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なぜ155ccという排気量があるのか?
排気量155ccのバイクは、20年前では日本ではなかなか受け入れられなかったクラスだが、実はアジア全体で見るとかなり人気のクラスだといえる。特に、インドネシアやタイなど、バイクの販売台数が近年著しく伸びている国々では、一般的な排気量だといえ、日本のバイクメーカーもさまざまなモデルを投入している。
そして、日本でもここ数年、グローバルモデルとしてそれらモデルを市場投入していることにより、ラインアップが増えてきているのだ。
では、具体的にどんなモデルがあるのかというと、国内の各メーカーでは、2023年8月現在、以下のようなバイクをラインアップしている。
【ホンダ】
・PCX160(排気量156cc)
・ADV160(排気量156cc)
【ヤマハ】
・NMAX155(排気量155cc)
・トリシティ155(排気量155cc)
・Xフォース(排気量155cc)
【スズキ】
・ジクサー150(排気量154cc)
スズキの「ジクサー150」を除けば、ほとんどがスクーターモデルだ。特に、ヤマハでは、前2輪+後1輪の「トリシティ155」もラインナップするなど、豊富な車種を揃えてる。
また、ホンダの「PCX160」や「ADV160」は排気量156ccで、ジクサー150は排気量154ccと、厳密に155ccではないが、いずれもクラス的には155ccに該当するといえるだろう。
加えて、例えば、ホンダのPCX160には「PCX」、ヤマハの「NMAX155」には「NMAX」といった125ccの兄弟車もあるなどで、シリーズ化していることもポイントだ。
これら155ccのバイクを乗るためには、ジクサー150のみ普通二輪免許以上が必要だが、それ以外は普通二輪AT限定免許を持っていれば乗ることができる。一方、125ccの原付二種バイクでは、普通二輪小型限定免許、スクーターモデルなら普通二輪小型AT限定免許を持っていれば乗れるので、免許的なハードルでいえば、155ccのバイクは原付二種よりもやや高い。
だが、実は、原付二種にはないさまざまなメリットもあるので、以下に紹介していこう。
高速道路や自動車専用道路を走ることができる
155ccのバイクは、前述の通り、軽二輪に該当するため、高速道路や自動車専用道路も走行が可能。ちょっとしたツーリングなどにも使いやすいというメリットがある。
一方、125ccバイクは原付二種となるため、いずれも不可。遠出をする場合も、一般道を使うしかない。
また、125ccのバイクでは、一般道でも油断できない。よくバイパスなどに突然現れる「125cc以下通行禁止」の標識がある道路にうっかり入ってしまい、違反キップを切られるといったケースも聞くからだ。その点、155ccのモデルであれば、そんな心配は無用。すべてのバイクが通行できない「二輪車通行禁止」の道路でない限り、大手を振って走ることができる。
通勤・通学や買い物などの日常使いにも便利
モデルにもよるが、155ccと125ccのバイクでは、車格が近いかほぼ同じのため、どちらも市街地などで軽快に走れることができる。
例えば、ヤマハのモデル、155ccのNMAX155と125ccのNMAXは、ボディサイズがいずれも全長1935mm×全幅740mm×全高1160mm。また、シート高はどちらも765mmで、足着き性も同等だ。
そのため、155ccのバイクでも、通勤・通学や買い物などの日常使いに便利だし、駐車場や狭い路地などでの取り回しも、125ccと同様に扱いやすい。市街地で、155ccのバイクは、125ccバイクとほぼ同じ感覚で乗ることができるのだ。
パワーもやや余裕があり、燃費も悪くない
エンジンのパワー的にも、若干だが余裕があるといえる。例えば、やはりヤマハのNMAX155は、155cc・水冷単気筒エンジンを搭載し、最高出力11kW(15PS)/8000prm、最大トルク14N・m(1.4kgf・m)/6500rpmを発揮する。
一方、125ccのNMAXでは、124cc・水冷単気筒エンジンを搭載し、最高出力9.0kW(12PS)/8000rpm、最大トルク11N・m(1.1kgf・m)/6000rpmを発揮。
これら2モデルの場合でいえば、さほどパワーに差はないものの、若干ながらNMAX155の方が上で、信号待ちからの発進などでは、より交通の流れに乗りやすいといえる。
ちなみに、燃費性能もほぼ互角だ。この点も、ヤマハのNMAX155とNMAXを例に比較してみると、NMAX155がWMTCモード値44.6km/L、NMAXがWMTCモード値46.9km/L。
カタログ数値的には、125ccのNMAXの方が多少いいが、この程度の差であれば、実燃費の差はほぼないだろう。燃料タンク容量も、両モデルともに7.1Lを確保しているため、同じ市街地などを走るのであれば、1回の満タン給油における航続距離にも差は出にくいと思われる。
同じ軽二輪でも250ccより本体価格が安い
155ccバイクは、同じ軽二輪の250ccバイクよりも、本体価格がかなり安いことも魅力だ。例えば、ホンダのモデルで価格(税込)を比較すると、250ccスクーター「フォルツァ」が69万1900円なのに対し、PCX160は41万2500円で、約28万円も安い。
また、125cc原付二種モデルPCXの価格(税込)が36万3000円だから、PCX160との価格差は約5万円。155ccバイクは、どちらかといえば、原付二種バイクに近い予算で購入することができるのだ。
税金も比較的安い
維持費の面でも、155ccのバイクは、原付二種とあまり変わず、やや高い程度だ。
まず、車検がない。これが原付二種も同様で、バイクを維持するための費用としてはかなりメリットが大きいといえる。
一方、税金の面ではどうだろう。
まず、毎年支払う軽自動車税は、
・155cc(軽二輪):3600円/年
・125cc(原付二種):2400円/年
と、155ccバイクは、原付二種より1200円/年ほど高いが、250ccを超える小型二輪の6000円/年に比べれば約半分だから、かなりリーズナブルだといえる。
また、新規登録時などに掛かる自動車重量税については、以下の通り。
・155cc(軽二輪):4900円(初回登録時のみ)
・125cc(原付二種):なし
155ccバイクは、初回登録時にのみ4900円が必要で、125ccバイクは課税なし。ただし、この点も、車検がある250cc超の小型二輪では、車検の度に3800円/2年(初年度登録から13年未満の場合)が必要なのに対し、155ccバイクは車検がないから、初回のみの支払いで済む点もメリットだ。
保険では原付二種の方がメリットあり
次に保険だが、まず、自賠責保険は、
・155cc(軽二輪):7100円/1年
・125cc(原付二種):6910円/1年
*いずれも離島以外の地域(沖縄県を除く)
とこちらも、やや155ccの方が高い。
また、任意保険については、原付二種の125ccバイクに使えるファミリーバイク特約は、軽二輪の155ccバイクには適用されないので、新たに加入する必要がある。
このように、155ccバイクは、維持費の面では、やや原付二種よりも高めになるが、車検がある250cc超のバイクと比べれば、費用的には断然安い。
また、前述したように、高速道路を走れたり、原付二種と同じ感覚で普段使いができる、車両本体価格が250ccバイクほど高くないなど、さまざまなメリットもある。
特に、日常の足からツーリングまで幅広い用途に使え、購入費や維持費も抑えたいライダーには、最適なクラスだといえるだろう。