鉄フレームと空冷エンジン、ロイヤルアロイ GP125は今なお新車で買えるクラシカル系スクーターは希少な存在です。

ロイヤル・アロイというブランドは、日本ではあまり馴染みがない。輸入・販売しているモータリストによると、1960-70年代のクラシック・スクーターの作りとデザインを現代によみがえらせることをテーマに、活動するイギリスメーカー。古き良き時代の雰囲気を保ちつつ、現代にアジャストさせたリアル・鉄スクーター・GP125を紹介する。

REPORT●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)


ロイヤルアロイ・GP125 …… 57万2000円(消費税込み)

往年の鉄スクーターを現代に甦らせるメーカー、RoyalAlloy(ロイヤル・アロイ)

1940年代に生まれた欧州のスクーターは、モノコック構造のフルスチール・ボディを採用したモデルが主流だった。その後、時代が進むとスチール製のフレームに樹脂製の外装パネルを装着したモデルが生産されるようになり、欧州ブランドのスクーターも構造を変化させてきた。
すべてのボディパーツがスチール製のスクーターがなくなりつつある現代において、1960〜70年代に生産されていたフルスチール製スクーターの作りやデザインを甦らせることをコンセプトとして活動するイギリスメーカーがRoyalAlloy(ロイヤル・アロイ)だ。
そのブランドの車両を日本で販売するのは、イタリア発祥の歴史あるスクーターメーカー・ランブレッタの日本正規輸入元であるモータリスト合同会社。現在取り扱っているランブレッタは、古き良き時代のイメージを大切にしつつ、現代の製造手法によって生まれた魅力的なヨーロピアン・スクーターをラインアップしている。それと並行して当時の素材感そのままのリアル・クラシックと呼べるロイヤル・アロイの車両を取り扱うというのは興味深いことだ。
今回はラインナップの中から空冷エンジンを搭載したGP125に試乗してみた。

GP125の車格は意外と大柄。着座位置は意外と高いが、さらに高いと感じたのがフットボードだ。ヒザの曲がりが強く、低いハンドル位置と相まって独特のポジションとなる。思わず「お〜、これが古き良きスチール製スクーターに乗るときの姿勢なのか」とちょっと感慨にふけってみたり。
シート高が高いだけじゃなくボディ幅もあるため足つき性はあまり良くない。しかし重心が集まっているせいかバランスを取るのはそれほど苦にならない。

テスター身長:165cm/体重70kg
片足であれば足裏の半分くらいを接地させられるが、両足をつこうとするとつま先立ちになってしまう。

まがい物ではない、本物のクラシック・スクーター

大柄で伸びやかなラインを描くメタルボディを持つ車体にまたがる。着座位置が高いため目線もやや高め。フットボードが高いのに対してハンドルが低いため、グリップとヒザが近い独特のポジションとなる。
セルボタンを押すと4ストロークエンジンは素直に目覚める。排気音はジェントルだ。アクセルを開けていくとスルスルと動き始める。やや重めの車体に最高出力7.2kw(約9.8ps)の空冷エンジンを組み合わせているため、加速に唐突感はなくなめらかに加速していく。

金属製のモノコックボディということもあり高い剛性感があり、速度域に関わらず安定した走行感が味わえる。ギャップ通過時にサスペンションが跳ねすぎることもなく、接地感も適度に伝わってくる。
一度アクセルを戻してから再加速しようとするとわずかに遅れる感じもあるが、そもそもスプリンターというキャラクターではないので必要十分といえる。
もし動力性能が気になるようであれば、より高いパフォーマンスを発揮する水冷エンジンを搭載したGP125S(最高出力10.5kw)を選ぶのもアリだろう。

コーナー入口でブレーキをかけると車体が軽く沈み速度が落ちる。ルックスはクラシカルだが中身は現在の技術で作られているため、前後ディスクブレーキの効きは現行のほかのスクーターと変わらない。ちなみに装備されているブレーキはコンバインド(前後連動)式だ。
ホイールベースが長めということもあって、ハンドリングは優雅なフィーリング。荷重移動に対して従順な動きでスムーズにバンキングしていく。車重の影響もあってかコーナーリング中のスタビリティも良好で、リラックス気分のまま走り続けられる。そしてコーナーの出口でアクセルを開けると、なめらかなトルクフィールに押し出されるように立ち上がっていく。
終始安定した挙動であることが印象的だ。ルックスに違わぬジェントルな走りに思わずニヤけてしまった。

不安なく乗れる往年のスタイルそのままの鉄スクーター

現代のスクーターにはないスタイルやディテールに魅せられ、1960〜70年代のクラシック・スクーターに乗りたいと考える人もいるだろう。しかし実際に当時のスクーターを購入して乗るとなると、車両のコストをはじめエンジンやブレーキの信頼性、スペアパーツの入手法、修理してくれるショップなど多くのハードルがある。かといって当時のスクーターの雰囲気を持つ現行モデルでは満足できない。そうなったときにロイヤル・アロイ製のGP125の存在がクローズアップされる。
フルスチールの車体は、当時のスクーターを3Dスキャンして美しいフェンダーラインやレッグシールド、サイドカバーまで見事に再現。そこに組み合わせられるパワーユニットや電装系は信頼性が高い現代のモノ。パーツの入手も問題ないとくればまさに“死角ナシ”。単なるコピーモデルとは一線を画す存在なのだ。
リアル・クラシック・スクーターと呼べるGP125。
国産スクーターなどでは味わえない、独自のスクーターライフを送りたいと考える人にぜひ勧めたい1台だ。

毎日の足にも問題なく使えるクラシック・スクーターだ。

ディテール解説

ヘッドライトはLEDを採用。夜間走行も問題ない明るさだ。各種エンブレムがクラシカル感を高めてくれる。
ビルトインされているのは液晶メーター。シンプルな表示が車両のイメージにあっている。左側に燃料計、右側に電圧計を備えている。
ハンドルは着座位置に対して低めの位置にセットされ、バーエンドがやや下がっている。スイッチボックスのデザインなど、新旧が融合したような眺めだ。
ボトムリンク式のフロントサスペンションを採用。細いスポークデザインのキャストホイールもクラシカルなイメージ。
ブレーキディスクは今風のウェーブタイプ。制動力は十分でタッチも良い。前後連動ブレーキを備えている。
フロントトランクはガバっと開くが、奥行きは浅め。内部にUSBポートがあるのでスマホの充電も可能。赤いボタンはトリップメーターのリセットなどに使う。
エンジンは空冷4サイクル単気筒 2バルブ SOHC。リヤブレーキにはスタンダードな円形のディスクローターを装備。
ガソリン供給はインジェクション。安定したパフォーマンスを発揮する。排気音はジェントルで、排ガス規制もクリアしている。
シートは幅広で前後とも座り心地が良い。スクーターで前後分割式というのも珍しい。
1960〜70年代のスクーターのシート下にメットインスペースはなくガソリンタンクが備えられている。GP125もそれを踏襲。キーロック式の給油口が備えられている。
フロント/リヤウインカーやテールランプには視認性が高く耐久性に優れたLEDを採用。メッキのリヤキャリアを標準装備している。
タンデムステップはワンタッチで飛び出す可倒式。使わないときは収納しておけるので見た目もスッキリ。
レトロ感ある樽型のグリップを装備。ヘッドライトのハイ/ロー切り替え、ホーン、ウインカーなどがセットされたハンドルスイッチの造形は現代風だ。
前後ともディスクブレーキなので左右に四角いリザーバータンクが備わる。ハザードが装備されているのはありがたい。

SPECIFICATION

エンジンタイプ:空冷4サイクル単気筒 2V SOHC
排気量:124.6cc
ボア×ストローク:52.4/57.8
圧縮比:10.5:1
最大出力:7.2kw/7500rpm
最大トルク:9.2Nm/7000rpm
燃料系:Delphi EFI
ボディ:鋼管製スペースフレーム&フルメタル(スチール)製ボディ
フロントサスペンション:ダブルショックアブソーバー、プリロードアジャスタブル、アンチダイブ機能付き
リヤサスペンション:シングルショックアブソーバー、プリロードアジャスタブル、コイルスプリング
ブレーキシステム:コンバインド(CBS)式、ステンレス・ブレードホース
フロント/リアブレーキ:220 mm ディスク
フロントタイヤ:110/70-12(チューブレス)
リヤタイヤ:120/70-12(チューブレス)
ヘッドランプ:LED
リアランプ:LED
全長x全幅x全高:1845mm x 670mm x 1115mm
最低地上高:330mm
車両重量:130kg
最大積載重量:280kg
燃料タンク容量:10.5ℓ
軸距(ホイールベース):1390mm
排出ガス規制:Euro5適合
ボディカラー
<単色合計17色>
フレイム・レッド、ミッドナイト・グレー、オーシャン・ブルー、マット・ブロンズ、シャー ウッド・グリーン(マット/シャイニー)、パール・ホワイト、アイボリー・ホワイト、マット・ブラック、ピューター・グレー、 メタル・ブルー、ジェット・ブラック、マット・シルバー、サンダー・グレー、カリビアン・ブルー、モダン・オレンジ、エクストリーム・グレー。
<2トーン合計5色>
ウルトラ・ブルー&アイボリー、オデッセイ・レッド&アイボリー、ミント・グリーン&アイボリー、レモ ン・イエロー&アイボリー、フレイム・レッド&アイボリー
希望小売価格:¥572,000(税込)

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著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…