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Lamborghini SC63
従来型のSC63で得た10位入賞
2024年シーズン、WECのトップカテゴリーに「SC63」で参戦をスタートしたランボルギーニ。開幕戦カタール以来、63号車 1台のみで戦い続けてきた。シーズン最大のイベントとなる第4戦ル・マン24時間からは、新たに2台目としてSC63 19号車を投入。マッテオ・カイローリ、アンドレア・カルダレッリ、ロマン・グロージャンという経験豊富な3名が19号車のステアリングを握った。
23台がエントリーしたハイパーカークラスにおいて、SC63 63号車が24時間レースを走り抜き、10位でフィニッシュ。WEC初登場となった19号車も13位で完走し、ランボルギーニは2台のSC63がチェッカーフラッグを受けることになった。
ランボルギーニ・アイアン・リンクスの2台が揃ってフィニッシュラインを超えられたのは、レース中に長時間ガレージに入るほどの大きなトラブルに見舞われることなく、強い信頼性を発揮できたことが理由に挙げられる。これによりマシン開発を担当するランボルギーニ・スクアドラ・コルセは、貴重なデータや知見を持ち帰ることが可能になった。
63号車のステアリングを握ったダニール・クビアトは、今回の結果を受けて、さらなる躍進を予告する。
「本当に素晴らしい結果ですし、レースを楽しむことができました。入賞はシーズン開幕以来、チームが積み重ねてきたハードワークに対する大きなご褒美だと言えるでしょう。今回、今後予定しているアップデート仕様ではなく、従来型でこの結果を残すことができました。つまり、アップデートした仕様であれば、勝利を狙える可能性があるということです」
厳しい予選を戦った2台のSC63
6月9日日曜日に行われた公式テストでは、「ランボルギーニ SC63」63号車は概ね良好な結果を残したものの、12日水曜日の午後のフリープラクティス直前にトラブルが発覚。シャシー交換を余儀なくされた。ボルトロッティ、モルタラ、クビアトの3人はこの厳しい状況の中でも、フリープラクティス1において、燃料を多めに積んだ状態でのロングランに集中する。
予選はボルトロッティが担当し、アタックラップにおいてGT3のトラフィックに阻まれれた上、ターン1でスピンを喫したこともあり、3分25秒973で14番手タイムに終わった。
一方、3月に行われたIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第2戦「セブリング12時間」以来、レース参戦から遠ざかっていたSC63の19号車は、今回から新シャシーを投入。ル・マン24時間前にフランス・マニクールにおいて100kmのシェイクダウンテストを実施した。
しかしレースウイークに入ると、グロージャン、カルダレッリ、カイローリの3名はフロントセクションの振動に悩まされることになる。予選ではカルダレッリが3分27秒655で21番手。フリープラクティスから、3秒190秒もタイムを更新した。
経験豊富なプジョーと争い10位を獲得
迎えた決勝レース、SC63の63号車はモルタラがスタートから3スティントを担当し、ボルトロッティにバトンタッチ。スタートから2時間の段階で、予報されていた雨がサーキットに降り注ぎ、上位のクルーはウエットタイヤへと交換する。雨がすぐに止むことに賭けた63号車はスリックタイヤを履き続け、ボルトロッティは5番手まで順位を上げて見せる。
しかし、夜が更けるにつれて雨が強さを増し、4時間にわたってセーフティカーが導入されるほど難しいコンディションに。日曜日の朝7時を過ぎた段階でレースが再開されると、63号車はプジョーの2台とポイント圏内でのバトルを続け、経験豊富なプジョーを相手に安定したペースを披露する。
レース終盤、雨が再び降り出し、その後雨脚が強まったため、63号車はウエットタイヤに交換。最後の1時間で10位まで順位を上げ、ランボルギーニにとって今シーズン初となる選手権ポイントを持ち帰った。レース後、ボルトロッティは24時間レースを戦い切ったチーム全員へと賛辞を送った。
「アイアン・リンクス、ランボルギーニ、メカニック、チームメイト、エンジニアなど、このプロジェクトに参加しているすべての人を誇りに思います。このプロジェクトがスタートしたのは1年前のこと。そこから、全員がハードワークを続けてきました。決勝は本当に素晴らしい1日になりましたし、レースの進め方にも満足しています。まだやるべきことがたくさんあるのは確かですが、この結果を楽しみながら、次のステップに集中します」
細かいトラブルに見舞われた19号車
SC63の19号車はカルダレッリがスタートを担当、オープニングラップでトラブルに巻き込まれることなく、ウエットコンディションにおいても安定したラップで走行を続けた。19号車はピットストップ後のニュータイヤの挙動に問題を抱えており、カイローリがテルトル・ルージュにおいてスピンを喫してしまう。グラベルに入りながらも、なんとかタイヤバリアーを避けて走行を続けた。
グロージャンを含めた3名のドライバーは、それぞれ3スティントを担当。走行が不可能になレベルの致命的なトラブルこそなかったが、夜間走行中はライトに問題が生じ、チームはピットストップにおいてフロントノーズとリヤのボディワーク交換を実施。さらにリヤウイングの破損と2度のドライブスルーペナルティにより、入賞圏内から大きく順位を落とすことになった。
それでも最終スティントを担当したカルダレッリが、12位のプジョーからわずか21秒差の13位でフィニッシュ。この後、19号車のクルーは、6月30日に米国のワトキンス・グレンで開催されるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第3戦「サーレンズ・ワトキンズ・グレン6時間レース」に参戦する予定だ。
カルダレッリは「ル・マン初参戦の目標だった完走を果たすことができました。レース中、様々なトラブルに見舞われましたが、このレースのために懸命に働いてくれた、ランボルギーニとアイアン・リンクスの頑張りにより、最後まで走り切ることができました。ただ、入賞が狙えるペースがあっただけに、この結果には少しほろ苦さも感じています」と、悔しさを滲ませている。