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1948 Porsche 356-001
ポルシェの名を冠した最初のモデル
第二次世界大戦中からオーストリア・グミュントに疎開していたフェリー・ポルシェらポルシェ設計事務所の開発陣が、1948年に発表した「ポルシェ」の名を冠した最初のモデルである。
当初は、フォルクスワーゲンに売り込むためのビートルをベースとしたスポーツモデルとして企画され「フォルクスワーゲン スポーツ」と呼ばれていたが、スイス人実業家の支援を取り付けたことで、オリジナルモデルとして開発されることとなった。
水平対向4気筒をミッドマウント
その最大の特徴は鋼管スペースフレーム・シャシーをもつミッドシップ・レイアウトにある。
これは1946年にポルシェがイタリアのチシタリアから依頼を受け開発した、1.5リッター水平対向12気筒スーパーチャージャーをミッドシップ・マウントする4WD GPマシン「タイプ360」の影響を受けたもので、当時としては非常に先進的なものであった。
エンジンはフォルクスワーゲン ビートルの1131cc空冷水平対向4気筒OHVをベースとしたもので、ギヤボックス共々、反対向きに搭載することでミッドシップを実現。またエンジン自体もソレックス製キャブレターを2基装着するなどのファインチューンによりノーマルの25hpを上回る35hpを発生していた。
エルヴィン・コメンダによる美しいデザイン
流麗なオープン2シーターのボディは、エルヴィン・コメンダのデザインによるハンドメイドのアルミ製。1948年3月に完成し、テストが繰り返されていた当初は無塗装だったが、6月15日にオーストリア当局から「K45−286」という正式なライセンスナンバーが交付された際に、淡いグレーに塗装されている。
このほか、4速ギヤボックス、フロントアクスル、リヤアクスル、ステアリング、ホイール、ブレーキといったコンポーネンツは、ビートルから流用されたものだった。
またインテリアは中央にスピードメーターのみを備えた専用のデザインとなっていたほか、シートはベンチタイプで幌やサイドウインドウの用意はなかった。
ポルシェが買い戻したのは1958年
356-001が正式に発表されたのは1948年7月4日。スイスGPが行われていたベルン郊外のブレムガルテン・サーキットでのことだった。その後7月11日にヘルベルト・カエスのドライブで、インスブルック・シティレースでデモランを行ったのち、12月にチューリッヒに住むドイツ人建築家、ペーター・カイザーへ7500フランで売却。数人のオーナーの間を転々とする中で、エンジンを356プリAの1.5リッター・ユニットへ載せ替え、ボディをシルバーに塗り替えるなど、内外装に様々なモディファイが加えられた。
1958年にポルシェが買い戻してから、しばらくそのままの状態で保管されていたが、1975年前後に改造されていたテールランプなど外装を中心としたセミレストアを実施。そして誕生70周年を前にした2017年に、エンジン、インパネ、ホイールなどをオリジナル・スペックに戻すセミレストアが施されている。
【SPECIFICATIONS】
ポルシェ 356-001
年式:1948年
エンジン形式:空冷水平対向4気筒OHV
排気量:1131cc
最高出力:35hp
最高速度:135km/h
TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
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