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HySE-X1(ダカールラリー2024出場車)
「HySE」とはメーカー間の垣根を取り払い、水素燃料エンジンの研究を行う組織
広島で開催されたG7サミット開幕の二日前、2023年7月17日に「HySE(ハイス)」設立に関する報道関係者説明会が東京で開催。記者会見は、「水素小型モビリティ・エンジン研究組合」発足についての概要を知らせる内容だった。
「HySE(ハイス)」とは、「Hydrogen Small mobility & Engine technology」の略で、水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合を指す。ライバル関係にある国内各社の垣根を取り外し、強力な協力関係のもと、水素を燃料とする小型モビリティ用エンジンの研究を行うのが目的だ。
「HySE(ハイス)」は正組合員である国内の二輪メーカー(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキ)4社に加え、すでに高い技術知見を持つトヨタと川崎重工業が特別組合員として参画中。組合員である各社が協調しながら、水素小型エンジンの実現と普及に向けた研究活動を進め、脱炭素社会に向けて取り組んでいる。
HySEが研究開発した、ダカールラリー出場仕様の水素エンジン車「HySE-X1」
サウジアラビアで開催された「ダカールラリー2024(2024年1月5日~19日開催)」に出場した「HySE-X1」は、協力会社であるオーバードライブレーシング社(ベルギー)の車体フレームをベースとしたラリー専用車。
水素燃料タンクや燃料供給系統の設置のためのレイアウト変更を行った車体に、HySEが研究活動に用いているモーターサイクル用水素燃料エンジンを搭載。現地での出走にかかる給水素やメンテナンスなどの作業も、オーバードライブレーシング社の協力のもと行った。
「HySE-X1」は、2024年大会の新カテゴリー『Mission 1000』に出場。『Mission 1000』は、水素エンジン、電動、バイオフューエルとのハイブリッドなど、カーボンニュートラルに向けた次世代パワートレインの技術開発を自動車メーカーに促す、「Dakar Future Program」の一環として2024年、新たに導入。
HySEはこの『Mission 1000』に参加し、世界一過酷なモータースポーツと言われる厳しい環境条件下で研究中の水素燃料エンジンを搭載した「HySE-X1」を実走行。小型モビリティにおける現状未知で、かつ容易に想像できない課題を早期に抽出し、水素エンジンの基盤技術構築を加速化。
また世界で注目されるダカールラリーへの参加を通じ、HySEのプレゼンスや取り組みをアピールすることで、小型水素モビリティの実現に向けたグローバルで業界の垣根を超えた仲間づくりを図った。
ダカールラリー2024の『Mission 1000』のカテゴリーで「HySE-X1」は、4位で見事完走。日本の水素燃料エンジンの耐久性やポテンシャルの高さ、そして将来への可能性を世界に披露した。
「水素エンジンで過酷なダカールラリーに出場なんて確かにクレイジー。でも我々は挑み続ける(モリゾウ)」
今回水素エンジンを搭載した「HySE-X1」でダカールラリーに挑んだHySEに対し、ラリー主催者側からは、「過酷なレースで誰もやらないことをやり、自分たちで世界を変えようとしている。いい意味でクレイジーだ」との言葉が贈られた。
水素エンジン搭載のカローラを駆り、“モリゾウ”の名で数々の国内レースに参戦してきたトヨタの豊田章男会長は、
「水素エンジンで“世界一過酷”とも呼ばれるダカールレースに挑むなんて、確かにクレイジー。でも挑戦し続ける価値は大いにある。これからも一緒に未来を築いて行きましょう」とコメントした。
HySE-X1 主要スペック
全長×全幅×全高:3,530mm × 2,070mm ×1,700mm
車両重量:約1,500kg
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク直列4気筒DOHC 4バルブ/スーパーチャージドエンジン
総排気量:998cc
ヤマハ YXZ1000R H2 HYDROGEN ENGINE(参考出品)
オートサロン初出展となる国内二輪メーカーのヤマハ。写真は同社ブースに参考出品された四輪バギー。水素用直噴インジェクターを使用し、CO2を排出しない100%水素エンジンを搭載。走行時のサウンドや振動など、内燃機関の持つ魅力を未来につなげるため、ヤマハではその可能性を探求中だ。