えた走行性能

前期型であることを忘れるくらい速い!

エンジン以外ほぼノーマルなとだが、走り出す前にオドメーターを確認すると3万5000kmを超えている。すでに車体はだいぶヤレていると考えていいだろう。ボアアップしなかったとすると、くたびれたエンジンは相応にパワーダウンしているはず。そんなことを考えながらスタートすると、アッと驚くことになった。何しろエンジンが元気なのだ。駆動系がノーマルなので加速感は穏やかなものの、想像以上にスルスルとスピードが伸びていく印象。これは先日試乗した4バルブの現行モデルより明らかに速いだろう。排気量が上がっているので当たり前だが、特筆したいのは出力特性。エンジン以外ノーマルなのでこれまた当たり前だが、カスタムしたバイクのように尖った部分をどこにも感じない。速いと形容するよりひとクラス上の乗り物という表現が最適で、ボアアップ車に乗っているんだ!と気負わず、普段使いも上品にこなせるだろう。

安定感あるコーナリングは健在だ。

さすがに走行距離が3万kmを超えているので、ブレーキを始め他にも手を入れたくなる部分はあった。駆動系をちょっとだけ変更すると、エンジンのパワー感はさらに上がることだろう。けれど、あえてボアアップだけに止めるのが良識ともいえる。イジッた様子が一切ないのに余裕のパワーで流れをリードする。これぞオトナというものだ。それに前2輪で抜群の安定感あるコーナリングも健在。コーナー脱出でフルスロットルにすると、もう笑いが止まらなくなること間違いなしだ。最後に気になる費用についても紹介しよう。

170ccボアアップ費用

TTMRC 61mmボアアップキット:価格3万5750円/工賃2万6400円
aRacer miniX:価格4万9500円
aRacer AF-2:価格4万1250円/工賃8000円(miniX含む)
マフラーO2センサーボス取り付け:価格1320円/工賃2000円
シリンダー・ウォーターパイプ加工:工賃4000円
エンジンオイル:価格2650円
クーラン: 価格990円
パーツ合計:13万1460円 工賃:4万400円 累計:17万1860円

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…