Honda 0(ゼロ)シリーズは、カーデザインの新境地を切り拓くか?【デザイナー×カースタイリング編集長対談】

ホンダが2024年1月のCESで発表した2台のコンセプトカーが話題だ。Honda 0シリーズとして「SALOON」と「SPACE-HUB」の2台が登場した。チーフデザイナハーは清水陽祐氏である。日本のメディアへの公開の前に、カースタイリング編集長 難波治がインタビューした。
PHOTO:長野達郎(NAGANO Tatsuo/New Model Sokuho)
Hondaウエルカムプラザ青山に展示されたHonda 0 SALOON。0シリーズのコンセプトを表現するために、展示会場全体が模様替えされていた。

3月4日、ホンダはHondaウエルカムプラザ青山で0シリーズが日本の報道陣に公開された。それの少し前、チーフデザイナーの清水陽祐さん(本田技術研究所デザインセンター e-モビリティーデザイン開発室プロダクトデザインスタジオ チーフデザイナー兼クリエイティブリーダー)がCar Stylingの取材に応じてくれた。インタビュアーは、編集長の難波 治である。

SALOONのドアは跳ね上げ式。

「本当にやりたかったのは、BEVを新しく解釈し直すこと」

清水陽祐さん(本田技術研究所デザインセンター e-モビリティーデザイン開発室プロダクトデザインスタジオ チーフデザイナー兼クリエイティブリーダー)

難波:今日、初めてHonda 0シリーズの実物を拝見しました。僕はCESに出たときの画像しか見てなかったんです。画像だとやっぱりわからないんですね。
清水洋祐氏(以下 清水):ホンダのデザインの本質って結構シンプルなのです、昔は。最近ちょっと色々あったのですが、やっぱりデザインは本質的にはシンプルを極めていきたい。でも、ご存じのように多分シンプルにするだけだと家電みたいになってしまうので、やっぱりクルマの躍動感とかエモーショナルな部分を、そのシンプルななかで、どう骨格として、プロポーションとして作っていくかが、今回モックアップで見ていただきたい一番のところです。

難波:はい。その感じは出ていると思います。シンプルというと、よく何もない、ツルンとしたのが出てきているじゃないですか。でも、『それじゃないよね』とデザイナーが考えたと感じました。Honda-eともまたちょっと違う。あらためて、BEVとしてデザインはどうあるべきか考えた感じがしました。
清水:よかったです。なかなかそこの……なんて言うんですかね、クオリティというか、そういったところが写真だと伝わりにくいところもあるのです。CESで来ていただいたメディアさんには書いていただいているのですが、クルマの輪切りみたいなところはかなり特徴を出しています。そのあたりでそのシンプルさと躍動感、独創性みたいなのを出していこうかなと思っています。

サイドウインドウの角度は立っていて、輪切りにすると逆台形ともいえるカタチになっている。
新生Car Styling編集長の難波 治

難波:着る服もそうですが、“定番”ってあるじゃないですか。定番って一番シンプルで一番使いやすい。あれって最初にやった者勝ちで、後に続く人たちって、すごくいいとわかっていてもそこを避けなきゃいけなくなりますよね。今回のHondaゼロはそういう意味の定番的ないい感じ。最初に使って「やっちゃったよ、ごめんね」っていう感じがHondaゼロにはしたんですけど、そういう感覚ありましたか?
清水:BEVを新しく解釈するのが0シリーズで本当にやりたかったことなのです。当然、クオリティや環境性能も踏まえると、どうしても車高は下げていかないといけない。下げればCD値も良くなってくる。ただ、そうすると当然室内の寸法はどんどん狭くなっていく。そのソリューションのひとつが、さっきは少しお話したような「輪切り」で、Hondaゼロでは、クルマのセクションの、特にサイドウインドウの傾きをかなり立てているのです。立てることによって空間の、特に乗員の頭の周りのスペースが広くなるのです。ガラスルーフもセットなのですけれど、全高を少しいじめても、空間の広がりをすごく感じるんですね。逆に、そのサイドウィンドウの立ったところから極端にサイドシルに従って絞っていく。絞っていくと何が起こるかっていうと、タイヤ、フェンダーがより強調される。なので、すごくシンプルだけれども、スポーティなクルマになるのです。最初の頃は本当に逆台形にするような勢いで……キャビンは立たせるのだけど、サイドシルにしたがって、ガーっと絞っていく、そういったところを最初のスタイリングコンセプトに置きながら、造形をしていきました。

難波:『逆台形で』だったんですね。そこまで考えていたんですね。
清水:そうですね。そこでシンプルさと、そのダイナミズム、躍動感を際立たせた。

0シリーズのもう一台のコンセプトモデルがこのSPACE-HUBだ。こちらは、まだコンセプトの段階だ。

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難波:SPACE-HUB(スペースハブ)の方が、よりスペース感を出すためにそういう考えが完全に残っていると感じました。
清水:でも体感的に感じるのは、意外とSALOONの方だと思います。乗っていただくとわかるのですが、SALOONの室内は相当広い。今回我々、特に見晴らしの良さとか視界にもすごくこだわっているので、乗った瞬間の空間の抜け感みたいなところ、そのあたりが結構特徴的だと思っています。それから、ワンモーションのフォルムですよね。

ホンダのMM思想がデザイン、パッケージングに大きな影響を与えている。

難波:日本の自動車メーカーのデザインだと、欧米のプレミアムカーのデザイン、アーキテクチャーを参考にするので、『土台はしっかりして、キャビンを小さくしていく』という定番で組み立てないと高く(価格)見えないよ」というセオリーがあるなかで、Honda  0シリーズでは、それを全部切っていこうっていう感じですよね?
清水:そうですね、BEVになったので、パワートレーンの差別化、優位性みたいなところは、少し緩くはなっていく。その上の中身で、どこまで違いを出していくか。やっぱり勝負はデザインかな、と。そこで我々が大事にしたかったのが“MM(マンマキシマム・メカミニマム)思想”です。元々MM思想を大事にしながら、先ほど少し説明させていただいたようなBEVなりの解釈を与えて……。人間の空間を最大限に活かしながら、かつ当然アコードやシビックでもやっていますけど、こんなにスポーティな外観なのに乗るとめちゃくちゃ広いみたいな。そういったところを、BEV専用プラットホームを活かしながら、さらに強くしていければと考えています。

難波:本当に組み立ての仕方というか、アーキテクチャーとしてBEVそのもので何ができるかというアプローチでやってきたっていう感じは確かにしますね。
清水:ありがとうございます。
難波:家電になりかねないようなアプローチでどうやってホンダ・ブランドを出そうとされたのですかね?
清水:最初にお話した通りで、シンプルさとダイナミズム、エモーショナルなところをどこまで高次元で両立できるかっていうところにトライしました。

難波:清水さんはこれまでずっと自動車のデザインに携わってらっしゃったと思います。自動車メーカーごとに固有のキャラクターラインをいかに入れるとか、そういうことに意外とこだわっているところがあったじゃないですか。『あのクルマはあそこが上がっているからうちは上げないでこう』とか。ホンダは、ゼロシリーズでそういうこととはもう決別したということ?
清水:そうですね。最初の頃は社内でも当然いろんな方向性があるのでスケッチで表現して、レビューをしながら、周りの意見も聞きながらやってきました。どうしてもどこかのメーカーに似通っちゃうところが出てきちゃうんですよね。特に中国などへ行くと、もうたくさんのクルマが出てきているので、どうしても足していくようなアプローチだとどこかのクルマに見えてしまう。だとしたら、ホンダのオリジナリティや一番大事にしているところってなんだろうと考えると、やっぱり“シンプルだけど独創的”。それはもう、サーフェイシングのトリートメントとか、キャラクターラインの(入れ方)、というよりは、どちらかと言えばその骨格そのもので、まずは表現できるとホンダらしさをもうちょっと作れるんじゃないかと考えています。結構(スケッチを)描きましたよ。本当。
難波:それを経てあそこに辿りついたんですね。
清水:そうですね。逆に削いで潔く、もういらないものはいらないっていう風に、必要なものだけを残していく。
難波:基本的にそれができると一番いいんですよね。
清水:誘惑は多いのですけれど……。どうしても技術的、デザイン的なところで隣の芝生を見ちゃうと、『これもいいな』なんて思っちゃうとこもあるんですけど……。

難波:Honda 0は、エアロダイナミズムもテーマのひとつだったでしょ?

清水:おっしゃる通りで、空力性能イコール電費性能に直結します。ですから、その部分の工夫も、ある意味デザインもそうなのですが、技術とうまく連携しながらやっていかないといけないなと思っています。

難波:ある程度まで前面投影面積に制限して全長と全幅を決めると、シルエットがどのクルマも似てくるはずだと思います。そうなった時に、Honda0が先頭切って新しいことをやっちゃったんで、他社のデザイナーは、「困ったな」と思うかもしれません。

清水:ありがとうございます。空力とスタイリングの観点で言うと、コンセプトレベルなのですが、リヤの視界を全部デジタルに置き換えることでルーフラインのシルエットの後端をだいぶ下げられるんです。そうすることで空力の性能を向上できるんじゃないかと我々は思っています。

難波:SPACE-HUBも輪切りでリヤウィンドウが全部潰れているじゃないですか。後方視界はカメラとモニターでいい、と割り切ったのですね。目視の必要性にこだわりはなかったですか?

清水:目視も、どちらかと言えば前側の方の、運転している時の物理視界みたいなところには相当こだわっています。一方でソフトウェアとかカメラ、センサーが付いてくるので、その部分はある意味あのままです。私もそうですが、むしろ後ろ目視してパーキングするよりも、室内の大きな画面を見て、しっかり安全を確保した上で駐車する方がよっぽどやりやすい。ドライバーよりもクルマの(センシング)性能が上がっているので、その方が安全なのかなと考えています。

難波:車庫入れも自動車駐車の方がよっぽどうまかったりする。やっぱりそこの割り切りがあって初めてあのスタイリングが成立した、ということですね。

清水:割り切りというか技術の進化だと思うんですけど。基本的にはパワーヒンジドアって言われている、簡単に言うとアウターハンドルがつかないような形にコンセプトモデルはしています。そうすることで、さっきお話したような、ぐっと下側を、サイドに向かって絞ってくるような造形も可能になってきます。実際アウターハンドルを付けると、ガラス昇降とバッティングしてなかなか絞れないところも出てきてしまいます。そういうところの技術とセットでの独創的なフォルムを開発していきたいと考えています。

難波:聞けば聞くほど、どこまでこのコンセプトカーのデザインが量産に活かされるか、期待がすごく膨らみます。

清水:はい。CESで発表したように、2026年にSALOONは発売します。楽しみにしていただければ。

難波:三部社長のスピーチで、「今のBEV、これまでのBEVが、自動運転だとつまらなくなるものだという前提でやっているところがあるけど、本当は違うんだ」というようなことをおっしゃっていました。どういうところがドライビングの楽しさに繋がる表現だと思っているのですか?

Honda 0 SALOONのステアリングホイール

清水:やっぱり「完全自動運転できればもう運転しなくていいじゃん」とか言われるんです。でも、そうなった時は、クルマは結構公共交通機関に近いようなものに代替されるのかなって思います。もうひとつは、例えばパーソナルコンピューターが出た時、どんどん人間の仕事を奪うのではないかと思われたのですが、実際は新しいモノが出てくると、もっと人間のクリエイティビティを伸ばすようなものになっています。そう考えた時に、自動運転も当然運転の煩わしさから解放する面もありますが、自動運転の技術をうまく使うことで、もっと運転自体を楽しくできる、と考えました。特に今回のコンセプトモデルはそういう将来像を描きながら作っています。ですから、よく見ていただくとわかるのですけど、ペダル類は付いていなくて、ステアリングですべて加減速を集約した操作系になっています。ある意味ゲーム的コントローラーのような扱いで、特にZ世代の方はそうかもしれないですけど、もっと簡単に、かつ自分の思った通りにクルマをコントロールできる。多分AIが黒子でしっかり支えてくれている。自分の思い通りにクルマが動いたって感覚を、より安全でより楽しくできる。それを操作系でも実現できるのかなと考えています。

難波:このようなコンセプトを一旦出してしまうと、ホンダはそういう風に将来を考えている、思っているんだなっていう意志表明になるじゃないですか。これは技術者だけじゃなくてデザイナーも加わって、将来のクルマってこうだよね、ああだよねっていうようなやり取りがあるんですか。

清水:研究所(本田技術研究所)の開発部門が本社に入ったんですけど、HGRX(先進技術研究所)は研究所の部門です。そういった先進技術、特にHMI領域、それからダイナミクスはデザインとなかなか切り分けられなくなってきている。ダイナミクスとHMIとデザインみたいなところはひとつのホンダの目指す姿をしっかりと、画面も含めて形として具現化する。ダイナミクスとHMIはHMIとデザインが三位一体となってやっていくのが、ある意味完成車メーカーだからこそできるところです。逆に言うと、感性領域は、特にホンダの強みとして考えています。色々ディスカッションもさせてもらいながら、作っています。

インテリアデザインの時代

SALOONのインテリアスケッチ
こちらが実車の写真。ステアリングホイールは自動運転モードだと収納される想定だ。

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難波:エクステリアデザインは、どうしても最初に見えちゃうので目を惹きますが、実際にはインテリアデザインも相当重要になっていると思います。インテリアのデザイナーとも一緒になってこられたんですね?
清水:実は私はインテリア領域のクリエイティブのリードをやっていまして、はい。CESで発表した2台のモデルは全体的に見ているのですが、私は元々インテリアの方も見てきました。

難波:インテリアの時代って感じ?
清水:そうですね。ただ、ぱっとまず見てもらって、共感してもらう最初の入り口は、やっぱりエクステリアデザインです。『他とはなんか違うな』って興味を持ってもらう。で、クルマに乗り込んだ瞬間に思っていたのと違う、MM思想はまさにそうだと思うのですけど、いい意味で期待裏切られる驚きがある。さらに走り出すとまた期待裏切られる。あんな大きなクルマなのにものすごく意のままに操れるみたいな。インテリアの領域でも、デザインする領域がすごく増えましたね。特にHMIの画面の中も含めて、その画面の中とCMFがどう連動していけばいいか、ソフトウェアが入ってくることでデザインの幅がすごく増えます。インテリア、特にハードウェアのパーツ自体をすごく柔軟にソフトとして考えられるようなデザインの幅が広がってきたと思っていますね。

難波:デザイナーの領域が単なるその機器のデザインではなくて、システムというか、考え方までどう伝えるかという感じなのかな。

清水:特に画面の中なんかで言うと……。画面の中はまた画面の中では大変ですね、あそこの世界は。あそこはあそこでまた1個の商品みたいで競い合いがどんどん出て、当然ハードウェアと違ってアップデートも入ってくるんですよね。長いライフサイクルをクルマの開発の中で考えていかないといけないんですが、今回、コンセプトモデルに入れているUIのデザインも、当然しっかりと量産にも持っていこうとしています。新しいトライですから、僕はコンセプトから思いっきりやって量産に少しずつ落としていければいいといつも思っているんですけど。

難波:一方で、ソニーとやっている部隊があるじゃないですか。部隊っていうか違う会社(Sony-Honda Mobility)ですけど。デザイナーとしてどんな風に思ってらっしゃいました?
清水:その質問はかなり答えにくい。Sony-Honda Mobilityは、別会社になっているので(笑)。

難波:確かに我々もSony-Hondaのクルマ、アフィーラ(ALEELA)はアフィーラで見させてもらっているわけです。だから、0シリーズとアフィーラはまた違うアプローチなんだなと。個人的に感じたのは、クルマが走るっていうか運動するダイナミズムみたいなものはSALOONには感じたんですよね。で、そうじゃない方(アフィーラ)はそれをなかなか感じないと言ったらいいのか。だから、今回SALOONを見ている限りでは、やっぱり走るためにというか、走りを感じる部分がちゃんとあるなっていう風に思っています。SALOONはプランビューで相当絞っているのではないですか? 特に後輪部分は。しっかりと地に足が着いたというか、踏ん張っている感じがします。多分高速道路でSALOONに抜かれた時に、SALOONのなかなかいい後ろ姿が見えるかなって思っているんです。

清水:ありがとうございます。リヤまわりは特にスタンスの良さと、あとはリヤコンビのぐるっと一周回った灯体とか、量産も含めてHonda 0シリーズのひとつのデザイン言語にしていきたいな、と考えています。ああいうアイコニックなものをシリーズとして展開していくことで、BEVで言うと、1機種1機種というよりは、シリーズ全体でデザインブランディングみたいなのもしていきたいなという風に考えています。

難波:パスっと切ったフロントエンドをどこまで本当に保って製品化してくださるかどうか、期待しています。
清水:ありがとうございます。

難波:同じような思想で、SPACE-HUBもやっぱりシリーズとして扱ったのですね?
清水:そうですね。SPACE-HUBはまだコンセプトモデルの段階で、量産をどうしていくかはまだ決まってはないんです。基本的にはSALOONが次のセダンの解釈みたいな形、SPACE-HUBが次のユーティリティ、ファンクショナリティを具現化したようなモデルになっています。そのデザインのメソッドみたいなところは、どちらも共通して同じようなアプローチをしており、用途が少し違う形ですね。

難波:やっぱり箱がでかいだけあって、SPACE-HUBはちょっと単調になりかねないのはありますね。
清水:確かにそういう意見も少しいただいてはいるものの、あとでちょっと現物を見ていただくと、シンプルな中にもかなり面構成とかはこだわってやっているのがわかると思います。

難波:面構成とか、面の表情とか?
清水:どうしても普通にやっちゃうと、四角のミニバンとか商用車っぽくなってしまうところをどれだけファンクショナルだったり、ダイナミズムを出していけるかっていうところを今、相当こだわっています。

0 SPACE-HUB

難波:実はこれからのカーデザインは大変だなと思っているのですよ。シンプルな方向に行く、その時に表情をどう出していくのかは、ものすごく大変になっていくなと思っていて。逆に言うと、先ほど定番を最初にやったのは強いって言ったんですけど、逆にそれに今後縛られる可能性も出るなと思うと、案外大きな定番をそのまま出してきたなっていう感じがしました。もしかしたら今回は料理するための最初のテーマを出したのであって、別に具体的な表現にはこだわりませんっていう風におっしゃるのかもしれないなと思っていました。今回のモデルはコンセプトだから、我々の基本的な考え方、造形表現としての考え方はお見せしましたけど、でもこれ一本槍じゃないですよって逆に言っちゃった方がいいんじゃないかと思っていて……そうじゃないと多分これからが辛いですよ。
清水:おかげさまで我々も、なんて言うんですかね、基本的にはやっぱり今の開発思想、プロダクトのブランディングもしっかり考えていかないと、なかなか競合さんのなかで戦っていけないところは認識しています。1機種1機種は当然魂込めて作っていくんですけどトータルでもしっかりその0シリーズの世界観みたいなところはどのクルマを見ても感じてもらえるようにしていきたい。それが、今のところの我々の思い描いている0シリーズのブランディングであって、よりそれをゼロリセットでスクラッチアンドビルドでやっていく今までのやり方というよりは、一貫性を保ちながらしっかり進化させていくっていうところはやっていきます。

難波:すごく期待しますね。
清水:ありがとうございます。

デザイナーとはどんな仕事ですか?

難波:最後に少し…
今回、実際のクルマのデザインのお話をさせていただきました。デザイナーとしてデザインってどういう仕事だと感じているか、いや、考えてらっしゃるか、聞いてみたいなと思ったんです。デザイン。最終的な表現者だけど。今回も開発の思いを全部込めるわけじゃないですか。デザイナーってどういう立ち位置で、どんな仕事、どういう仕事の人たちなんだっていう意識をいつも持っていらっしゃるのでしょうか。

清水:なかなか難しい。あくまで個人的にですが、今回、デザイン開発の目指すところとして、“The art of resonance”っていうキーワードをひとつ置かせてもらっています。今までのデザインというよりは、一歩進んでアートっていう言葉を使わせてもらっています。それは何かって言うと、やっぱり人の気持ち、心を動かせるものを提供したい。デザインにはどうしても色々な解釈もあるのですけど、それもすべての人たちに向けて、すべての人たちを網羅的にカバーしていくというよりは、やっぱりホンダの開発思想だったり、ヘリテージも一部含んで、そういったところをきっちり共感してもらえる人により純度高く届けたいと思っています。だからそこが今までのデザインというよりは、0シリーズがかなりちょっととんがったようなデザインのアプローチをしているところもあるんですけども、それに共感してくれる人たちに特にファンを作って広げていきたいなと思っています。
難波:ありがとうございました。

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