国内で身近になりつつある水素エンジンで「中国・欧州勢」のEV至上主義に挑む!その挑戦に国内メーカーの“闘魂“を見た|ジャパンモビリティショー2023

2030年代前半の市販化を目指して、Ninja H2のスーパーチャージドエンジンをベースに開発が進められているカワサキの水素エンジン。
2023年10月28日(土)~11月5日(日)まで開催(一般公開)されたジャパンモビリティショー(旧:東京モーターショー)。今回のショーではモーターとバッテリーで駆動するEV(電動車)が最大の注目。そんな中、“次世代の燃料”となる水素エンジン搭載モデルも出品された。東京都内では、すでに燃料電池(FCV)を使った水素バスも多数運行。国内における水素エンジンの現況、世界の常識に挑む国内メーカーの挑戦や奮闘、水素エンジンの将来性をレポートします。
PHOTO/REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)

水素小型モビリティエンジン研究組合「HySE(ハイス)」の設立など、国内メーカーの水素エンジン実用化のチャレンジは続く

ハイブリッドを含む内燃機関(ガソリンエンジン)を使いつつ、徐々にEV(電動)化を進めていくことが必要なのでは? この考えを元に、これまでトヨタが独自に開発を進めてきたのが、内燃機関を使った「水素エンジン」の実用化。

このトヨタの考えやチャレンジスピリッツに賛同したのが、国内の大手企業「カワサキ(川崎重工業)」「マツダ」「スバル」「ヤマハ」「電源開発(J-POWER)」「岩谷産業」など。また2023年、国内4大バイクメーカーが、水素小型モビリティエンジン研究組合「HySE(ハイス)」を設立。カーボンニュートラルの実現に向け、国内各社は水素エンジン実用化への挑戦を続けている。

2030年代前半の市販化を目指して、Ninja H2のスーパーチャージドエンジンをベースに開発が進められているカワサキの水素エンジン。同エンジンはEICMA2022にて初出展された。

ヤマハ 研究用スクーター(水素エンジン搭載)……参考出品

ヤマハ製の原付二種スクーター用をベースに、水冷4ストローク単気筒SOHC 4バルブ124ccの水素エンジンを搭載。
ボディサイズは全長1960mm×全幅795mm×全高1195mm。車両重量は217kg。
リア部分には大型の水素タンクを搭載。

写真はヤマハブースに出展された、水素エンジン搭載の研究用スクーター。ヤマハが開発したこの車両は、2023年5月に設立された、水素小型モビリティエンジン研究組合「HySE(ハイス)」の研究活動用に製作されたもの。

ヤマハは二輪への水素エンジン適用に当たり、ポピュラーかつ、HySEの研究スピードを加速させやすいという理由により、4ストローク単気筒124ccを採用。リア部分には大型の水素タンクが搭載されている。

研究用スクーターの水素タンク部。
マフラーの外観はガソリンエンジン車と同様。
サイドカバーには水素を意味するH2のロゴを配置。

市販車やサーキット仕様車など……水素エンジンを搭載した自動車たち

ジャパンモビリティショー2023に展示された、トヨタが開発したレース仕様の「ORC ROOKIE GR Corolla H2 Concept」。GRカローラのシャシー&ボディに水素エンジンを搭載。この車両は「2022年スーパー耐久シリーズ ST-Q クラス」に参戦。ガソリンエンジンと同じタイプの“排気音”が出るのも特徴。
水素エンジンを搭載したレース仕様のカローラスポーツ(2021年の模様)。エンジンは水冷4スト直列3気筒ツインカム1618ccインタークーラーターボ。同車はガソリンエンジンの燃料供給系と噴射系を変更し、水素を燃焼させるシステムを導入。水素を動力とした新型モデル「ミライ」の70MPaタンクを流用し、圧縮気体水素を燃料として使用。

トヨタは2021年より、水素エンジンを搭載した写真のカローラで、「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」「スーパー耐久シリーズ」などのレースに参戦。EV化を推進すると同時に、水素エンジンの実証実験も積極的に行っている。

トヨタが進める「水素エンジン」は2種類あり

ガソリンエンジンと構造がほぼ同じタイプ

トヨタが進める「水素エンジン」は2種類。1つ目は、ガソリンの代わりに水素を燃料とした、上記のレースカーに搭載されたタイプ。燃やす(爆発させる)燃料がガソリンではなく、水素であること以外は、基本的に構造はガソリンエンジンと同じ。水素エンジンは、既存のガソリンエンジンがほぼそのまま流用できるのが特徴。

ポイントは、ガソリンエンジンも発生するごく微量のエンジンオイル燃焼分を除き、走行時に出るのは水蒸気(水)のみ。電気自動車(EV)と同じく、CO2は発生しない。

水素エンジンは、かつてドイツのBMWや日本のマツダも熱心に研究していた。しかし水素の貯蔵が難しく、ガソリンスタンドの代わりとなる「水素ステーション」の設置に数億円という巨大なコストが発生。これらがネックとなり、2023年現在、まだ普及していない。

「水素と酸素」で発電し、モーターを動かす燃料電池タイプ(FCV)

燃料電池車(FCV)を採用したトヨタの市販モデル「ミライ」。

2つ目は、「水素と酸素」で発電し、モーターを動かす燃料電池車(FCV)。国内では市販車のトヨタ・ミライに採用されている。

燃料電池車(FCV)は水素と酸素を化学反応させ、水にする段階で電気エネルギーを発生させるシステム。電解質を溶かした水に電流を流すと、水は酸素と水素に分解。燃料電池車は、この逆のしくみを利用している。

燃料電池車(FCV)は、リチウムイオンバッテリーに電気を蓄えておく電動自動車(EV)とは異なり、車内に発電装置を設けたタイプ。車両に搭載した燃料電池内で発電し、モーターを動力にして走行するのがポイントだ。

電気自動車(EV)と同様に、燃料電池車(FCV)は有害物質の排出なし。発生するのは水のみだ。長時間充電が必要な電気自動車(EV)とは異なり、短時間で燃料である水素の充填が可能。また、一回の充填による走行距離が電気自動車(EV)より長いのが特徴。

ただしガソリンスタンドの代わりとなる「水素ステーション」の設置には、数億円という巨大なコストがかかる。そのために燃料電池車(FCV)は2023年現在、大きな普及に至っていない。

燃料電池車(FCV)のイメージ。水素と酸素を化学反応させ、水にする段階で電気エネルギーを発生させるしくみ。
ストリップ状態のミライ。黄色い部分が水素タンク。

知ってるようで知らない!? トラックやバスにも水素を利用した「燃料電池車(FCV)」が活躍中!

日野自動車ブースに展示された「燃料電池(FCV)」の大型トラック。
上記トラックの貨物部に表示された「水素」「H2」のロゴ。“燃料電池車(FCV)”を採用した東京都内の乗り合いバスにも、「水素」「H2」のロゴが多数表示。

トヨタのトラック・バス部門を担う日野自動車は、上記の市販車「トヨタ・ミライ」が搭載する“燃料電池車(FCV)”を積極的に展開。特に東京都内では2023年現在、「東京都交通局」「京浜急行バス」「日立自動車交通」「東急バス」「京王電鉄バス」「京成バス」「ジェイアールバス関東」などが、燃料電池(FCV)を使った水素バスを運行している。

これらのバスの多くには、ボディに「水素」「H2」のロゴデザインをレイアウト。水素エンジンは、人々の日常の足として徐々に身近なものになりつつある。筆者は時々、これら“燃料電池車(FCV)”のバスを利用するが、乗り心地は化石燃料車とまったく変わりなく、音は非常に静かだ。

燃料電池車(FCV)で走る乗り合いバス。
燃料電池車(FCV)で走る東京都内の乗り合いバスの多くには、ボディに「水素」「H2」のロゴを表示。写真はイメージ。

水素ステーションは全国で164個所あり(2023年1月現在)

千葉県千葉市にある千葉北水素ステーション。

水素の充填は、ガソリンスタンドの代わりとなる「水素ステーション」で実施。2023年1月現在、全国の商用水素ステーションの設置数は164。政府による成長戦略の原案では、2030年までに燃料電池車の燃料を補給する水素ステーションを1,000基整備する目標を掲げている(日本経済新聞より)。

写真は筆者の自宅からクルマで約10分の距離にある「千葉北水素ステーション(千葉県千葉市)」。ちなみにここは、元々ガソリンスタンドだった場所。水素を燃料としたバイクや自動車が身近になる日は、特に都市部及び周辺地域では、そう遠くはないのかもしれない。

千葉県千葉市にある千葉北水素ステーション。
水素を充填する機器。
出所:一般社団法人次世代自動車振興センターHP ※2023年年1月時点

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