インバーターをモーター部に一体化し、ユニットを軽量コンパクト化した「日立Astemo」のE-Axle 【EICMA2023】

日立Astemoが開発・研究中の電動パワートレインシステム「E-Axle(イーアクスル)」。新開発のBMS(バッテリー・マネージメント・システム)は、すでに市販の四輪EVへ供給・搭載。
「KEIHIN」「SHOWA」「NISSIN」の各製品ブランドを展開(2020年に経営統合)する、四輪車と二輪車の新技術・先進技術カンパニー「日立Astemo」。同社はイタリアで開催されたモーターサイクルショー『ミラノショー(EICMA)2023』で、モーター、ギアボックス、インバーターを統合したオンボード型とし、高い操縦安定性と走行性能に貢献する独自開発の電動パワートレインシステム「E-Axle(イーアクスル)」の最新版を発表。「EMU 」に加え、新開発の二輪車専用「BMS 」を公開した。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

日立Astemo・E-Axle(イーアクスル)……参考出品

ソフトウェアのアップデートのみで機能変更への対応を可能とする「EMU(EVシステム・マネージメント・ユニット)」に加え、新開発の「BMS(バッテリー・マネージメント・システム)」が導入されたイーアクスル。

インホイールモーター式やサイドホイールモーター式よりも操縦安定性に優れ、スタイリングや車体レイアウトの自由度を向上

日立Astemoが開発した「E-Axle(イーアクスル)」は、二輪車の電動化に欠かせないモーター、ギアボックス、インバーターを一体化した、独自の電動パワートレインシステム。

イーアクスルは内燃機関モデルから電動車への置換を容易にするアイテムとして、昨年のEICMA2022で初公開。ここで発表されたイーアクスルは、小型・軽量で高出力という特性を活かし、110cc~125ccクラスへの搭載を前提に開発した製品を発表。

多くの小型二輪EV が採用するインホイールモーターやサイドホイールモーターとは異なり、フレームに搭載するオンボード型とすることで操縦安定性に優れ、スタイリングや車体レイアウトの自由度をアップさせた。

スクーターにも適用できるよう、ユニットのさらなる小型・軽量化を実現

最新のイーアクスルのユニットは冷却用ファンを省略。またインバーターをモーター設置部内に収めることで、ユニット全体のさらなる小型・軽量化を実現。

一方、EIMCA2023に展示された進化版のイーアクスルは、ライトモーターサイクルへの搭載を主眼に、冷却用ファンを省略。“強制空冷式”から、走行風をユニットの冷却に活用する“自然空冷式”に変更した(※注1)

またギアボックスの小型化と、インバーター本体をモーター設置部内に収納することで、全ユニットの大幅なコンパクト化と軽量化を実現。OEMニーズのもと、スペースに限りのあるスクーターにも適用するように改良された。

これらにより、さらなるバッテリースペースの確保を実現し、二輪EVの課題である航続距離の延長に貢献。なお、減速機は「三軸二段減速」から「二軸単段減速」へと改良。ばね下重量の軽量化による運動性の向上、また操作性向上の要求が多いライトモーターサイクルにとって新型のイーアクスルは、さらに使いやすい電動パワートレインへと進化した。

※注1:スクーターへの搭載や空冷限界となる出力バリエーションを考慮し、冷却用ファンのオプション装備も可能な仕様に設計済み。

バッテリーに優しい「BMS(バッテリー・マネージメント・システム)」を新開発

写真左)EMU(EVシステム・マネージメント・ユニット) 写真右)BMS(バッテリー・マネージメント・システム)

今回、二輪車の操縦安定性や安全性に欠かせない、様々な電子制御システムのマネージメント機能を集約し、ソフトウェアアップデートのみで機能変更への対応を可能とする「EMU(EVシステム・マネージメント・ユニット)」に加え、EVシステムに必要な「BMS(バッテリー・マネージメント・システム)」を新開発。

このBMSは、電池残量・劣化度合の推定やセル電圧の均等化など、バッテリーを監視する機能に加え、バッテリーの過充電や過放電、過電流などを防ぐ安全機能を装備。新開発のBMSは、すでに市販の四輪EVに供給され、各車に搭載中だ。

上記で培った高精度なCell電圧検出技術や故障検知機能を活かし、安全性を確保しながらバッテリーのパフォーマンスを最大限に引き出し、航続距離の延長を実現。加えて二輪車に適したセル数(14cell と28cell)に限定することで、低コスト化を可能としている。

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