キャブレターから盛大にガソリンが溢れてくるオーバーフロー状態になっていたモーターファンBIKES編集部員山田のAA01スーパーカブ。このままでは動かせないので、何はなくてもキャブレターを外してオーバーフローする原因を探ろう。ところが山田はなかなかのメカ音痴。特に初見のバイクを前にするとトラブルを起こすのは毎度のこと!ということで筆者が指導しながらキャブレターの脱着から清掃(オーバーホール)するまでの工程を山田自身に経験してもらうことにした。
スーパーカブの特徴であるレッグシールドは走行風が下半身に当たらず疲労を軽減してくれるだけでなく、女性にも親しみやすくするためエンジンなどのメカニカルな部分を隠す目的もある。メンテナンスするには左右に空いているホールからでも可能で、プラグ脱着やキャブ調整くらいならレッグシールド越しに行える。だが、今回のようにキャブレターを外すような場合、レッグシールドを外さなければならない。左右ともに3本のボルト・ナットで固定されているので、早速外そう。ここで注意したいのが、下側にあるロングボルト。レッグシールド内側にボルトを受ける円筒の部品があるので、紛失しないように気をつけたい。
実は過去に山田もチャレンジしたのだが、ボルト・ナットを外してもレッグシールドをどっち方向に抜けばいいかわからなかったそうだ。レッグシールドは樹脂製なので柔軟性がある。そこで上側を両手で広げてあげるとヘッドライトケースと干渉せずに持ち上げることができる。そのままシート側に起こすようにして車体から取り外そう。
年式によりエアクリーナーボックスのカバーがレッグシールド中央にあるモデルもあるので、その場合はレッグシールドを外す前にエアクリカバーを外そう。今回のAA01はレッグシールドを単体で外せる。するとフレームにぶら下がるようにエアクリーナーボックスが固定されている。ボックスは左右2本のボルトでフレームに固定されているので、そこを緩めて外せばいい。ところがこの個体はフレームに固定しているボルトの右側がカラ回りしてしまい、外すこともしっかり締めることもできない。そこでボックス下側に4本あるボルトを抜いて分離することにした。
ボックス下のボルトを抜いたらキャブレターと連結している部分にあるバンドを緩めよう。プラスドライバーを当てて反時計回りに回すとバンドが広がりゴムのパイプを動かすことができるようになる。
ゴムパイプが緩んでも、そのままではボックス下を抜くことはできない。ハンドルを切って空間を作り、ボックス下をクルリと回転させる。すると下側に装着されたままエアクリーナーが姿を現す。この時点でエアクリーナーの汚れ具合を確認して、あまり汚れていなければそのまま使用する。汚れが目立つようなら新品に交換しよう。エアで汚れを落とす行為はカブの場合ご法度で余計に詰まってしまうから交換が前提だ。
ボックス下側を回転させれば干渉するものがなくなるのでキャブレターから引き抜くことができる。接続部のゴムパイプがキツイようなら、もう一度バンドを緩めて試してみよう。ゴムパイプを広げながら抜くとスムーズに作業できる。
続いてキャブレターに接続されている2本の配線を引き抜く。これは寒い日に走行していてキャブレター内のガソリンが気化しにくくなるアイシングを防止するためのキャブヒーター。寒い日に走行している最中でエンジンが止まってしまうような現象が確認できたら、このキャブヒーターの不調を疑おう。
さらに車体左側へ移ってチョークワイヤーを外す。右上にあるプラスネジを緩めるとワイヤーが外れるので、キャブ側へワイヤーを引っ張ることで先端のタイコ部分を抜くことができる。
チョークの後ろ側に細めのホースが接続されている。これはキャブ内のフロート室にガソリンが溜まり続けて適切にエンジンへ流れなくなった場合に、ガソリンを逃すオーバーフロー用のパイプ。丸いバンドをラジオペンチで広げながらホースを引き抜く。ホースが硬く外しにくい場合、無理に外そうとするとゴムホースがちぎれる、破損する場合もあるので、少し温めて外しやすくしてあげよう。
左下にある燃料コックへつながる2本のホースが燃料タンクとつながっている燃料ホース。上と下でオンとリザーブに分かれているので、上下どちらかわかるようにホースを逃しておくようにする。今回はマイナスドライバーで強引に隙間を作って抜いたが、ホースを痛める原因にもなるので力加減に注意したい。ホースリムーバーやホースリムーブプライヤーと呼ばれる工具があるので、それらを使えばスムーズに作業できる。
ホースを抜くと燃料コック内に溜まっているガソリンが溢れてくる。受け皿を用意してガソリンを垂らさないようにしよう。もしくは燃料コック下にある六角頭のカバーを緩めてガソリンを抜くこともできる。
キャブレターのトップにスロットルワイヤーが接続されている。ここはキャップに突起があり手で回すことができるので工具なしで外すことができる。内部にはスプリングの中を通るワイヤーがスロットルバルブと連結されているので、真っ直ぐ上へ持ち上げて傷をつけないようにする。
残りはインテークマニホールドにある2本のボルトを緩めて、キャブレターとの接続を解除する。間に挟まっているインシュレーターごと外れる場合もあるので、紛失しないように気をつけよう。
これにて無事にキャブレターを外すことができた。次回はいよいよキャブレターを分解して内部を確認する。外見はそれほど汚れていないから、内部でどこか詰まっているのだろうと予測できるが、果たしてどのような事態になっているのかお楽しみに。またキャブレターを元に戻す場合は、逆の手順で作業する。
次回は、キャブレター本体を分解し、洗浄していく。