CBR150R試乗記|ホンダCBRブラザーズのなかで、150ccがいちばん楽しいかも!

シルバーバックがタイから輸入販売する150ccスーパースポーツ、CBR150R。軽量コンパクトな車体とジャストパワーで「フルスロットルの快感」を満喫しよう!

REPORT●宮崎正行(MIYAZAKI Masayuki)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
問い合わせ●https://silverback-mc.co.jp

ホンダCBR150R……547,800円

兄と弟、そのスタイリッシュさに差はない

メインカラーは赤、差し色に青と白。スカッとさせてくれるトリコロールカラーがスタイリッシュなこのマシンは、CBR150Rだ。

いよいよ顔つきがアニキのCBR250RRにそっくりになった弟分、インドネシア生まれ/タイ仕様の小排気量スーパースポーツ「CBR150R」に試乗した。もし兄弟の2車が並んで停まっていても、もはや遠目にはどちらが250ccか、もしくは150ccかなんてほぼ区別がつかないくらいの近似値のフォルムだ。そのくらい弟は急激にオトナびた。いや、ややもすると「これ、新しく出た600ccですよ」と言われたところで「そうなのか」と思ってしまいそう。そのくらいCBR150Rの外装はクラスレスなのである。

そんなCBR150Rはどんなバイクなのだろうか?

さっそくあらましを説明しよう。

ホンダの国内ラインナップに長らく加えられなかったこともあって、CBR150Rというバイクの存在を知っている国内ライダーははっきり言って少ない。それでも車両ヒストリーは意外と古く2002年にタイホンダが製造/発売し、その後2016年からインドネシアのPTアストラホンダが生産を引き継いでいる。アジア圏において150ccクラスは人気のカテゴリーなので、各メーカーこぞって気合いの入ったモデルが投入されているのだが、そのラインナップの中でもCBR150Rはもっともスポーティなモデルという位置付けになる。

プライスもウェイトも“軽い”CBR150R

輸入販売するシルバーバックのプライスボードには「54万7800円」が掲げられている。かつてほど「安くてステキだなぁ」という感じではなくなったのは正直な感想だが、ひとえにそれは為替(円安)の影響である。冷静に考えれば、国内モデルのCBR250RRのプライスが「90万7500円」(トリコロールカラーの「グランプリレッド」)ということ考えると、まだまだリーズナブルと言えるだろう。

プライス以外のスペックに目を向ければ、CBR250RRのウェイトが168kgに対してCBR150Rは139kgと29kgも軽い。前後それぞれマイナス10mmタイトなタイヤサイズを含め、取りまわしはCBR150Rの方が確実に優れている。まだまだ中古車が出回っていない状況をかんがみても、長めのローンで新車を購入するのが吉かもしれない。

朗報、ライポジはアグレッシブではなかった

さて、またがってみよう。

まず足着きがいいのが嬉しい。身長172cmで両足がきちんと着地する。スーパースポーツ系マシンに“ベタ足”を望むのはナンセンスと強がりつつ、やっぱりこれはこれで嬉しいしありがたい。そのぶんだけで気軽にバイクと向き合えるというものだ。両手でハンドルを握ってみると、上半身は拍子抜けするくらい前傾しない。もちろんネイキッドマシンほどアップライトではないものの、「これじゃあキツい、無理」とはならなかった。

そしてエンジンスタート。水冷単気筒の排気音はとてもサイレント。シングルらしい歯切れのいいサウンドを残しつつ、ボリューム自体はあくまで静かに設定されている。発進直前には「このおとなしい音量のままにトルクも細いのかな?」といぶかしがったが、なんのことはない、クラッチミートからとても扱いやすくスッと前に出てくれるので頼もしい。これなら街中のスタートシーンで気遣いはいらないぞ。エンジン音に聞き耳を立てつつ丁寧にゼロ発進、みたいな小排気量車あるあるとは無縁のCBR150Rだったのだ。

低速から中速へ、エンジンのピックアップも小気味いい。ドン! とトルクフルとは言えないものの、一方でパワーがぜんぜん足りないとも思わせない。それどころか、5速50km/hからきちんと加速してくれるのには少なからず驚いた。そんなフレキスブルさを体感しながら(さすがホンダらしい……)と車上でひとり言。ビギナーにとってもスーパースポーツに慣れていないライダーにとっても、この扱いやすさ/ジェントルさには拍手だろう。

ちなみにタイの本国サイトにおいては最高出力が非公表になっているが、ほぼ同じエンジンを積んだインドネシア仕様のCBR150Rが17.1馬力(公表値)であることをおもんぱかると、試乗しているCBR150Rも大差ないだろう。数値にインパクトはないが、実用に関しての問題はほとんどない。

気負いのないぶん、アニキたちよりもナチュラル

ハンドリングはきわめて素直なもので、違和感いっさいナシ。車体を傾ければスッと自然に舵角がついてくれる。前傾がキツくないのでハンドルに体重を乗せてしまうことも少ない(筆者やりがち)。ライトウェイトな車重を支える前後のサスペンションは淡々と仕事をこなし、けっして高級ではないが、これで十分という適度なフィーリングと接地感だ。タイヤもグリップ命というキャラではないものの、過度にタイヤに頼らないぶん無理なライディングをせずに済む。ニュートラルって素晴らしいね。

右に左にスパッ、スパッと向きを変えてくれる軽やかなハンドリングに、遅れをとることなく呼吸を合わせていけるのが小気味いい。クローズドコースで試したわけではないので限界は未知数だけれども、それでもワインディングなどでは気負いなくボディを倒し込むことができる。頑張りすぎは禁物だけど、筆者レベルのライダーでさえ少し深めのリーンが怖くないのだ。道路状況や路面コンディションを見極めつつ、積極的に攻めていきたくなる……これはちょっと、いや、かなり愉快かも。ABS付きディスクブレーキの効きもナチュラルで、握った応分に制動パワーが増す素直なものだった。

2気筒で42馬力を発揮するパワフルなCBR250RRの方がなんとなく偉そうに感じてしまうのは、80年代を生きたアラフィフだもの、仕方がない。でも2020年代のいま色眼鏡なしでCBR150Rと向き合ってみると、単気筒150でしか味わえない等身大のライディングワールドがそこにあった。大げさだって? いやいや、そんなことないのよ。レッドゾーンまでエンジンを回すことでしか得られない充足感に、問答無用のプレジャーがあることを発見してほくそ笑んでいる自分がいる。いまさらかもしれないけれど、これが本音。バイクのパフォーマンスは「誰にとってか」がいちばん大切。乗って愉快かどうかの物差しは個人のものである。

このCBR150Rには、フルスロットル特典がもれなく付いています!

ライディングポジション(身長172cm 体重70kg)

スリムな車体ゆえ足着きもグッド。前のめりなルックスのわりにライポジはアップライトなので上半身にも余裕が生まれる。シート高は788mm。

ディテール解説

ヘッドライトやテールランプはCBR250RRデザインの流れを汲むシャープなフォルムが特徴。もちろん灯火類はすべてLEDを採用している。
反転表示とともに各所でレッドをあしらったフルデジタル液晶メーター。視認性のいい先代デザインをそのまま踏襲し、燃費計やギヤポジションインジケーターも標準で装備する。
ショーワ製の「SSF-BP」は、左右で異なる構造と機能を持たせたフロントフォーク。大排気量の高性能車を中心に装備されているハイメカニズムだ。アシスト&スリッパークラッチ採用。
制動フィールの優しさがビギナーに嬉しい、ウェーブタイプのABS付きディスクブレーキを搭載する。片押し2ポットキャリパーと組み合わせられる。
149cc水冷DOHC4バルブ単気筒エンジンを搭載し、ミッションは6段でクラッチは湿式となる。タイホンダは未公表だが、インドネシア仕様では17.1ps/9000rpm。
タンデムシートを取り外すとコンパクトな収納スペースが出現。車載工具が収められている。
左右ステップにはやや厚めのゴムが敷かれる。ヒールガードはスポーツライディング時のステップワークで重宝するだろう。
リヤのサスペンションはリンク機構付きシングルショックタイプを採用。減衰調整(プリロードアジャスター)も装備する。
消音効果の高いサイレンサーにより、結果的に単気筒らしいサウンドが際立っている。音量自体もしっかりと抑えられており早朝などでも気遣いはいらない。
リヤブレーキにはフロント同様にウェーブタイプディスクブレーキを採用する。こちらもA B Sあり。スイングアームはスチール製。

主要諸元

車名:CBR150R
全長×全幅×全高:1983mm×700mm×1090mm
シート高:788mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:DOHC
総排気量:149cc
ボア×ストローク:57.3×57.8mm
最高出力:-kW(-PS)/-rpm
最大トルク:-N・m(-kgf・m)/-rpm
点火方式:フルトランジスタ式
始動方式:セルフスターター
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:6段リターン
懸架方式前:テレスコピック倒立式
懸架方式後:スイングアーム式・シングルショック
タイヤサイズ前:100/80-17
タイヤサイズ後:130/70-17
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:139kg
燃料タンク容量:12.0ℓ乗車定員:2名

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著者プロフィール

宮崎 正行 近影

宮崎 正行

1971年生まれ。二輪・四輪ライター。同時並行で編集していたバイク誌『MOTO NAVI』自動車専門誌『NAVI CAR…