もう数年も前のことだが、モンキーなどのホンダ車をカスタムするコスモ2輪企画(その後、店名をCOSMO、club165と変更/現在は休業中)というショップが存在した。モンキー専門誌で取り上げられたこともある赤い個体は、ショップ社長(大野雅己氏)が自ら乗るつもりでカスタムを進めたもの。シルバーの個体は赤い個体と同じようなカスタムであるが店舗移転に伴い、急遽あり合わせの部品で製作されたもの。どちらも非常に珍しい手法で製作されているが、すでにショップが存在しないため当時を知る一部のマニアが店舗移転前に製作された車両の行方を探していたという。第13回モンキーミーティングの会場に、なんと2台を同時に持ち込んだ参加者がいた。参加者は赤い個体を当時、ショップ社長から譲ってもらい、運よく当時、ほぼ完成していた銀色の個体を偶然にインターネットにて見つけ2台とも入手することができたため、お披露目を兼ねて参加されたのだそうだ。
この2台は店主がプライベートで製作したプロトタイプ車両(1999年頃)と、おそらく店舗休業前に製作された、現時点で確認できるclub165(旧コスモ2輪企画)の最後期の車両ということになる。
赤いモンキーはZ50A型をベースに製作されたもので、先述のとおりコスモ2輪企画店主自ら乗るつもりでカスタムされている。組み合わされた燃料タンクは4リッター時代のモンキー純正(その後、ビッグシーダーのアルミ製タンクをベースにTL125用アルミネジ込み式キャップが取り付けられるよう加工したものに変更)で、シートはドリーム50純正。そこまでは誰でもわかるのだが、Z50Aの部品はほぼ残されていない。ハンドルはジャズ純正をカットしてあり、ハンドルホルダーノブはZ50J用。前後ホイールは製作当初Z50R純正リムとAB27モンキーのハブと組み合わされていたが、現在では乗りもの館製モンキー・ダビッドソン用のキャストホイールに変更にされている。ライトケースはSL90純正でミラーはモトコンポ(その後、CB72のミラーに変更)など、使用された部品はホンダ純正をとことん流用している点が特徴だ。
エンジンのチューニングにもホンダ純正部品が流用されている。製作当時はCD90純正シリンダーをボーリングしてφ48mmピストンを組み込んでボアアップされた仕様であったが最終的には、ヨシムラ鋳造シリンダーの内部スリーブ厚を変更してボア径はφ50mm、97㏄仕様となっている。。クランクケースはMD70用で内部にACDフライホイールを仕込んで、ドリーム50用CDIが使えるようにしてある。そのクランクケース上部にはギアポジションセンサーが追加されているところも興味深い。
ベースになったZ50Aの電装系は当然6ボルト仕様なのだが、この車両にはドリーム50用ハーネスを使って12ボルト化してある。さらにドリーム50用CDIを装備してあり、製作当初はドリーム50用タコメーターが使われていた。現在はスタックのタコメーターにされていて、レトロさを強調してある。またハンドルにつくライトスイッチはリトルホンダPC50用でウインカースイッチはNC50用、レバーブラケットはピープル用でケーブル類はモンキーR用など、ここでも純正流用の嵐なのだ。
シルバーの個体は赤いカスタム車をみたお客さんからオーダーが入って製作された車両と同時期に製作されたもので、やはりコスモ2輪企画がカスタムしたもの。こちらの詳細は不明な点が多いながらも、赤い個体同様に純正部品を使って今の姿にされているという。ベースになったのはZ50MでATC70用燃料タンクとお客さんのオーダー時に試作用として製作された特注シートが組み合わされている。現在のオーナーである銘菓めいかさんによれば、店舗が区画整理により移転する際に、コスモ2輪企画(この時期には店名はclub165)に当時ストックされていたあり合わせの部品で急遽作られたそうだ。
エンジンの細かな仕様などは不明ながら、こちらにもドリーム50用タコメーターが装備されていることから、赤い個体同様にハーネスごとドリーム50用を使った12ボルト仕様だと推測できる。赤い個体には珍しいマキシム製マフラーが装着されていたが、シルバーのこちらにはメッキのホンダ純正らしきマフラーが装着されている。また赤い個体にはアルミ製ゼッケンプレートが取り付けてあるが、シルバーのこちらは樹脂製のドリーム50R用にされていたりと相違点が多い。いずれもドリーム50用CDIとハーネスを使うためシート下にサブフレームとバッテリートレーを製作して組み込まれているという。なかなかお目にかかれないレアな車両ながら、どちらも純正部品を徹底的に流用してあるからモンキーカスタムを進める上で参考になる点が多いことだろう。