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FuoriConcorso
あるファッショニスタのパッションから
イタリア北部コモ湖畔で近年、存在感を増している初夏の催しといえば「フォーリ・コンコルソ」である。FuoriConcorsoとは、イタリア語で「コンクールの外(そと)」のことだ。これには2つの意味が託されている。ひとつは、イベントの趣旨がコンクールではないことである。公式リリースには「世界中の自動車愛好家をつなぎ豊かにする、自動車文化の思い出に残る瞬間」と趣旨が説明されている。
もうひとつは公式リリースでは触れられていないが、著名コンクール・デレガンス「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」と同じ週末、会場に近い城館を舞台としていることだ。物理的にもコンクールの外なのである。
創設者は1922年に創業を遡るミラノの高級メンズアパレル・ブランド「ラルスミアーニ」の3代目当主グリエルモ・ミアーニ氏である。生粋のカーエンスージアストである彼は、自動車ブランドとのパイプが太い。直近では2024年4月16日、ミラノ・モンテナポレオーネ通り近くにある自らのブティックに、発表後6日しかたっていない「アルファ・ロメオ・ジュニア(旧ミラノ)」がサプライズ展示されたのも、それを物語っている。
イベントのきっかけは2019年に「ベントレーの100年」の名のもと行われた「ベントレー・コンチネンタルGT」の走行会だった。翌年のターボチャージャー付き車両限定「ターボ・ラン」を経て、3年目の2021年から現在に近い形となった。2022年は「ポルシェのスペシャルエディション」、2023年は「空力的なスポーツ&レーシングカー」を特集した。
いきなりスターティンググリッド
会場である湖畔に建てられた2つの城館は、周囲に坂道が続く。ドレスコードには「スマートカジュアル」とともに「comfortable shoes」と記されているのは、そのためだ。
2024年のテーマは「ブリティッシュ・レーシンググリーン」と定められた。1960年代から2000年代まで、リリースの説明を借りれば「エリザベスⅡ世女王時代の」レーシング&スポーツモデル60台以上が集められた。最も壮観だった風景は2会場のひとつ、ヴィラ・グルメッロで、スターティング・グリッドのごとく歴代フォーミュラカーが並べられた。
フォーリサローネのもうひとつの魅力は、多彩な参加ブランドである。今回は「ザガート」「アストンマーティン」「マルク-フィリップ・ゲンバラ(注:ゲンバラGmbHとは別企業)」「ケーニグセグ」「ロータス」「パガーニ」そして「ポルシェ」が車両を展示した。コンコルソ・ヴィラ・デステは厳格・中立的であるものの、主催者がBMWのクラシック部門であることから、会場にはその存在感がどうしてもある。加えて、ヒストリックカー以外の参加枠は、コンセプトカーに限られる。そうしたなか、より自由度が高いフォーリサローネが年々評価されていることはたしかだ。超少量生産のハイパーカーを手掛けるコンストラクターにとっては、モンテカルロの「トップマーク」ショーに比肩する公開の場を得られたことになる。
初夏のコモをエンスージアスト垂涎の地に
思えば、ヴィラ・デステと比肩する格式を誇るペブルビーチ・コンクール・デレガンスでも、同じ開催時期に「コンコルソ・イタリアーノ」といったイベントが並行して行われてきた。対して、従来ヴィラ・デステにはRMサザビーズのオークションが隔年で開かれるのみだった。そうした意味で、フォーリコンコルソ双方は、初夏のコモがさらにエンスージアスト垂涎の地となることに寄与するはずだ。
REPORT/大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)
PHOTO/大矢麻里(Mari OYA)、大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)、FuoriConcorso