普通2輪免許で乗れるハーレーダビッドソンX350|利便性や快適性は、現代の400ccクラスの基準に達しているのか?|1000kmガチ試乗3/3

当企画の慣例に従って★で評価してみたら、予想以上に厳しい結果に……。とはいえ、筆者はこのバイクが決して嫌いではないし、カスタムの素材として考えるなら、相当に楽しめそうな気がしている。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ハーレーダビッドソンX350……69万9800円

パラレルツインというエンジン形式で考えると、X350の競合車はヤマハMT-03やカワサキZ400。ただし丸目1灯のネオクラシック系という視点なら、ホンダGB350/S、ロイヤルエンフィールド・クラシック350・ハンター350、ハスクバーナ・ヴィットピレン/スヴァルトピレン401、トライアンフ・スピード400/スクランブラー400Xなどがライバルである。

ライディングポジション ★★★☆☆

アップライトでリラックスできる上半身に対して、ステップがかなり後方に設置されているため、下半身は窮屈。今回の試乗では序盤でヒザと足首にツラさを感じたので、シート座面からステップまでの距離を広げるべく、途中からシートのメイン部にゲルザブ+ウレタン材を装着してみたものの、窮屈さを完全に解消するまでには至らず……。もっともそういった不満を抱いたのは、筆者が大柄(身長182cm・体重74kg)だからで、小柄なライダーなら問題は感じないのかもしれない。

777mmシート高は、現在の日本で販売されている250~400ccのオンロードバイク(クルーザーを除く)で最も低い数値。だから足つき性は良好で、身長が160cm前後のライダーでも大きな不安は感じない模様。ただしシートの左右端は角張っているので、小柄なライダーは股が広げられる印象を持ちそうだ。

タンデムライディング ★★★★☆

タンデムライディングはなかなか快適。リア荷重が増加してもハンドリングへの悪影響はわずかで、加減速でタンデムライダーが揺すられる感もほとんどナシ。以下はタンデムライダーを務めた富樫カメラマン(身長172cm・体重52kg)の言葉。「跨るときはちょっと座面が高いと思ったし、乗車中はシートの左右端に微妙な硬さを感じたけど、気になったのはそのくらい。座面がフラットでシートベルトがつかみやすくて、ステップがいい位置にあるから、落ち着いて乗っていられるね」

取り回し ★★★☆☆

現代の400ccクラスの基準で考えると、195kgの車重は明らかに重く、1410mmのホイールベースは明らかに長い。とはいえ、実際にX350を押し引きした際に重さや長さを感じるかと言うと、意外にそうでもなかった。もちろんこの件に関する印象は体格や体力によりけりだが、少し前に僕が参加した他媒体の仕事、X350を含めて数台の400ccクラスを集めた比較試乗で、このモデルの車格に不満を述べる人は皆無だった。

ハンドル/メーターまわり ★★★☆☆

テーパータイプのハンドルはオーソドックスなセミアップと言うべき形状。専用設計のメーターは、昨今では少数派になりつつある指針式の速度計を採用。コンパクトな液晶モニターにはオドメーター/トリップメーター×2/時計に加えて、エンジン回転数を表示することが可能だが、近年では小排気量車でも普及が進んでいるギアポジションインジケーターとガソリン残量計は未装備。

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

左右スイッチボックスは、一昔前のヤマハやカワサキに通じる構成。ちなみにグリップラバーを含めたこのあたりのパーツは、基本設計を共有するベネリTNT249S/302S、QJモーターSRK350/400とまったく同じである。

フロントブレーキレバーとクラッチレバーの基部には、4段階のアジャスターダイヤルが備わっている。近年のアンダー400ccクラスでは貴重な装備だが、残念ながらブレーキ側は最も近い状態にしても、まだ遠い感があった。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★☆☆

独創的なデザインのガソリンタンクとシート+シートカウルは、フラットトラックレーサーのXR750がモチーフ。ガソリンタンクと内股のフィト感は良好だったけれど、シートに関してはウレタンの肉厚と前後長がもう少し欲しいと思った。とはいえシートを僕好みの形状にすると、現状のフレンドリーさとカッコよさが失われそうである。なおボディ側面に貼られたステッカーの上に、クリア塗装は施されていない。

バーがコンパクトで、ペダルに偏心式アジャスターを備えるステップは、アフターマーケットパーツのような雰囲気。前述したようにバー位置は後ろすぎる感があるものの、プレートがタンデム用と一体式であるため、これを前方に移設するためには結構なコストがかかりそう。ちなみに、兄弟車のベネリTNT249S/302Sは同じ構成だが、QJモーターのSRK350/400はバー位置が3~4本分ほど前と思えるステップを採用している。

積載性 ★★☆☆☆

積載を考慮した荷かけフックの類は一切ナシ。今回の試乗ではタンデムシートにベルトを巻き付けるタイプのシートバッグを装着してみたが、安定感はいまひとつだった。シート下に収納用と言うべきスペースは存在しないが、電装系部品でギュウギュウというわけではないので、ETCユニットは隙間に何とか収まりそう。

ブレーキ ★★★☆☆

危険を感じるレベルではないけれど、ブレーキの利きはいまひとつ。とはいえ、フロントはレバーがもう少し近かったら、リアはステップ全体がもう少し前方だったら、印象は変わってくるだろう。F;φ260mm・R:φ240mmのブレーキディスクはペータルタイプで、フロントは現代のアンダー400ccネイキッドでは珍しいダブル。キャリパーはF:対向式4ピストン・R:片押し式1ピストンで、フロントのデザインはブレンボとよく似ている。ABSは2チャンネル式。

サスペンション ★★★☆☆

フロントフォークはφ41mm倒立式で、リアサスペンションは直押し式モノショック。いずれも伸び側ダンパーが調整可能で、リアは無段階のプリロードアジャスターを装備している。今回の試乗では途中でダンパーを緩める方向でいじってみたが……、ノーマル状態からの変化は把握できても、乗り心地の向上は実感できなかった。

車載工具 ★★★☆☆

シート下に収まる車載工具は、差し替え式ドライバー、14/17mmのスパナ、リアサス用フックレンチ+エクステンションバー、トルクスレンチ×3の計6点。今どきの400ccクラスの基準で考えると、平均的な点数である。

燃費 ★★★☆☆

表と写真の数値が異なるのは、999.9kmを超えた時点でトリップメーターが自動でリセットされたから。何となく不安な気がしたので、996.5kmの時点で写真を撮っておいたのだが、実際の総走行距離は1027.9km。それはさておき、近年の400cc単気筒と2気筒の燃費は25km/L以上が一般的で、車両によっては30km/L前後をマークすることがあるので、X350の23.1km/Lは良好とは言い難い(③が良好な理由は、ガソリンスタンドの店員さんが行った給油が控えめだったから)。平均燃費から割り出せる航続可能距離は、23.1×13.5=311.85km。

ラウンドタイプのバックミラーは専用設計。ステーの長さと角度が丹精なルックスを阻害している気がするけれど、視認性はなかなか良好。

主要諸元

車名:X350
全長×全幅×全高:2110mm×──mm×──mm
軸間距離:1410mm
最低地上高:143mm
シート高:777mm
キャスター/トレール:24.8°/100mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:353cc
内径×行程:70.5mm×45.2mm
圧縮比:11.9
最高出力:27kW(36PS)/8500rpm
最大トルク:31N・m(3.16kgf・m)/7000rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:3.167
 2速:2.055
 3速:1.555
 4速:1.332
 5速:1.190
 6速:1.000
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm
懸架方式後:直押し式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:160/60ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:195kg
使用燃料:無鉛ハイオクガソリン
燃料タンク容量:13.5L
乗車定員:2名

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…