YZF-R125とYZF-R15は”ちゃんと”スポーツバイクだった‼  ヤマハ新型125ccバイク試乗記

海外で定評を得ているYZF-R125、YZF-R15、MT-125、XSR125の4機種が、ついに日本に導入された。当記事ではその中から昨今の小排気量車では貴重なフルカウルスポーツモデル、YZF-R125/15の乗り味を紹介しよう。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハYZF-R125……51万7000円

日本には導入されたばかりだが、YZF-R125/15の海外デビューは2008年で、2019年に登場した現行モデルは3代目。

ヤマハYZF-R15……55万円

外観から判別できるYZF-R125とYZF-R15の相違点は、カウル側面のデカールとリアスプロケットのみ。

ようやく導入されたドンピシャのモデル

近年の日本の2輪市場では、50cc以下の原付一種のシェアが縮小する一方で、51cc~125ccの原付二種の販売台数が着実に増加している。2023年10~12月からヤマハが日本への導入を開始したYZF-R125、MT-125、XSR125は、そういった状況にドンピシャなモデルなのだが、個人的には、ようやく……という気がしないでもない。何と言っても3車の海外デビューは、YZR-125:2008年、MT-125:2014年、XSR125:2021年で、それぞれに155cc仕様も存在するのだから。ちなみにスクーターに関しては、最近のヤマハは多種多様な125/155ccモデルを国内販売しているのだけれど、なぜか125/155ccスポーツバイクは様子見の期間が非常に長く、僕はその状況にやきもきしていたのだ。

とはいえ、11月中旬に開催されたサーキット試乗会とその1週間後のモトチャンプ誌の仕事で、3台のヤマハ製125ccスポーツバイクとYZF-R15をじっくり体験した僕は、この4台が日本の2輪市場の活性化に大いに貢献するに違いないと確信できたので、やきもきしたかいがあったというものである。そしておそらく、僕と同様の気持ちだったはずの全国のYSPディーラーの皆様は、これでようやく、ライバルへの反撃が堂々と開始できる、と感じていることだろう。

兄貴分に通じる手法でバリエーション展開

YZF-R125/15はフルカウルスポーツ、MT-125はストリートファイター、XSR125はネオクラシックモデルだが、可変バルブ機構のVVAを備える水冷単気筒エンジンや、デルタボックスタイプのスチールフレームなど、ヤマハの125/155ccスポーツバイクは基本設計の多くを共有している。ただし、外装やライポジ関連パーツ、前後ショックなどは三車三様で、こういった展開は同社の700cc並列2気筒や900cc並列3気筒シリーズにも通じる話である。

当記事ではその4車の中から、エンジンの排気量とファイナルレシオ(R125は14/48Tで、R15は14/52T)のみが異なる、YZF-R125とYZF-R15の乗り味を紹介したい。なお日本市場でこの2機種とシェアを争いそうなモデルは、GSX-R125とKTM RC125くらいだが、海外ではCBR150Rやニンジャ125、GSX-R150、アプリリアRS125/150なども、ライバルとして認知されているようだ。

街乗りやツーリングも過不足なく楽しめる

意外に攻めてないんだな……。それが、YZF-R125/15に対する僕の第一印象だった。気軽でフレンドリーなネイキッドとして、MT-125とXSR125をほぼ同時期に発売するのだから、個人的にはもっとスポーツライディング、サーキットとワインディングに特化したキャラクターでもいいと思うのだが、ライポジはあまり戦闘的ではないし(ただしスーパースポーツに不慣れなライダーは、スパルタンと感じそう)、エンジンはパワーバンドの維持を強要しない。

逆に言うならこのモデルには昔ながらのライトウェイトスポーツ感、神経質さやピーキーさがまったく無くて、かつてのRZ125やTZR125を知る昭和生まれのオッサンとしては、その事実がちょっと寂しかった。まあでも、YZF-R125/15を含めたヤマハの4台の新型車は、エントリーユーザーを多分に意識しているようだから、街乗りやツーリングも過不足なく楽しめる、現状の特性は正解なのだろう。

そんなわけで、初試乗時はそこはかとない歯がゆさを感じた僕だが、後にモトチャンプ誌の仕事でじっくり乗り込んでみたところ、意外な事実が判明することとなった。

予想以上の運動性能と速さ

端的に言うならYZF-R125/15は、十分にスポーティで、十分に速かったのである。抜群の安定感を誇る倒立フォークや、無造作なシフトダウンを許容するアシスト&スリッパークラッチのおかげで、コーナーの進入では狙ったラインを確実にトレースできるし(フロントブレーキを残しながら、かなり奥まで突っ込める)、出口では後輪の滑りを制御するトラクションコントロールを信頼して、フルバンク状態からアクセルをガバッと開けられる。しかもVVAの効果で、エンジンはどんな回転域でも右手の動きに従順に追随してくれるし、カムシャフトがロー→ハイに切り替わる7400rpm以上ではなかなかの爽快感が堪能できるのだ。

何だか羊の革を被った狼的な展開ではあるけれど、街乗りやツーリングに気軽に使える資質を備えていても、YZF-R125/15はちゃんとスポーツバイクなのである。改めて考えると、それは兄貴分のYZF-R25/3にも通じる話だが、パワーと車重が控えめだからか(R125:15ps/141kg、R15:19ps、R25/141kg:35ps/169kg、R3:42ps/169kg)、自分の意思でマシン操っている感、と言うか、意のままにマシンを操れている感は、YZF-R125/15のほうが味わいやすいように思えた。

R125とR15の違い

さて、ここまでの文書では2台をひとくくりで語ってきたものの、YZF-R125とR15は似て非なる乗り物である。そして周囲の同業者と話をしてみると、任意保険代が高くなろうとも、たった4psのパワー差とは思えないほどに速く、わずかに燃費が良好で(実燃費に近いWMTCモードの数値は、R125:49.4km/ℓ、R15:50.2km/ℓ)、高速道路が利用できるR15のほうが、人気が高いようだが……。

僕としては、パワーが少ないぶんギアチェンジの回数が多くなりがちなR125にも、かなりの魅力を感じている。前述したように、この2台はパワーバンドの維持を要求しないし、意のままにマシンを操れている感が得やすいのだけれど、シフトアップ&ダウンに関しては、R125にはちょっとだけシビアなところがあって、それがスポーツライディングの充実感につながっている、と言えなくもないのだ。

言ってみればYZF-R125とYZF-R15は甲乙が付け難く、もちろん付ける必要はないのだが、2台のキャラクターの差異を理解したうえで購入するのであれば、どちらを選んでも充実したバイクライフが送れると思う。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

ライディングポジションは、スーパースポーツとスポーツツアラーの中間的な印象。上半身の前傾度は、YZF-R25/3より強いものの、YZF-R6/7/1と比べれば緩め。そして815mmのシート高は、YZF-R25/3より35mm高いけれど、YZF-R6/7/1との比較なら20~40mmほど低い。なお両足が地面にベッタリ接地するためには、最低でも170cm以上の身長が必要。

ディティール解説

フェアリングの整流効果はなかなか良好。M字型ダクトの中央にバイファンクションタイプのLEDヘッドランプ、その左右にアイブロウタイプのポジションランプを設置するフロントマスクは、YZF-R7に通じる雰囲気。
装着位置はトップブリッジ下だが、セパレートハンドルは基部が上方にオフセットしているので、グリップ位置はそんなに低くはない。樹脂製のガソリンタンクカバーは3分割式だから、転倒時の補修コストは安く済みそう。
液晶メーターのモードは2種で、写真はTRACK。STREET では、タコメーターの表示が0~13000rpm、ラップタイマーがオド/トリップメーターになる。上部にはシフトタイミングインジケーターを設置。
水冷単気筒エンジンは、7400rpmを境にして2種のカムシャフトを切り替えるVVA=Variable Valve Actuationを装備。R15の内径×行程がほぼスクエア(58×58.7mm)であるに対して、R125はロングストローク(52×58.7mm)。
左右スイッチボックスは、近年の日本市場で販売されている他のヤマハ車では見かけないデザイン。TRACKモードを選択した際は、ラップタイムのカウント用としてパッシングボタンを使う。
操作時にメーターユニットに手を伸ばさなくてはらないMT-125/XSR125とは異なり、YZF-R125/15は右側下段に備わるレバーでディスプレイに表示される内容の変更・リセットが可能。
シートはスーパースポーツ然とした構成。前部が絞り込まれ、サイドカバーの出っ張りがないので、足つき性はMT-125/XSR125よりも良好。兄貴分のYZF-R6/7/1と同様に、シートカウル左右には通風口が備わる。
タンデムシート下の収納スペースはほとんど皆無だから、ここにアンテナ分離式のETCユニットを設置するのは大変そう。ネットで検索すると、メインシート下部をETCの収納場所にする人が少なくないようだ。
セパレートハンドルとのバランスを取るため、兄弟車のMT-125/XSR125と比較すると、ステップは後方/上方に設置。なおYZF-R125/15は純正アクセサリーとして、クイックシフターを準備している。
フロントフォークはφ37mm倒立式、リアサスペンションはボトムリンク式モノショックで、いずれも調整機構は備わっていない。左右非対称デザインのスイングアームは、125~150ccクラスでは珍しいアルミ製だ。
ブレーキは、F:φ282mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー、R:φ230mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーで、ABSは2チャンネル式。余談だが、欧州仕様のYZF-R125のブレーキは、日本仕様より豪華な構成。
純正指定タイヤはバイアスのIRC・RX-01。ホイールサイズはF:2.75×17/R:3.75×17だから、その気になれば、ハイッグリップ指向のラジアルタイヤが履けなくはない(インド仕様のR15はリアのみにラジアルを採用)。

主要諸元

車名:YZF-R125 <YZF-R15>
型式:8BK-RE45J/E34LE <8BK-RG86J/G3U4E>
全長×全幅×全高:2030<1990>mm×725mm×1135mm
軸間距離:1325mm
最低地上高:170mm
シート高:815mm
キャスター/トレール:25.5°/88mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC4バルブ
総排気量:124cc <155cc>
内径×行程:52mm×58.7mm <58×58.7mm>
圧縮比:11.2 <11.6>
最高出力:15<19>ps/10000rpm
最大トルク:12<14>N・m/8000<7500>rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.833
 2速:1.875
 3速:1.363
 4速:1.142
 5速:0.956
 6速:0.840
1・2次減速比:3.041・3.714<3.428>
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ37mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:100/80-17
タイヤサイズ後:140/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:141kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:11L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値・2名乗車:61.1<65.7>km/L
燃料消費率WMTCモード値・1名乗車:49.4km<50.2>km/L

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…