知れば知るほど欲しくなる、名車CB1000Super Four&CB1300SuperFour。その歴史を振り返る|「BIG 1」誕生から30周年

ホンダを代表する大型ネイキッドBIG 1ことCB1300スーパーフォアが誕生30周年を迎えた。30年に渡って愛され続けるBIG 1の誕生からこれまでを振り返る。

1980年代の終盤、レーサーレプリカブームがピークを迎えていた1989年に「プロジェクトBIG 1」がスタートした。この1989年は、カワサキからはゼファー、スズキからバンディット、ホンダからもCB-1が発売され、ミドルクラスでのネイキッドがブームになりつつあった頃だ。

左からデザイナーの岸敏秋氏、開発担当者(LPL)の原国隆氏、完成車まとめの工藤哲也氏。

当時、ホンダのデザイナーであった岸敏秋氏が考えたデザインスタディがプロジェクトBIG 1のスタートとなった。CB-1の車体にCB1100Rの燃料タンクを載せたラフスケッチは、岸氏がこんなバイクを世に出したいという理想のスタイルだった。当時のデザイン現場の責任者だった中野耕二氏がそれに共感し、プロジェクトは動き出す。まだ非公式だったプロジェクトにもかかわらず、デザイン室の目立つ場所でクレイモデルの検討を始めたために多くの開発者から注目され、社内の賛同者が増えていった。岸氏はCBR1000Fのエンジンの直立したシリンダーに造形の美しさを感じて、これをネイキッドモデルに搭載することを考えた。それまでの国産メーカーは750cc以上の排気量を持つ車両は、販売を自主規制していた時代。1988年に排気量の規制が撤廃されたこともあり、輸入車や逆輸入車をライバルとするモデルとして造形され、前後に18インチホイールを履くクレイモデルはホイールベースが1520mmという、当時の国産車としては規格外の大きさであった。新たなホンダのビッグバイクとしてふさわしい、堂々としたフォルムであったが、社内提案では欧米での販売が期待できないという理由で却下されてしまうのであった。

初期のアイデアスケッチ。ここからBIG 1と共にCB400SFが生み出されていくこととなる。
CB1を大型化したようなスケッチなど、さまざまなパターンが検討されていた。

CB-1をベースにしたスケッチは、後にCB400SFの誕生へとつながり、すでに開発が進められていたが、却下されてしまった大型のクレイモデルは廃棄を命じられてしまった。しかし、この大型モデルのヒットに確信を持っていた岸氏は、デザイン室の小部屋に隠して手を入れ続けていた。転機が訪れたのは1991年の東京モーターショー。CB400SFのイメージ訴求のために「プロジェクトBIG 1」としてショーモデルを展示したところ、来場者から大きな反響を得て、本格的に開発が進められることになった。

1992年11月、ホンダCB1000SuperFourが発売された。翌年の1993年には4000台を販売する大ヒットとなった。同時期にカワサキ・ゼファー1100、ヤマハXJR1200、スズキGSF1200などか次々に発売となり、さらに1995年からは免許制度の改変によって教習所で大型二輪免許が取得できるようになったこともあり、大型ネイキッドがブームとなった。そこでBIG 1をより魅力的なバイクに進化させるため、第2世代にモデルチェンジされたBIG 1は1300ccに排気量をアップしてCB1300SuperFourとなった。エンジンはX4をベースにして出力を100psに向上。前後のタイヤは17インチに変更し、シート高を10mmダウンさせている。リヤサスペンションにはダブルプロリンクを採用し、大きくインパクトのあった初代モデルをより乗りやすく変更した2代目モデルは、1998年に発売されるとともに大ヒットとなり、初年度の販売計画を上回る4600台の売り上げを記録した。

威風堂々とした正統派スタイルのネイキッドバイクとして誕生。これまでのホンダのイメージとは異なる迫力を持つ。

2003年には再びモデルチェンジが行われ、第3世代に進化する。2代目モデルではブレーキやサスペンションの強化によって車両重量が初代モデルから13kgも増加して260kgとなっていたため、これを大幅に減量することと、思うままに乗りこなせる運動性能の見直しを図って開発が行われた。エンジン単体で約8kg、車体を含めると19kgもの軽量化に成功し、グラマラスなボディからシャープなフォルムとなった。全長に変更はないが、ホイールベースは30mm短縮している。また、シリーズ初のインジェクションを採用することで、操作性や快適性を大幅に向上させている。

ホイールを17インチに変更して乗りやすさを向上させた2代目。シリーズ中最大のヒットとなった。

3代目モデルは最初の2年間で5000台以上を売り上げ、2年後の2005年には早くもマイナーチェンジが行われた。安全性向上のためにABS搭載モデルを追加し、PGM-FIの設定を変更することで低速時のレスポンスを向上。エアクリーナーボックスとサイドカバーの形状を変更することで左右で10mmずつ切り詰め、肩幅のスタンスで足がつけるように変更。さらにシートの形状も変更して足つき性が向上している。また、同時にハーフカウルを装備したCB1300SuperBOL D’ORを追加した。この2005年は高速道路の二人乗りが解禁された年で、高速道路で長距離を快適に走行するためのカウリングと、タンデム走行の際の加減速時にパッセンジャーとライダーのヘルメットが衝突しないように、スロットルの開け初めに滑らかさを与えるための設定変更が行われた。

更なる軽量化とインジェクション化で扱いやすさが向上した3代目。20年に渡り現在も作り続けられている。
ハーフカウルを装着したBOL D’OLを追加。長距離を走るツーリングライダーにも歓迎された。

その後もこの3代目は幾度となく改良を繰り返しながら、現在まで約20年に渡って生産が続けられるロングライフモデルとなっている。主な変更は以下の通りだ。

○2008年/排出ガス規制に伴い、吸気レイアウト変更とキャタライザーの追加による排気レイアウトの変更。国内馬力規制撤廃後初の100psオーバーとなる、101psへのエンジン出力の向上。

○2010年/コンバインドABSの採用。フレーム剛性とサスペンションセッティングの見直し。シート高10mmダウン。専用のダウンマフラーを装備し、パニアケースを標準装備したスーパーツーリングを追加。

○2014年/6速ミッション採用。吸排気セッティング変更。ホイールデザイン変更。

○2018年/エンジン出力を110psに向上。アシストスリッパークラッチ採用。前後サスペンションセッティング変更。フロントブレーキ改良、ETC車載器、グリップヒーターを標準装備。

○2019年/オーリンズ社製前後サスペンション、ブレンボ社製ラジアルマウント式モノブロック対向4ポッドキャリパー(フロント)を採用したSP仕様を追加。ETC車載器をETC2.0対応機種に変更。

2022年12月5日に発売となった30周年記念モデル。オーリンズ製サスペンションやブレンボ製ブレーキを装着する。

このほかにも細部の仕様やカラーリング変更でほぼ毎年改良を繰り返している。ものづくりの魂が受け継がれたCBシリーズのフラッグシップであるBIG 1は、これからも王道のネイキッドバイクとして進化を続けるだろう。

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