ハスクバーナ・TE250試乗記/世界のハードエンデューロで活躍する2ストロークモデルがコレ!

グラハム・ジャービス(元世界トライアルトップランカー)は現在ハードエンデューロの世界トップライダー。そのジャービスが乗っているのがこのハスクバーナの2サイクルエンデューロモデルだ。彼が選んだこのマシンはポテンシャルもトップということ!
REPORT●村岡 力
PHOTO●山田俊輔
スタンディングポジションは突っ立ちでも極端な前傾にもならない自然なもの。様々な障害を越える時のライダーの動きは大きく動かせる。

ハスクバーナ・TE250……1,385,000円(消費税10%を含む)

ハスクバーナ・TE250
ハスクバーナ・TE250
ひと目でハスクバーナと分かるホワイト基調のカラーリングは特徴があって目立つ。

TE250に採用された新型フレームはクロモリ製で、アンチスクワット性能とフレックス特性を向上させている。そしてサブフレームにはポリアミドとアルミのハイブリッドを採用し、優れた強度と軽量化を果たしている。
WP製のフロントフォークはセンデューロ専用とし、クローズドカードリッジスプリングを採用。ミッドバルブピストンはスムーズな作動と安定した性能を維持する。リヤショックもWP製で、300mmのホイールストロークを持ちながら15mmの短縮と100gの軽量化となっている。前後のサスペンションは調整を手で可能となっており、レース時におけるセッティング変更を簡単に出来る。
グラフィックはホワイトを基調としたいかにもハスクバーナというもので、大きなロゴマークが目立ってカッコ良い。シートカバーはハイグリップタイプとなっており、またタンクカバーは膝との接触面積が増大されていて、ライダーとのフィット性が向上。これはコントロール性と安定性の向上に繋がっており、またスリムな車体はスタンディング姿勢での自由度も向上している。
ヘッドライトはガスガスやKTMと同じく大光量のLEDとなり、夜間走行での視認性アップと安全性の向上になった。
2024年モデルの2ストロークエンジンは、基本構成は同じだが燃料噴射システムが変わった。TPI(ポートインジェクション)からTBI(スロットルボディインジェクション)へとなった。しかも噴射ノズルはバタフライバルブの前後2箇所で、回転数や負荷、吸気温度、気温などに合わせて1箇所での噴射or 2箇所からの噴射がきめ細かに制御される。
電子ヒューズやリレーを排した全く新しいエレクトロニクスを採用し、そのユニットはシート下に収めて外的な衝撃から守っている。マッピングも様々な条件に合うように2個セットされ、スイッチで簡単に切り替えが可能。勿論電子排気ポートデバイスの制御も細かく行う。
GSKディスクプレートを備えたブレーキテック製のキャリパーや、プロテーパー製のハンドルバーやミシュランのエンデューロタイヤを履くなど、他のハスクバーナエンデューロモデルと共通のコンポーネントを採用している。
今時のエンデューロマシンでは常識となったセル始動、2サイクルは分離給油などレーサーなりの手間がかかるという部分は無く、気軽に乗れてしまうのもありがたいことだ。

シッティングでの全開時も押さえが効くポジションである。車体の直進安定性は高く、それでいて狙ったラインへ持って行くやすい特性だ。

シート高はそれなりにあるので足つきは決して良くないものの、サスペンションはカチカチではなく1Gでもスっと縮んでくれるので極端にややこしいステージでなければ、大きな問題とはならないだろう。まぁそれでももっと低いに越したことはないのだが。
走り出してすぐに感じるのは、この2サイクルエンジンの扱いやすさだ。モトクロッサーではないのでピーキーさは皆無。いや現在ではモトクロッサーもピーキーな特性は少ないですが。レスポンスは勿論シャープなのですが、過剰に反応しないというかアクセルに忠実で開けた分だけトルクとパワーが出てくるというそんな感じなのだ。つまり乗りやすく非常にコントローラブルで、グリップをさせやすく無駄なスピンが少ないということ。
これは素晴らしいエンジンだ!クラッチはレバー操作は軽くて楽。半クラッチの感覚も分かりやすいところへきて、スパッと繋げることも簡単。勿論切れも良い。
セッティングの関係なのか、ガスガスで感じた硬さは無くて全体として乗り心地が良い気がした。だからと言ってダルさがあるわけではない。ライダーの思った通りに車体は反応してくれるし、サスに底突きがあるわけもない。
2サイクルエンジンだからなのか、2サイクルエンジンの感覚が自分に合っていたのか、たまたまサスのセッティングが自分に合っていたのかは分からない。とにかくある意味適当に乗っていてもしっかり走ってくれる、車体任せで走破性を勝手に発揮してくれる、そんな感じがしたのだ。

筆者レベルでは大ジャンプは出来ないが、それでも着地では非常に安定していて着地のショックも少なく安心感が大きかった。
モトクロスコースでも、エンデューロコースでも安定した走りが出来る。それほど扱いやすい特性のマシンだと思う。

どこかの部分が突出して性能が良いと、全体のバランスが崩れて乗りにくかったりするものだが、それが全く無いということ。
と、ここで思い出したのだが、ジャンルは違うが以前モンテッサのコタ4RT(トライアルマシン)のファクトリーマシンに試乗した時、全てにおいてフワフワで何も特徴らしきものが無く、めちゃくちゃ乗りやすかったことを。それでいてライダーのコントロールに瞬時に反応して、扱いやすかったのだ。
それと似た感覚をこのTE250で感じていたようだ。つまり、乗りやすい!この一言に集約できるのではないか。そしてこれこそが元トライアルトップランカーのジャービスが乗っている理由なのではないかと。
ただひとつ気になったことがある。それはリヤブレーキペダルが踏みづらい、横への張り出しが小さくて踏みづらいということ。他の車種と同じペダルなのだが、KTMの150EXCでは気にならなかった。よくよく見るとクラッチカバーの厚さが違っていて、その出っ張りの差でペダルが実質小さくなっていたのだ。ま、これは慣れてしまえば問題無いのだけど、最初だけは意識していないと踏み損なって焦るかもしれない。
まとめると、2サイクルエンジンならではのパワー感、速さ、走破性。そして車体とのバランスの良さがTE250の持ち味ってことだ。

足つき性チェック(ライダー身長172cm、体重85kg)

地面に少しめり込んでしまったので足つきは良く見えるが、足半分が接地する程度だ。それでもスリムな車体なので不安はほぼ無い。
比較的コンパクトと言えるポジション。シートは硬めだが滑りにくく、タンクカバーへのフィット感も良好なのでコントロール性は非常に良い。ステップは大きくなったのでブーツへの接触面積が増え、ここでも安定感とコントロール性は上がっている。
写真では足つきは良く見えるが、実際は足の半分が付くだけ。それでもフルサイズのエンデューロマシンとしては悪くない。平均的な日本人ライダーにはもう少しシート高が低い方が良いのだが、走破性のこともあるのでこれが普通だ。

ディテール解説

水冷2サイクル単気筒、ケースリードバルブに燃料噴射、セル始動、分離給油となっていて完成度は非常に高い。アクセルに忠実で低回転から高回転の伸びまでフラットなトルク特性。もちろんレスポンスはシャープでもある。
ハスクバーナはガスガスと同じくボトムリンク式のリヤサスを採用する。WP製のショックユニットは短く軽量な物へと変更されている。
ミシュランのエンデューロタイヤを履く。モトクロスコースはも勿論のこと、根っこや岩などもしっかりグリップ。現在のエンデューロタイヤの性能は素晴らしいものがある。
メインフレームは新クロモリを採用し、ステアリングヘッド部分は鍛造構造。しっかりした剛性と適度なしなりを持ち、素直な操縦性に繋がっている。
スイッチはシンプルなライトとホーン。右のスイッチはマップモード切り替えのものとなっている。
アルミダイキャスト製のスイングアームは軽量でありながら高剛性。ブレーキテック製のキャリパーは対向2ポッドで、ディスク板はウェーブタイプ。効きもコントロール性も高い。
フロントブレーキもブレーキテック製で2ポッドのスライド式。こちらも効きは強力で、ブレーキレバーの握り具合に応じてくれる。
ミシュランのこのタイヤにはMの文字がある。性能には関係無いものだが、ちょっと嬉しい。

ハスクバーナ・TE250/主要諸元

エンジン型式:水冷2ストローク単気筒
EMS: Vitesco Technologies製
総排気量:249cc
始動方式:セルスターター式
変速機:6速
燃料供給方式:Keihin製 EFIスロットルボディΦ39mm
サスペンションF:WP製 XACT48倒立フォーク
サスペンションR:WP製 XACTリンク式モノショック
タイヤF / R:90/90-21” / 140/80-18”
車輌重量:約107.0kg(半乾燥)

ライター/村岡 力

1956年生まれ。

70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。2輪メインですが4輪もし時々航空関係も。

モータースポーツは長年トライアル1本で元国際B級。現在は172cm85kgの重量級。業界ではジッタのアダ名で通っています。

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