「感性品質」感じさせる品質とは? 【感性品質シリーズ Vol.1】

Mercedes-Benz A-Klasse, Interieur Mercedes-Benz A-Class interior
【感性品質シリーズ Vol.1】
ここ数年、自動車開発で耳にするようになった品質の指標として「感性品質」があります。では、この「感性品質」とはどんな概念なのでしょう?これからシリーズで感性品質について解説していきます。
TEXT:満月 芹(MIZUKI Seri)
PHOTO:Daimler

ここ数年、自動車開発で耳にするようになった品質の指標として「感性品質」があります。
特にデザイン分野では顧客満足度に直結するものとして近年その重要性が高まりつつあり、perceived quality(知覚品質)とも呼ばれています。

当たり前品質の上位概念

品質と聞くと、まず浮かぶのは部品同士の隙間や段差の組み付け精度、いわゆる「当たり前品質」とも云われるものかと思いますが、ここで述べる感性品質はそのもうひとつ上の概念、

「デザイン表現を最大限に感じさせるための出来栄え」
と捉えられているものです。(注:メーカーにより官能評価の意味合いとする定義もありますがここではデザイン表現とします)
その製品デザインが目的とする狙い、例えばソフト感やシャープさを表現する為にふさわしい構造や素材、あるべき仕上げ、そしてそれらがどの程度のレベルで成り立っているかを指標として定め、各メーカーが開発上で商品性評価の項目として導入しています。

唐突ですがひとつの例を挙げてみます。この写真のインテリアデザインからどのような印象を感じ取れるでしょうか。

PHOTO:Daimler

◇落ち着いていてシック。
◇シンプルで質実剛健っぽいが高級感がある。
◇ディスプレイ周辺が際立っている
……いかがでしょう、そんな雰囲気のキーワードが浮かびませんか?

答え合わせをすると、この内装デザインのテーマは「モダン・ラグジュアリー」とのこと(※公式HPから引用)。現代的な豪華さ・贅沢さと解釈できるでしょうか。

具現化手法の完成度=感じさせる品質

実際、この車は多くのメーカーから感性品質が高い仕上げとして目標にされていますが、それはこのデザインを構成する要素の強調やバランスの良さが、伝えたい狙いを精度高く感じさせているからと考えます。

このデザインの評価を読み取ると下図のような要素が挙げられます。

独立したディスプレイ周辺をすっきり見せるシンプルでストレートなアッパー部の面質
ディスプレイ周辺に充実感を与えるピアノブラック加飾とマットシルバーの機能部品(エアコン吹き出し口や操作スイッチ)

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「「感性品質」感じさせる品質とは? 【感性品質シリーズ Vol.1】」の1枚めの画像
主役をインパネとし「従」として低位置で水平に置かれたコンソール

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「「感性品質」感じさせる品質とは? 【感性品質シリーズ Vol.1】」の2枚めの画像
主役をインパネとし「従」として低位置で水平に置かれたコンソール

これらを開発者として観るべき面とすれば、この表現の具現化のために施された細部のさまざまな造形や表面処理の方法です。
例えばエアコンの吹き出し口に注目すると、円形のアウトラインを強調するためにピアノブラックの加飾部を盛り上げ、サテンシルバー部分のC面でシャープな陰影を表現。さまざまな光と影を存在させることで密度感を与え、それが結果的にワイドディスプレイ周辺を見せ場として華やさを与えます。

当然ながら基本品質の高さは大前提ですが、その上に成り立つデザイン手法とその完成度が「感じさせる品質」のレベルを成すのです。
なおこの例は高級車だから良い結果なのではなく、たとえ軽自動車であっても内装全体のテーマに高い調和性と当たり前品質が伴えば、見る人に好ましい印象を与え、作り手の思いが織り込まれたデザインの狙いもしっかり伝わると考えます。

感じさせる品質の存在意義

デザイン作業に多くの時間と工数を掛け、フィジビリティ(実現性検討)を重ね具現化した製品に込めた”狙い”が見る人に純度高く伝わるということは最良の”費用対効果”になるのです。またさらに大切なのはそこにコスト意識や効率性が含まれているかであり、採算度外視での手法はあまり評価されません。知的創意こそがプロダクトデザイナーの腕の見せ所でもある訳です。

実際この車もドアは部品数が少なく作られており、コンソールも表面材は一体です。インパネ(ディスプレイ)に重きを置いたコンセプトだからこそのバランスといえます。

建付けがいまいちな製品が見受けられたのも過去の事。今やメーカー各車の基本品質は「当たり前」となり、その上位概念としてデザイン表現で欠かすことができない感性品質の存在とその意義について、皆さんにも興味を感じていただけるように今後も様々な事例を用いながらできる限りわかりやすくお伝えできればと思っています。

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著者プロフィール

満月 芹 近影

満月 芹

感性品質&PQジャーナリスト
自動車開発経験を経てフリーに。感性品質やPQ領域のアドバイザーに従事。