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Rolls-Royce RR-0.01 / RR-0.02
ロールス・ロイス再生前夜のプロジェクト
「ソープボックス(Soapbox)」とは、米国オハイオ州ではじまった子どもたちによる、無動力のカーレース(グラビティレーサー)。石鹸箱の名前のとおり、木箱などに車輪をつけて斜面でスピードを争う競技だ。グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは、自動車メーカーやコンストラクターがその技術を競うソープボックス・チャレンジを行っている。
ロールス・ロイスが、フォルクスワーゲンの傘下で再生を果たすことになった2003年1月1日。その前夜に、ロールス・ロイスの再建を担う熟練工によって製造されたソープボックスレーサーが存在していた。コードネームは「RR-0.01」と「RR-0.02」、どちらも1台限りのワンオフモデルだ。
当時、「プロジェクト・ロールス・ロイス」はまだ始まったばかりで、新しい製造施設の建設計画が許可されたばかりのダイミング。この2台は2001年と2002年に開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードのソープボックス・チャレンジに参加するために製造されている。
ファントムをオマージュした「RR-0.01」
RR-0.01のボディラインは、初代「グッドウッド ファントム」のデザインをオマージュ。カーボンファイバーとグラスファイバー、複合ハニカムプレート、精密なアルミニウム部品で構成されたモノコックシェルは、「ファントムVII」にもよく似ており、2001年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにおいて「最優秀デザイン賞」を獲得した。
ボンネットにはユニークな「三月ウサギ(March Hare:『不思議の国のアリス』に登場するキャラクター)」のマスコットを配置。リデザインされた「スピリット・オブ・エクスタシー」がファントムに登場するのは、2003年に新設されたグッドウッド工場が正式にオープンしてからだった。
2001年のソープボックス・チャレンジでは、復活したロールス・ロイスにおいて最初のデザインディレクターを務めたイアン・キャメロンがドライブし、最終コーナーでベントレーのレーサーをオーバーテイクしている。
2002年のグッドウッドを制した「RR-0.02」
「RR-0.02」は、1911年のロンドン・トゥ・エジンバラ・トライアル( London to Edinburgh Trial)と、1913年のアルパイン・トライアル(Alpine Trial)で優勝したシルバーゴーストからインスパイア。輝かしい先代モデルと同様、RR-0.02もスピードを念頭に置いて開発され、フォーミュラスタイルのステアリングラックと、転がり抵抗を最小限に抑えたスリックチューブラータイヤが組み合わされた。
2002年のスピード・チャレンジでは、イアン・キャメロンがチームを優勝に導き、最速レーサーに贈られる「ニュートン・アップル賞」を獲得。また、グッドウッドから、特に優れたレーサーに与えられる賞の「メリット・オブ・エクセレンス」も授与された。
シャシーはアルミニウムとカーボンファイバーで作られ、ペイントされたウッドデッキとレザートリムを備えたこRR-0.02は、パンテオングリルの上にダブルクエスチョンマークのモノグラムを配置。翌年に迫ったロールス・ロイスの復活を予告している。
2台はロールス・ロイス本社工場のメインレセプションエリアに展示され、長年にわたってカスタマーや訪問者の目を楽しませてきた。今回、2台のソープボックスレーサーは、次世代を担う若い職人たちによって、かつての栄光を取り戻すべく忠実に修復。RR-0.01はフロントグリルの複雑な形状が修理され、RR-0.02のフロントスクリーンは手作業でベニヤが交換されている。