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ヤマハ・YZ250F……940,500円(消費税10%を含む)
2024年モデルではほとんどフルモデルチェンジと言えるような改良が加えられている。まず細部にわたる軽量化については、スロットルワイヤーで60g、電装ハーネスとスイッチで200g、エアクリーナーで220g、燃料タンクで200g、リヤフレームで200g、チェーンガイドで80g、フットレスト(フットレスト本体ではなくブラケットで)220gのマイナスとなっているのだ。ただしメインフレームはねじれ剛性の改良や形状変更、部材の変更、エンジン懸架変更などによって300g重量増になっている。トータルで1kgの軽量化となり、装備重量は105kgとなった。
エンジンに関しては、低中速回転域の性能を維持しつつ高回転域の性能向上。カムチェーンなどの信頼性向上などを果たしている。
具体的にはエアクリーナーボックスは23年モデルのYZ450Fの構造を踏襲し、前側吸気孔追加と立体エレメントの採用で通気抵抗を約30%低減している。
カムチェーンはチェーン幅を1.49mm広くし、スプロケットとの接触面圧を約10%低減することで耐硬直性を向上。チェーン背面の表面処理を変更してフリクションロスを約30%低減している。それにともなってカムスプロケットとダンパーチェーンを新作とした。
吸気バルブは疲労強度を向上させ、耐久性をアップ。耐熱性を向上したスターターモーターリード線を採用した。
燃料噴射も変更されている。噴射タイミングの最適化により、高回転域の性能向上とスムーズなオーバーレブ特性。ECUセッティングをより細密化し、ライダーのイメージとリンクしたパワーデリバリーを演出している。ローンチコントロールシステムを新採用し、レブ制御、出力コントロールによって安定したスタートをサポートしている。またトラクションコントロールも新採用し、滑りやすい路面でのパワーロスを防ぎライディングをサポートする。
車体周りでは、シームレスとスリム化そしてコンパクトにしてライディングの自由度が向上。シートはよりフラット化し、加速時のストッパー形状も採用している。リヤブレーキはあえてホースの剛性を落とし、コントロール性を向上させた。
前後のサスペンションはトラクションとバンプ吸収性の向上。そして手回し圧減衰アジャスタとしてセッティングを簡単に変更出来るようになった。
これらによって戦闘力が大きく向上して勝てるマシンになったということだ。
足つき性チェック
それでは試乗する。股がるとシート高は高くてエンデューロマシンよりも硬いセッティングのサスペンションによって、ほとんど沈み込まず足つき性はよろしくない。最も完全なモトクロッサーなのでこれは問題とはならない。走り出してすぐに感じるのは「硬い」ってこと。これは速度域が低いとサスペンションが余り動かないこともあってゴツゴツと路面からのショックがもろに伝わってくるから。
またエンジンのレスポンスがめちゃくちゃシャープなので、それに慣れていない体や頭が付いてこないってこともある。徐々に全体的な走りに慣れてくると「おおー何という速さ!」って思う。
エンジンについてもう少し感想を述べると、とにかく元気でアクセル操作と反応は完全に一致。あやふやなところが全く無く、思い切りダイレクトなのだ。最初、うわぁーとなってもそもそ走ろうもんなら極低回転でのトルクが小さいのと粘りは余り無く、クラッチ操作を誤るとあっさりエンストする。
最もそんな走りをするマシンではないし、ある程度回転が上がっていれば吹っ飛んで行く。改良された中速域から高速域となると、それはそれは超絶パワフル! バルブサージングなんてこのエンジンには無いのでは?と思うほど伸びて行くし、それでいてかっぽじる事が無く前に前に加速する。250ってこんなにパワフルだっけ?と思う瞬間である。
何しろレスポンスがシャープなので、体が遅れてしまうとフロントが浮いて来るか押さえが効かずに暴れてしまう。とここで車体がスリムでフラットになったシートなどにより、車体にピッタリフィットしてニーグリップを意識しなくても自然と押さえられ、また押さえるために体を前に移動させるのも楽ということに気づいた。
こうなるとアクセルを開けられる。開ければ開けるほど車体は安定して飛んでいく。と言っても筆者レベルではレーシング速度まではいかないが。
それでも速度が上がるほどにサスペンションも良く動いてくれて、意外にも車体は安定してくれるのだ。開けている時でも、ブレーキングしている時でもラダーからの入力に素直に反応して曲がってくれるのが素晴らしい。そんなに大ジャンプはしていない(出来ない)が、体重が重い筆者なので着地ではほぼフルストロークした。しかし、跳ね返りや左右に振られるなんてことは皆無であった。自分なりに思い切り飛んでも安心していられるサスペンションの出来は素晴らしい!
曲がる事に戻るが、これはフレームのねじれ挙動をチューニングした効果が現れているのだろう。私レベルでも分かるほどに曲がるし、荒れた路面でも回頭性が素直で狙ったラインに乗ってくれたから。
ブレーキの効きは高く、握り具合でロックまで感覚が伝わるコントロール性の良さもある。あえてホースの剛性をダウンさせたリヤブレーキも、プアな感じはまるで無く効きは強力であった。ロックするまでの踏み具合がより分かりやすくなったという感じ。
短い試乗時間なので、トラクションコントロールのオン・オフなど試せていないが渡されたオフのままでもグリップ性能は高かったし(路面はドライ)、不意にリヤが流れたりもしなかった。
全体的な印象はもう完璧なるレーサー!勝利を目指す若きレーシングライダーには最高のマシンだが、週末エンジョイライダーの中でも初心者にはちょっと過激過ぎるとも思う。ある程度経験があってそこそこ走れるライダーなら、上達するためには素晴らしいマシンだろう。
ここ数年エンデューロマシンには相当数乗っているが、やはり完全なモトクロッサーは一段上の性能と感じた。のんびりトコトコならどんなコースでも走れるでしょ。なんて感覚では振り回されると思う。それなりの速度で走らないと活かせないと思う。そんなYZ250Fの2024年モデルであった。
ディテール解説
ヤマハ・YZ250-F/主要諸元
ヤマハ・YZ250-F 車体打刻型式/原動機打刻型式:CG51C/G3L4E 全長/全幅/全高:2,180mm/825mm/1,275mm シート高:970mm 軸間距離:1,475mm 最低地上高:350mm 車両重量:105kg 原動機種類:水冷, 4ストローク, DOHC, 4バルブ 気筒数配列:単気筒 総排気量:249㎤ 内径×行程:77.0mm×53.6mm 圧縮比:13.8:1 始動方式:セルフ式 潤滑方式:ウェットサンプ エンジンオイル容量:0.95L トランスミッションオイル量:- オイルタンク容量:- 燃料タンク容量:6.2L(無鉛プレミアムガソリン指定) 吸気・燃料装置/燃料供給方式:フューエルインジェクション 点火方式:TCI(トランジスタ式) バッテリー容量/型式:12V, 2.4Ah(5HR)/BR98 1次減速比/2次減速比:3.352(57/17)/3.846(50/13)/ クラッチ形式:湿式, 多板 変速装置/変速方式:常時噛合式5速/リターン式 変速比: 1速:2.142(30/14) 2速:1.750(28/16) 3速:1.444(26/18) 4速:1.222(22/18) 5速:1.041(25/24) フレーム形式:セミダブルクレードル キャスター/トレール:26° 55′/119mm タイヤサイズ(前/後):80/100-21 51M(チューブタイプ)/110/90-19 62M(チューブタイプ) 制動装置形式(前/後):油圧式シングルディスクブレーキ/ 油圧式シングルディスクブレーキ 懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム(リンク式) 乗車定員:1名
村岡 力/プロフィール
1956年生。
70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。2輪メインですが4輪もし時々航空関係も。モータースポーツは長年トライアル1本で元国際B級。
現在は172cm85kgの重量級。業界ではジッタのアダ名で通ってます。