ガソリン価格の高値が止まらない! でも、その「4割が税金」って本当?

ガソリン価格の4割が税金
高騰が続くガソリン価格の税金について紹介
ガソリン価格の高騰が止まらない。資源エネルギー庁の発表によれば、2023年9月11日時点のレギュラーガソリン全国平均価格は184.8円/Lで、前週2023年9月4日時点の186.5円/Lと比べれば、多少は値下がりしたものの、それでも180円/L台の高値をキープ。ツーリングなどのレジャー時はもちろん、通勤・通学で日頃からバイクを使っているライダーにとっては、財布にかなり痛い状態が続いている。

そんな高値が続くガソリン価格だが、多くの税金がかけられていることが指摘されており、実は価格の4割近くは税金で、見直すべきだといった声も多い。

そこで、ここでは、そもそもガソリンにかけられる税金にはどんなものがあるのかを、改めておさらい。また、特に問題視される「暫定税率」や「二重課税」といった問題についても紹介する。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●平塚直樹、写真AC
*写真は全てイメージです

ガソリン税は本来の税率より25.1円/L高い?

まず、ガソリン税には、「揮発油税」(国税)と「地方揮発油税」(地方税)がある。

現在、それぞれの税率は、揮発油税が48.6円/L、地方揮発油税が5.2円/Lで、合計53.8円/Lとなっているが、実はこれには、特例税率、いわゆる暫定税率が含まれている。

この暫定税率とは、一時的に課税されるという種類のもので、もともとは道路財源の不足を理由として設定。2010年に一旦は廃止されたものの、すぐに同額分の特例税率が創設され現在も続いている。

そして、本来であれば揮発油税24.3円/L、地方揮発油税4.4円/Lの合計28.7円/Lが課せられるはずのガソリン税が、暫定税率によって元々の税率よりも25.1円/L高くなっているのだ。

しかも、当初の使用目的は道路財源だったのが、今では一般財源に充てられていることで、前述した「税金の見直し」を求める声のなかには、この暫定税率を問題視する声が多くなっている。

なお、ガソリンに課せられている税金には、ほかにも石油石炭税と地球温暖化対策税(石油石炭税に上乗せ)の合計2.8円/Lもあり、これらを合計すると56.6円/Lが課税されていることになる。

ガソリン価格の4割が税金
レギュラーガソリンの全国平均価格は180円/L台の高水準となっている

消費税の二重課税とは?

さらに、ガソリン価格には、これらの税に加え、消費税もかかっている。しかも、ガソリンの場合、消費税はガソリン税や石油石炭税(地球温暖化対策税も含む。以下、石油石炭税)と本体価格の合計額に課税される。そして、この課税方式が「ガソリン税に消費税を課す二重課税」だと問題視されている。また、これらの税金が課せられていることが、前述した「価格の4割近くは税金」といった指摘の根拠となっている。

例えば、レギュラーガソリンの小売り価格が185円/Lの場合、どれくらい税金がかけられているのか試算すると、以下のようになる。

レギュラーガソリン小売り価格:185円/L
本体価格:112.4円/L
ガソリン税(本来の税額):28.7円/L
ガソリン税(暫定税):25.1円/L
石油石炭税:2.8円/L
消費税:16円/L

上記はあくまで参考例なので、消費税額は小数点以下の処理により(切り捨て・切り上げ)多少変わるかもしれないが、試算の場合でいえば、税金が72.6円/Lかかっていることになる。つまり、1Lあたり39%、約4割が税金だといえる。

ちなみに、ガソリン税や石油石炭税は、ガソリンの本体価格が変わっても一定なので、もし本体価格が安くなれば、さらに税金の割合は増える。

例えば、レギュラーガソリンの小売り価格が165円/Lであれば、本体価格93.4円/Lで、税金は、ガソリン税+石油石炭税の合計56.6円/Lと消費税15円/Lを合わせると合計71.6円/L。ガソリン1Lを購入するにあたり、税金が43%以上を占めることになる。

ガソリン価格の4割が税金
ガソリン価格の場合、本体価格とガソリン税などの合計に、さらに消費税がかけられる

トリガー条項凍結の解除を求める声も多い

ガソリン税の問題では、「トリガー条項凍結の解除」を求める声もある。

トリガー条項とは、2010年度の税制改正で導入された制度で、レギュラーガソリンの全国平均価格が「3か月連続で160円/L」を超えた場合に、先に紹介した「暫定税率分の25.1円/Lを課税しない」というもの。

国民生活に大きな影響を持つガソリン価格が一定基準以上になった場合に、拳銃などのトリガー(引き金)を引く、つまり「税金を引き下げる」ことで、価格の安定を図ることが目的だ。

資源エネルギー庁のデータによれば、レギュラーガソリンの全国平均価格は、2021年10月4日時点で160円/Lになって以来、ずっと160円/L以上を続けている。そのため、本来であればこの制度が発動され、先に紹介したガソリン税+石油石炭税の合計は31.5円/Lとなっているはずだ。

もし、本体価格が、これも先述した試算のように112.4円/Lであれば、本体価格+ガソリン税+石油石炭税の合計143.9円/Lと、消費税14円/Lを合わせて、小売り価格は157.9円/L。現行制度で試算した小売り価格185円/Lよりも27.1円/Lも安くなる。

ところが、現在、トリガー条項は凍結状態だ。理由は、2011年に発生した東日本大震災の復興財源を確保するため。そのため、レギュラーガソリンの全国平均価格が180円台となっても、依然として「税金額はそのまま」の状態が続いているのだ。

ガソリン価格の4割が税金
バイクでもガソリン価格の高騰は財布に痛手

ガソリン価格高騰はまだ続く?

ガソリン価格が上がっている要因は、主に円安や原油高の高騰、それに政府の補助金が2023年6月から段階的に縮小されていることなどが挙げられている。

ただし、小売り価格が180円台の高止まりを続けていることで、政府は本来2023年9月に終了予定だった補助金制度を2023年12月まで延長することを決定。2023年9月7日からは補助金の支給額も拡充する対策も実施しており、10月中旬頃までに175円/L台にする方針だという。

原油価格については、産油国であるアフリカのリビアが暴風雨による大雨でダムが決壊し、洪水により大きな被害が出ており、今後も高騰する見込みであることも伝えられている。

今後、ガソリン価格の高騰がまだまだ続くのか、一定の範囲で落ち着くのかはまだ分からないが、いちバイクユーザーとしては、できるだけ早期に比較的安い価格へ落ち着いてくれることを願いたい。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…