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CFMOTO パピオXO-1……34万9800円
2023年のもて耐で感じた驚き
ここ数年間で、社名を耳にする機会が徐々に増えている中国のCFMOTO。最も新しいニュースとしては、2023年9月にヤマハと合弁会社の契約を結んだことや、同年秋のモーターショーで500cc並列4気筒車と675cc並列3気筒車を発表したことが有名だが、2輪事情に詳しい人なら、2013年から始まったKTMとのパートナーシップ、2022年からエントリーを開始したMotoGPのMoto3クラスにおける活躍(これまでに3度の表彰台を獲得)などをご存じだろう。
ちなみに、僕のCFMOTO初対面は2023年のもて耐で、輸入元のKURE35茂原ベースとLandscape racingが走らせた250SR-Sの大健闘に驚きを感じた。と言うのも真夏の炎天下の中、中国製のバイクがノントラブルで7時間を走り切ったことが個人的には意外だったし(序盤で転倒はあったものの、メカニカルトラブルは皆無)、他機種では交換が当たり前になっているラジエターとリアショックがノーマルでイケたという事実も、感心に値することだったのだ。
ただしそれ以上に驚いたのは、もて耐後にインターネットで確認したCFMOTOの規模かもしれない。1989年に部品メーカーとして創業した同社が、モーターサイクルの生産を開始したのは2000年代中盤(スクーターは1998年から)のようだから、歴史という面では日欧米の老舗にまったく及ばないのだけれど、現在のCFMOTOは250~800ccを中心にして、すでに約30機種ものモデルを販売しているのだ。
ライバルとは異なる独自のスタンス
そんなCFMOTOのボトムレンジを支えているのが、前後12インチのパピオシリーズである。その第1弾として2020年に登場したSTがストリートファイターだったのに対して、2023年から発売が始まった第2/3弾のXO-1とXO-2は、倒立式フォークやセンターアップマフラーを導入しながら(STは正立式フォーク/ダウンマフラー)、どことなくレトロな雰囲気の外装を採用。こういった展開は、2013年に発売したグロムを基盤として、多種多様なクラシックウイングマークシリーズを展開している、近年のホンダの125cc水平単気筒車を思わせるところがあるけれど……。
XO-1とXO-2はいわゆる懐古主義的なモデルではないし、同社はパピオシリーズの最新作として、2023年夏にEV仕様のNOVAを発表しているのだ。当記事を書くにあたってそのあたりの事情を把握した僕は、ホンダとは方向性が異なる、CFMOTOの勢いと先進性を実感することとなった。
余談だが、NOVAを除くパピオシリーズに対して、当初の僕は誠に失礼ながら、10年以上前に生産が終了したホンダ・エイプとの類似性を疑っていたのだけれど、パーツリストを調べてみると、スチール製バックボーンフレームもシリンダーがほぼ直立した空冷単気筒エンジンも完全な別物。また、今回の試乗で使用した車両は中国仕様だが、すでに導入が始まっている日本仕様は原付二種としての登録を可能にするため、排気量を126→124ccに縮小している。
往年のNSR50/80やTZM50Rに通じる資質
さて、前フリが長くなったが、ここからはXO-1のインプレである。まずは率直な印象を述べると、市街地と峠道を数時間ほど走った僕は、これは全然アリだなあ……と思った。誤解を恐れずに表現するなら、振動やメカノイズ、前後サスペンションやブレーキの動きなどに気になるところは見当たらず、ホンダのグロムやクラシックウイングマークシリーズと大差ない感覚で、実に気持ちよく走れたのだ。
いや、それだけでは言葉足らずか。低めのセパハンと後方に設置されたステップのおかげで、このバイクはスポーツライディングに没頭しやすいのである。具体的な事例を記すなら、前輪の接地感が引き出しやすく、アクセルが開けやすく、加減速時の挙動変化にスムーズに対応しやすいので、6速ミッションを駆使してコーナーを攻めるのが楽しい。そしてそういったフィーリングは、往年のNSR50/80やTZM50Rなどに通じるところがあるような……?
と言っても、XO-1のキャラクターは決してスパルタンではない。乗車姿勢がスポーティでも基本的な特性はフレンドリーだから、セパハンが苦手な人以外は気軽に付き合えるだろう。なおホンダの125cc・前後12インチ車と比較するなら、XO-1は車格がわずかに大柄で、エンジンはやや高回転指向だが(軸間距離は1214mm、車重は114kgで、最高出力/発生回転数は7kw/8250rpm。グロムは、1200mm、103kg、7.4kw/7250rpm)、同条件で比較しない限り、車格やエンジン特性に不満を感じることはなさそうだ。
そういった資質に加えて、ライバル勢を大幅に下回る34万9800円という価格も、パピオシリーズの魅力である(現在のホンダ製125cc・前後12インチ車の価格は、グロム:39万8000円、モンキー125:44万円、ダックス125:44万円)。もっとも近年の為替の推移を考えると、今後は変更の可能性があるのだけれど、XO-1ならではの魅力を実感した今現在の僕は、たとえ価格が数万円ほど高くなったとしても、このモデルの魅力は揺らがないと感じている。
ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)
コンパクトではあるけれど、ライディングポジションは決して窮屈ではない。ただし、セパレートハンドルのグリップ位置は低く、ステップは適度に後退しているので、この種の乗車姿勢に不慣れな人は手強さを感じそう。シート高はホンダの125cc・前後12インチ車より20~30mmほど低い740mmなので、足つき性はかなり良好。
ディティール解説
主要諸元<中国仕様>
車名:パピオ XO-1
全長×全幅×全高:1748mm×683mm×963mm
軸間距離:1214mm
最低地上高:150mm
シート高:740mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
総排気量:126cc
最高出力:7kw(9.5ps)/8250rpm
最大トルク:9.2N・m(0.94kg-m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式
懸架方式後:直押し式モノショック
タイヤサイズ前:120/70-12
タイヤサイズ後:130/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:114kg
燃料タンク容量:7L
乗車定員:2名