「原付免許は125ccまで」|警察庁が検討|ようやくと動き出す国内の原付改革

写真左はホンダ スーパーカブC125(排気量123cc)、写真右はホンダ スーパーカブ50(排気量49cc)。
2023年9月7日、警察庁は原付(原動機付自転車)免許で乗車できる排気量を、現況の50cc以下から125cc以下に見直す検討に入ると発表。対象予定は排気量125cc以下で、最高出力を4kW(5.4ps)まで抑制した車両。かねてから声高に叫ばれていたバイクメーカーやバイク関連団体の意見・要望に対し、ようやく国が動き始めた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
警察庁の発表資料 https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20230907001.html

原付(原動機付自転車)免許で乗車できるバイクの排気量は、現況50cc以下に規定。今回警察庁が発表したのは、これを125cc以下(運転は普通二輪小型限定免許以上が必要)まで引き上げよう(ただし最高出力は4kW[5.4ps(馬力)]までに抑制)という提案。

今後の予定としては、2023年9月11日に第1回検討会を開催。車両の走行評価や関係者からのヒアリングを通じ、50ccと125ccの車体の大きさの違いによる安全性や運転の容易性等を重点に検討。検討会は年内に3~4回程度開催し、提言を取りまとめる。警察庁はまとまった提言を受け、法令の改正を実施する見込みだ。

※注:原付に適用中である既存の「30km/h速度規制」「二段階右折義務」「2人乗りの禁止」は変わらない。なお、すでに発売済みの原付はそのまま乗車可能。

構成員(敬称略)
●学識経験者
・槇徹雄 東京都市大学理工学部教授
・中井宏 大阪大学大学院人間科学研究科准教授
●実務経験者、業界関係者等
・上原厚美 自動車安全運転センター安全運転中央研修所研修部実技教官
・三好礼子 自動車安全運転センター理事、元国際ラリースト
・清水晃 警視庁府中運転免許試験場技能試験官
・和地一彦 警視庁府中運転免許試験場技能試験官
・國友智子 阪神ライディングスクール教習指導員
・中村隆 一般社団法人日本自動車工業会二輪車車両区分部会
●横断タスクフォースリーダー
・飯田剛 一般社団法人日本自動車工業会二輪車安全教育分科会長
・栗山あずさ 日本自動車研究所研究員
●行政関係者
・経済産業省製造産業局、国土交通省自動車局、警察庁交通局

50ccバイクの製造には膨大なコストが発生「50ccでの排ガス規制クリアは採算がとれない」

今回検討される原付免許の排気量の見直し。その大きな理由は、厳しい排ガス規制だ。ヨーロッパを中心に、バイクの排ガス規制は年々厳しくなっている。これに伴い、バイクのエンジンは2ストロークから4ストロークに移行。

また排ガス規制をクリアするため、吸気システムは構造が簡単でコスト安のキャブレターから、構造が複雑でコスト高のフューエルインジェクションに変更。マフラーには高額なレアメタルを素材にしたキャタライザー(触媒)も必要になった。

厳しい排ガス規制は、125ccよりも50cc、つまり排気量が小さくなるほどクリアするのが困難になるのが特徴。クリアするには高い技術力が必要で、研究・開発に多大な時間とコストを要する。

これらのコスト上昇は、バイクの販売価格に反映。例えば厳しい排ガス規制のクリアを断念し、惜しまれつつ生産終了となったホンダの原付ロングセラーモデル「モンキー」の場合。キャブレター仕様の価格は19万5000円だったのに対し、フルモデルチェンジによって排ガス規制をクリアしたFI(フューエルインジェクション)仕様の価格は、27万6000円まで上昇した(※ともにスタンダード版の税抜価格)。

2009年(平成21年)に登場した初代FI(フューエルインジェクション)モンキー Z50J-9。写真はモンツァレッド/ホワイト。厳しい排ガス規制をクリアしたが、価格は19万5000円から27万6000円にアップ。

現況、マーケットが日本のみとなっている50ccの場合、パワーを維持しながら厳しい排ガス規制をクリアするためには、規制前よりも非常に多くのコスト(お金)がかかってしまう。

一方125ccは、バイクの巨大市場であるアジア諸国において、庶民の足として活躍する“スタンダード”ともいうべきカテゴリー。市場が日本のみの50ccに比べ、世界規模の市場である125ccは、排ガス規制のクリアとコストのバランスを取りやすいのが特徴だ。

125ccは排ガス規制をクリアするために50ccほどコスト(お金)がかからず、しかもパワーダウンの比率が少なくて済む。ココが最大のポイントであり、大きなメリットとなっている。

すでに125ccはグローバルスタンダード。ようやく動き出した原付の125cc化

スクーター王国・台湾の台北市内での一コマ。台湾では1990年初頭に政府が厳しい排ガス規制を実施。50ccの生産コストが急激にアップしてしまい、大半のメーカーは50ccの生産を断念。50ccは衰退し、現在では125ccスクーターが販売台数の8割を占めている。

原付は“時代遅れの法律”と揶揄される「最高速度30km/h規制」や「二段階右折義務」、加えて価格の上昇などが要因となり、販売台数が大幅に減少。これに伴い、「50ccの生産は海外にシフトしているが、正直もう限界……」「新聞配達やデリバリーなどのため、もはや50ccの生産はビジネスではなく社会的義務」と話すメーカー関係者もいる。

上記を踏まえ、バイクメーカーやバイク関連団体は国に対し、再三「原付の125cc化」を訴えてきた。しかし警察庁を始め、国の姿勢は、

『原付を50ccから125ccに引き上げたら、事故が増える可能性があります』

『法律なのだから、メーカーは何が何でも50ccという排気量で排ガス規制をクリアして下さい。クリアしない車両は販売不可。ただし販売価格の上昇やパワーダウンは、メーカーの努力で何とかして下さい』

『販売価格の上昇やパワーダウンした場合は、ユーザーが素直に受け入れて下さい。すべては環境保全のためですから』

という“日本には日本のやり方がある”的なもの。

来る2025年11月、国内で新たな排ガス規制が適用される。先述の通り、50ccの改良には多大なコストがかかる。しかも追い打ちをかけるように、国内では円安による資材高騰が直撃。以上を考慮し、恐らくメーカーは「もう50ccの生産は採算不可能」だと判断したのだろう。

国はメーカーの(言い換えれば国家の)危機的状況をようやく理解し、重い腰を上げるに至った。もう「日本には日本のやり方がある」「メーカーが努力しろ」などと、上から目線の呑気なことを言える状況ではなくなったわけだ。

バブル崩壊後、「日本は世界とは違う」的な考えで、日本の携帯電話や電化製品は世界市場から取り残されて“ガラパゴス化”する等々の事案が多々ある。

バイクの世界はとっくの昔に、125ccを中心に動いている。日本の原付は、50ccという“ガラパゴス化”から、125ccの世界基準を受け入れ、2023年にようやく変わろうとしている。

50ccと125ccの違いを検証

50ccと125ccは排気量のほか、どこが異なるの? ここではホンダの人気モデル「スーパーカブ50」と「スーパーカブC125」を比べてみた。

エンジンの違い

ホンダ スーパーカブ50
ホンダ スーパーカブC125

ホンダ スーパーカブ50
エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒
排気量:49cc
最高出力:2.7kW[3.7ps]/7,500rpm
最大トルク:3.8N・m/5,500rpm
燃費:69.4km/L ※WMTCモード値
運転免許区分:原動機付自転車

ホンダ スーパーカブC125
エンジン種類:空冷4ストロークOHC単気筒
排気量:123cc
最高出力:7.2kW[9.8ps]/7,500rpm
最大トルク:10N・m/6,250rpm
燃費:68.8km/L ※WMTCモード値
運転免許区分:普通二輪小型AT限定以上

外観の違い

ホンダ スーパーカブ50
ホンダ スーパーカブC125

ホンダ スーパーカブ50
全長×全幅×全高:1,860mm×695mm×1,040mm
ホイールベース:1,210mm
最低地上高:135mm
シート高:735mm
車両重量:96kg
乗車定員:1人
最小回転半径:1.9m
前タイヤ:60/100-17M/C 33P
後タイヤ:60/100-17M/C 33P

ホンダ スーパーカブC125
全長×全幅×全高:1,915mm×720mm×1,000mm
ホイールベース:1,245mm
最低地上高:125mm
シート高:780mm
車両重量:110kg
乗車定員:2人
最小回転半径:2.0m
前タイヤ:70/90-17M/C 38P
後タイヤ:80/90-17M/C 50P

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