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アップライトなポジションと乗り心地の良い足回りが快適な走行を実現
年を追うごとに大型アドベンチャーツアラーが高性能化しています。そこには必ず進化した電子制御システムが導入されていて、結果、あらゆる走行状況に最適な走行性が発揮されるようになりました。しかしそのぶん高価になってしまったのも事実です。400Xもアドベンチャーツアラーのカテゴリーに入るモデルですが、ライディングモードなどの電子制御システムは搭載していません。現代のバイクとしてはアナログ要素が強い希少なモデルです。ですが実際のツーリングで困ることはそれほどありません。旅を楽しめるだけの性能は満たしています。それでいて価格はアフリカツインの半額ほどです。
しかし国内市場ではここ10年ほど400ccクラス自体への関心が低く、400Xの需要もいまひとつパッとしませんでした。おそらく中型免許所持者は車検の必要がない250ccクラスを重用し、大型免許所持者の大半はより大型のバイクを好む傾向があるため、結果的に400というミドルレンジは中途半端な位置づけとなってしまっているのだと思います。ちょっと残念です。というのも、実際にツーリングに出てみればわかるのですが、日本のタイトな道や、最高速が120km/hまでに制限されている高速道路を走るのに最適な性能を持ち合わせているのが400ccクラスなのです。だからロングツーリング派のライダーにはとくに、ミドルアドベンチャーツアラー400Xは選択肢になると思います。
399cc水冷DOHC4バルブ直列2気筒エンジンを搭載した3機種のスポーツモデルをホンダが登場させたのは2013年のことでした。スーパースポーツのCBR400R、ネイキッドスポーツのCB400SF、そしてアドベンチャーツアラーの400Xと異なるジャンルをラインナップすることで選択肢を広げてくれました。さらに、電子制御システムの導入を抑えて、価格帯を60万円台からとしていたこともユーザーには朗報でした。残念ながらCB400SFはこのモデルのみでラインナップから外れてしまいましたが、CBR400Rと400Xは2016年、2018年、2019年に熟成を図った変更が行われ進化してきました。そして2021年12月、CBR400Rとともに400Xもモデルチェンジが行われて新型となったのです。
ボディスタイリングはまさしくアドベンチャーツアラーそのものです。ですが大型アドベンチャーツアラーのような威圧感はありません。手頃なサイズ感のボディは親近感をもたらしてくれます。これはとても大切なことだと思います。大型アドベンチャーツアラーは機能、性能ともに高く、だからこそランドスポーツバイクとしての魅力があるのは事実です。しかし体格が決して大きいとはいえない日本人ライダーが扱うにはハードルが高いと思っていますし、思い切り走れるフィールドもあまりありません。もちろんテクニックのあるライダーなら乗りこなしてしまうのでしょうけれど、ボクを含めて一般のライダーにはやはり手ごわいんじゃないかとの印象があります。その点400Xは「これならダート路にも入っていけそうだ」との期待感を抱かせてくれます。
足つきチェック(ライダー身長178cm/ 体重77kg)
最新型もそんな基本姿勢は変わりありません。さらに今回のモデルチェンジでは、フロントフォークにショーワ製SFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)を採用。Φ41mmのこの倒立フォークが優れた路面追従性を実現し走行性を高めてくれたほか、乗り心地の快適性も向上させているとのことです。ブレーキも従来のシングルからダブルディスクへとグレードアップさせ、より安定した制動能力を実現させています。
このように足回りが強化された新型400Xですが、ポジションをとったときのアップライトでゆとりある乗車感はなんら変わっていません。800mmに抑えられたシート高のおかげで足つき性も良いですし、前後サスペンションの作動性も良好なので、跨った瞬間ホッとさせられる安心感に包まれます。車重は199kgと若干増加しましたが、数値から想像するより取り回し性はいいと感じました。
スタートすると、さすがに400だと感じる力強さを発揮してくれます。外国製のライバルモデルが単気筒エンジンなのに対して、この400Xは直列2気筒エンジンを搭載しているので、スムーズなパワーフィーリングがひとつの特徴です。しかも、街乗りやツーリングで多用する低中回転でトルクフルなエンジン特性なので、非常に走りやすく感じました。そして高回転の伸びでも直列2気筒エンジンに分があり、ムリなく高回転域へと引っ張っていけるのでスポーティだし、高速走行性にも優れています。気になる振動もほとんどないので高速クルージングも得意だろうとおもいます。
高速走行を快適にしているもうひとつの要因が、大きく立ち上がっているウインドスクリーンの装備です。大きさや形状から腕周りには風を受けますが、体の前面に当たる風圧はしっかり抑制してくれるため腕や首の負担が少なく、結果的に疲労を蓄積させにくいのだと感じました。快適性ということでいえば、シートの座り心地もいいですし、ポジションにもムリがないことも奏功しています。倒立フォークとなって硬くなったのではないかとちょっと懸念していた乗り心地も悪化していませんでした。サスペンションの作動性は相変わらずソフトで、高荷重が掛かったときにはしっかり踏ん張ってくれる特性なので、街中や田舎道をのんびり走るときはクッション性のいい乗り心地を提供してくれ、ワインディングを駆けるようなときには減衰がしっかり掛かって高いスポーツ性を発揮してくれます。今回はダート走行をしなかったのですが、おそらくフラットダートなら不安定な挙動を示すことなく走破できると思います。
ハンドリングに関しては、19インチフロントタイヤが装着されていることで、優れた直進安定性を発揮してくれる一方で、素直でニュートラルなバンク操作を可能にしています。コーナリング安定性も高く、満足感を与えてくれるワインディング性を発揮してくれます。ブレーキ性能が強化され、フロントフォーク性能が上がったことで、ワインディングにおけるスポーツ性は確実に高められています。ポテンシャルが上がったことでツーリングでの安全性は高まりました。そういう意味でも良い方向に進化していたと感じました。
林道ツーリングをメインにするのなら、250ccクラスのオフロードバイクに分があるのは事実です。しかし高速走行を含めたツーリングがあくまでも主体に使うのであれば、400Xは最適なモデルになってくれます。しかもちょっとしたダートなら不安なく走れる性能を持っているので、旅の行動範囲をグッと広げてくれるはずです。
主要諸元
主要諸元
車名・型式:ホンダ・8BL-NC56 全長(mm):2,140 全幅(mm):830 全高(mm):1,380 軸距(mm):1,435 最低地上高(mm)★:150 シート高(mm)★:800 車両重量(kg):199 乗車定員(人):2 燃料消費率*1(km/L): 国土交通省届出値:定地燃費値*2(km/h)41.0(60)〈2名乗車時〉 WMTCモード値★ (クラス)*327.9(クラス 3-2)〈1名乗車時〉 最小回転半径(m):2.5 エンジン型式:NC56E エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列2気筒 総排気量(cm3):399 内径×行程(mm):67.0×56.6 圧縮比★:11.0 最高出力(kW[PS]/rpm):34[46]/9,000 最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):38[3.9]/7,500 燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉 始動方式★:セルフ式 点火装置形式★:フルトランジスタ式バッテリー点火 潤滑方式★:圧送飛沫併用式 燃料タンク容量(L):17 クラッチ形式★:湿式多板コイルスプリング式 変速機形式:常時噛合式6段リターン 変速比 1速3.285 2速2.105 3速1.600 4速1.300 5速1.150 6速1.043 減速比(1次★ /2次):2.029/3.000 キャスター角(度)★27゜30′ トレール量(mm)★:108 タイヤ: 前110/80R19M/C 59H 後160/60R17M/C 69H ブレーキ形式 前油圧式ダブルディスク 後油圧式ディスク 懸架方式 前テレスコピック式 後スイングアーム式(プロリンク) フレーム形式:ダイヤモンド
- 道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
- 製造事業者/本田技研工業株式会社
- *1燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
- *2定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
- *3WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。