【FELO・FW-06電動バイク新車試乗】スロットル全開で90〜100km /h巡航。「S」ボタンで最高速120km /h !!

2019年のEICMA(イタリアのモーターサイクルショー)で発表されると同時に、高い注目度を集めたスポーツ・エレクトリック・モーターサイクル、FELO社のFW-06。15万km以上のテスト走行を繰り返して信頼性を高め、ついに日本にデビューした。ほかにはないシャープなスタイリングと、時代の一歩先をいく走行フィーリングをレポート!

REPORT●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)
PHOTO●山田 俊輔(YAMADA Shunsuke)

FW-06 … 990,000円(消費税込み)

もうちょっと先の話かと思っていた高性能・電動バイクの登場

クルマやバイクのパワーユニットとして長い歴史を持つガソリンエンジン。しかしその不動だった地位が、昨今さまざまな理由から揺らいできている。現在、技術の進歩が著しく、高い注目を集めているのがEV(エレクトリック・ビークル)、つまりバッテリーとモーターで走るクルマ&バイクだ。とはいっても現時点でエンジンと同等のトータルバランス(パワーや航続距離、重量、充電時間など)を達成したEVはまだ生まれていない。エンジンとモーターの良い所取りのハイブリッドもあるが、構造が複雑で大きくなるためバイクには導入しにくい。よりクリーンなエンジンの開発なども進んでいるので、バイク界ではもう少しエンジンが主流の時代は続きそうだし、個人的にもそう考えていた。
……しかし今回エレクトリック・バイクのFW-06に試乗したボクの頭の中は、かなり混乱している。もう少し先だと思っていた未来が、実はすでに来ているのではないか。日進月歩と言われるEV界の現実を垣間見た思いだ。

軽二輪規格ではあるが、コンパクトなので車格は原付二種くらいの感覚。スリムさも手伝って、ポジションはコンパクトで収まりが良い。ヒザの曲がりも余裕がある。車重は121kgと、こちらも125ccから+α並み。ハンドルを押すとフリクションロスが少ない感じで動き出す。重心が集中しているため押し歩きも安定して楽に行える。タンデムシートとステップはあるが、タンデムシート自体が小さいのでエマージェンシー用という印象。

テスター身長:165cm/体重70kg
着座位置はやや高め。両足だと足裏の1/3ほどが接地する感じだが、片足だと十分に支えられる程度に足がつく。どちらにせよ車重が軽いので不安はない。

ゼロ発進から途切れることがない異次元の加速を体感

メインスイッチをオンにして、一般的なバイクで言えばセルボタンを押すと発進準備が完了する。この間、当然無音だ。あとはアクセルを開けるだけで走り始める。
モーターは通電した瞬間、100%のトルクを発揮するためラフなアクセル操作は厳禁。ていねいに…と頭で理解しているのだが、最初は少々ぎぎこちない操作になってしまう。アイドリング音などもないので最初は感覚がつかみにくいが、すぐに慣れるレベルだ。
そうなると、今度は大きくアクセルを開けることが楽しくなってくる。加速感は、マニュアルミッション車はもちろんスクーターともまったく異なる。アクセルを開けた瞬間にリヤタイヤが駆動しトラクションがかかって車体が進むのだが、その間のタイムラグがほとんど無いのだ。そしてアクセルを開け続けるとスピードも伸び続ける。ギヤを変えることなく長く続く加速フィーリングは異次元で、新鮮そのもの。排気音がないことも含め、純粋に“加速感だけを楽しめる”という感じだ。

コーナーリングも今までにないフィーリング。アプローチではアクセルを閉じてエンジンブレーキの要領で減速。ブレーキレバーを握ってねらったスピードまで減速する。タッチは一般的なもので十分な容量があるようだ。
少し気になったのはサスペンションの動き。前後ともに減衰力が弱めでスプリング感を強く感じてしまった。
試乗日は朝までの雨の影響で路面が濡れていたため、思い切りよくコーナーに飛び込めなかったが、想像以上に軽快な動きをする。荷重移動に対しての反応が敏感で挙動がクイックだ。小径の14インチホイールということもあるのだろう、軽い動きは125クラスのスポーツバイクのよう。
コーナーの立ち上がりでアクセルを開けるとグィーーーンと独特の加速感で伸びるように立ち上がっていく。
面白いのは、左のハンドルスイッチボックスのホーンの横にある「Sボタン」だ。押している間、さらにパワフルに加速して伸びていく、まるでゲームのターボボタンのような機能があるのだ。それをコーナーの出口で使うと脱出速度がさらに上がってオモシロイ。挙動の軽さとも相まって、ルックスから感じる通りのスポーティな走りを体感させてくれる。
モーターによる低速域からの途切れない加速感は、今までに体験したことがないもの。病みつきになりそうだ。

FW-06は軽二輪登録。つまり高速道路を走ることができる。そこで実際に高速道路のランプを駆け上がり、本線を走ってみた。
電動バイクには何度も試乗しているが、高速道路を走るのは初めて。アクセルを全開にするとメーター読みで90〜100km/hの間を行ったり来たりといった感じ。走行車線の流れに乗って走れるイメージだ。
そこから前車を追い越すときには「Sボタン」を使う。押しながら追い越し車線に出るとメーター読みで120km/h近くまで加速する。数台抜いて走行車線に戻りボタンから指を離し巡航に戻る。Sボタンを押しっぱなしだとバッテリーへの負担が大きくなるので、最小限に留めておくほうが航続距離への影響は少ない。
高速道路は法定速度内であれば問題なく走れる。しかしパワーの余裕はそれほど無いので、車の流れに乗って短〜中距離の移動に使うというのが適しているだろう。
とはいえ、まだまだ発展途上の乗り物であることは間違いない。今後のパフォーマンスアップにも期待したい。

最新エレクトリック・バイクに乗ってみると、新しい可能性が見えてくる!

FW-06のスペック上での走行可能距離は140kmとなっている。そして満充電まで5〜6時間となると、ツーリングなどエンジン車と同じような使い方はできない。しかし実際に乗って、その特性を知れば自ずと適した使い方が想像できるだろう。
電動バイクにはガソリン車とは異なる、その特性を活かした独自の使い方がある。発想を変えて、今までのバイクの使い方にとらわれない新しい使用方法を見出すのも楽しいことなのではないだろうか。
今までにない新しいモビリティに試乗して、バイクの未来が大きく広がっていることを実感した。

ディテール解説

低い位置にLEDヘッドライトがセットされたフェイスデザインはスポーティなもの。エンブレムがキュートだ。
液晶メーターの表示はシンプル。表示はクッキリしていて、必要な情報はすぐに目に飛び込んでくる。
ガンメタリックで統一されたコックピットはクールなイメージ。ハンドル幅は広くなく、コンパクトな印象。
ホーンの横にあるのがウワサのSボタン。これを押している間、パワーアップしていく。まるでゲームのような感覚なのだ。
フロントブレーキはシンプルなシングルディスク。タッチは一般的で容量も十分なイメージだ。
細身のスポークデザインを採用している14インチホイール。正立フォークはスプリング感が強く、容量もギリギリな感じ。ここが充実すると乗り味は大幅に変わりそうだ。
スマートキーを採用しているため、ダイヤルがセンターに配置されている。左の小物入れの中にはUSBの給電ポートがある。
スマートキーと一緒にエマージェンシー用の物理キーも付属。
右側のリッドを開けると充電ポートが現れる。
充電には専用の充電器が必要。100Vのコンセントが使えるが、意外と大柄で重いので持ち運びには適していない。一般的には自宅で使用することになるだろう。
シートの座面はクッション性が高く疲れにくい。タンデムシートはビックリするほど小さく厚みも薄いので、エマージェンシー用と考えておくほうが良い。
内部に多くの機器が詰まっていることから、シート下の小物入れはかなり小さい。
跳ね上がったテールカウルにLEDテールランプがセットされる。シャープなデザインがカッコイイ。
赤いスプリングのリヤショックも、個人的にはもう少し減衰感が欲しいと感じた。アルミ製のタンデムステップバーを装備している。
車体側にモーターを備え、後輪にはベルトでパワーを伝える。バネ下が重くないことも軽快なハンドリングの理由だといえよう。
ディッシュホイールカバーが片持ちスイングアームを強調。サイレンサーがないリヤビューが新鮮だ。
前後ブレーキはハンドルにあるため、ステップまわりはシンプル。個人的にはリヤブレーキは右足に欲しい。そうするとよりスムーズに移行できそうだ。

SPECIFICATION

モデル名称:FW-06
全長×全幅×全高(筐体):1832(1700)×711(570)×1087(1040)mm
定格出力:5,000W(5kw) *1
最高出力:10,000W(10kw)
車両重量(バッテリー込み):121kg(バッテリーの取外し不可)
シート高:784mm
ホイールベース:1236mm
バッテリー容量:96V 58Ah Lithium Square battery
最高速度:110km/h
充電時間:5-6h
走行可能距離:140km(NEDC) *2
タイヤサイズ:F・110/80-14/R・140/70-14
ブレーキ:F・Φ230mmディスク/R・Φ190mmディスク ABS
バッテリー保証:5年or50,000km
車両保証:1年間、走行距離無制限
*1 公道を走行するには、普通二輪免許(AT限定普通二輪免許)が必要。
*2 NEDC:New European Driving Cycleの略。国際基準(WLTP)に基づく燃費・電費測定の義務化により、電動二輪車等の走行可能距離を提示するために策定された各車共通の指標。

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著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…