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今までの電動キックボードとの違い
従来、電動キックボードは、原動機付自転車、いわゆる原付バイクと同じ扱いだった。モーターの出力などにより、50ccバイクに相当する原付一種と、125ccまでのバイクと同じ原付二種に該当するものがある。
例えば、原付一種と同じ扱いのモデルの場合は、
・最高速度30km/h以下
・走行できるのは車道のみ
・ヘルメット着用は義務
・普通自動車免許など、原付バイクを運転できる運転免許の取得
・ナンバープレート装着や自賠責保険の加入
といった要件が必要となる。
一方、新区分である特定小型原付に該当する電動キックボードの場合は、
・最高速度20km/h
・走行できるのは車道、自転車道、自転車専用通行帯
・ヘルメットは努力義務
・運転できるのは16歳以上で免許は不用
・ナンバープレート装着や自賠責保険の加入
といった感じになる。つまり、最高速度を20km/hに制限する一方で、運転免許を不用にしたり、車道だけでなく、自転車が走ることができる道路も走行可にするなど、ある程度規制を緩和しているのだ。
歩道を走れる場合とは?
また、やはり一定の条件を満たせば、歩道や路側帯を走行することもできる(自転車走行可の道路に限る)。これは、モーターなどの制御により、最高速度を6km/h以下に制限することなどで、同じく新規導入される「特例特定小型原動機付自転車(以下、特例特定小型原付)」にクラスチェンジすることで可能となる。
ただし、この場合、特定小型原付や特例特定小型原付に装備する必要がある「最高速度表示灯」の点灯方法を変えることも必要だ。特定小型原付で走る20km/h以下モードの時は最高速度表示灯を「常時点灯」、特例特定小型原付で走る6km/h以下モードでは、最高速度表示灯を「点滅」にしなければならない。
また、走行モードの変更は、かならず停止状態(0km/h)で行う必要もあり、走行中の切り替えは違反となる。
特定小型原付の定義
以上が、特定小型原付の概要だが、速度制限などを守ったからといって、どんな電動キックボードでも特定小型原付になるわけではない。国土交通省が定めた保安基準などを満たす必要があるのだ。
主な要件は以下の通り。
【車体関連】
・車体の長さ190cm以下、幅60cm以下
・定格出力600W以下の電動機(モーターなど)を使うこと
・AT機構がとられていること
【装着が必要な保安部品】
・前照灯
・方向指示器
・尾灯・制動灯
・2系統以上のブレーキ
・最高速度表示灯
・警音器
・後部反射器
ちなみに、上記の要件を満たせば、電動キックボードだけでなく、例えば、シートなどがあり、跨がって走る電動バイクなどのタイプも特定小型原付に適合する。今後は、そういったモデルも、さまざまなメーカーからリリースされるかもしれない。
さらに、公道を走ることのできる車両は、特定小型原付の性能等確認制度において、性能を認められたモデルに限られる。認定機関であるJATAが試験を実施し、合格した車両にのみ「性能等確認済みシール」が貼られる。もし、これから特定小型原付の電動キックボードを購入する場合は、かならずこのシールの有無を確認することも必須だ。
ほかにも、特定小型原付の電動キックボードを公道で走らせるには、これも先で少し触れたが、自分が居住する自治体からナンバープレートを発行してもらうことや、自賠責保険への加入も必要だ。自賠責保険の場合は、クルマのファミリー特約なども活用すれば、かなりリーズナブルになるので調べて見て欲しい。
また、ヘルメットは努力義務、つまり任意だが、安全を考えると特定小型原付でも着用することが推奨されている。新しく電動キックボードを購入する際は、ぜひ一緒にヘルメットも揃えることがおすすめだ。
特定小型原付のタイプはさまざま
ちなみに、最近は、次々と、特定小型原付に対応する新型の電動キックボードが発表されているが、メーカーによっては、最高速度6km/h以下の特例特定小型原付へのクラスチェンジ機構を備えず、最高速度20km/h以下の特定小型原付だけに絞っているモデルもある。
例えば、スワロー(SWALLOW)が発売した「ゼロ9ライト(ZERO9 Lite)」がそうだ。36V・10.4Ahのバッテリーを搭載し、航続距離30kmを実現するのがこのモデル。コンパクトに折りたたむこともできることで、クルマに積載してアウトドアのレジャーなどにも便利な仕様だ。
だが、このモデルに、最高速度6km/h以下のモードはない。その理由を2023年7月1日に、東京のビッグカメラ新宿東口店で開催した一般ユーザー向け試乗会へ伺った際、代表の金洋国氏にお聞きした。
金氏によれば、「電動キックボードで6km/h以下での走行は、安定性があまりよくないんです。また、我々は、そもそも歩道を走るというニーズはあまりないと考えています。最高速度を20km/h以下と6km/h以下に切り替えること自体は技術的に可能ですが、コストが掛かり、販売価格も高くなるのです。そのため、20km/h以下の特定小型原付だけの仕様にし、価格を抑えました」という。
ちなみに、スワローのゼロ9ライトは、前述した「特定小型原付の性能等確認制度」の認定を受け、すでに販売中。価格(税込)は13万9800円だ。
一方、やはり「特定小型原付の性能等確認」試験をパスし、販売を開始したヤディア・ジャパン(YADEA JAPAN/長谷川工業)の「KS6 PRO」では、20km/h以下モードと6km/h以下モードの両方を設定している。
こちらは、定格出力500Wのハイスペックモーターを搭載し、最大航続距離60kmを実現するなど、よりハイスペックであることもあるが、価格(税込)は19万8000円と、ゼロ9ライトよりやや高い。
6km/h以下モードなしで安いモデルにするか、少し高くても両方のモードを持つモデルを選ぶのか、今後ユーザーの多くが、どちらを選択するのかも注目だ。