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Rolls-Royce Phantom Goldfinger
1937 Phantom III Sedanca de Ville
敵役ゴールドフィンガーの愛車をオマージュ
ロールス・ロイス・モーター・カーズは、1964年に公開された007シリーズ第3作『007/ゴールドフィンガー(Goldfinger)』にオマージュを捧げるワンオフ仕様「ファントム ゴールドフィンガー」を発表した。007シリーズには、実に12回もロールス・ロイス製モデルが登場している。
公開60周年を迎えた2024年に発表されたワンオフモデルは、劇中の敵役オーリック・ゴールドフィンガーが所有する1937年型「ロールス・ロイス ファントムIII セダンカ・ド・ヴィル」からインスピレーションを得て製作。内外装には、傑作スパイムービーのストーリーにリンクする、精巧かつ独創的なビスポーク作品が数多く導入された。
ファントム ゴールドフィンガーの開発には、3年という月日を要することになった。作中ではオーリック・ゴールドフィンガーが、2トンの18金で作られた ファントムIII セダンカ・ド・ヴィルで、英国からヨーロッパ大陸を横断し、難所のフルカ峠を越えて金をスイスへと密輸している。フルカ峠で撮影された有名なシーンからインスピレーションを得て、この車両専用のインストゥルメントパネルも製作された。
ゴールドフィンガーがジェームズ・ボンドと初対面した際、使用したゴルフクラブをイメージし、トランクの内側には黄金のパターを搭載。特別装備のひとつひとつが、エレガントで遊び心を持ったビスポークアイテムとして、英国・グッドウッドで製作されている。ロールス・ロイス・モーター・カーズのクリス・ブラウンリッジCEOは、ファントム ゴールドフィンガーの完成度に自信をのぞかせる。
「ロールス・ロイスでは、これまでも可能性の限界を塗り替え、真のラグジュアリーの本質を定義する、極めてパーソナルな傑作を作り出してきました。それぞれの作品はお客様に常に喜びと期待以上のものを提供するという、ロールス・ロイスの絶対的な方針を象徴しています」
「ファントム ゴールドフィンガーという特別なプロジェクトは、クリエイティブチームに活力を与え、想像力の限界を探求する自由を与えてくれました。最終的な作品は、コラボレーションが持つ力と、デザイナーや職人、そしてエンジニアの並外れた能力の証となっています」
一部から金が覗くスピリット・オブ・エクスタシー
エクステリアは、ロールス・ロイスのペイントスペシャリストが、作品で使用された1937年製ファントムIIIのボディカラーを正確に再現した、特別なイエローを調色した。専用のロングサイドツートンカラーのデザインが開発され、ブラックフィニッシュが途切れることなく堂々としたボディを包み込む。
足元に装着された21インチディスクホイールはブラックで仕上げられ、ホイールの中心にはシルバーのフローティング・ハブキャップを装着。こちらも1937年型ファントムのホイールデザインからインスピレーションを得ている。
ファントムのボンネット先端に据えられたロールス・ロイスを象徴する「スピリット・オブ・エクスタシー」は、映画のストーリーをさりげなく引用した独特な仕上げが施された。 作中でオーリック・ゴールドフィンガーは、ファントムのボディパネルに金を仕込み密輸を行っていた。
このアイデアを踏襲し、スピリット・オブ・エクスタシーの一部から金が見えるように製作。金に銀メッキを施すことができないため、ロールス・ロイスのスペシャリストは純銀製のスピリット・オブ・エクスタシーをベースに、18金で金メッキを施し、金の露出効果を表現した。
センターコンソールに仕込まれた純金のスピードフォーム
インテリアは、ロールス・ロイスのデザイナー、エンジニア、職人からなるビスポーク・コレクティブが、18金や24金といった素材を贅沢に駆使した複雑なディテールや機能を開発。そのひとつが、フロントシート間のセンターコンソールに設けられた隠し金庫だ。
この小さな金庫は、純金製の輝く芸術作品を収納するために設計され、ファントムのデザインをミニチュアで表現した純金製の「スピードフォーム」が鎮座。また、センターコンソール底部、グローブボックスの内側も、美しいゴールド仕上げが施された。グローブボックスの内蓋には、ゴールドフィンガーの象徴的な台詞が、デボス加工で入れられている。
「This is Gold, Mr. Bond. All my life, I have been in love with its colour, its brilliance, its divine heaviness.(これがゴールドだ、ボンド君。私は生涯、この色、この輝き、この神々しい重厚さに恋をしてきた)」
エアベンチレーションやオルガンストップも、光沢を持ったゴールド仕上げ。スピーカーのフレットもゴールドとなり、映画のタイトルデザインを刻印。ゴールドフィンガーの金塊を模したペダルプレートは、映画のために開発されたフォントを使用し、金メッキとエンボス加工が施されている。
フルカ峠の等高線を表現したインストゥルメントパネル
インストゥルメントパネルのギャラリー部には、特注のアートワークを導入。手描きによる立体的なデザインは、正確かつ芸術的な等高線図で、フルカ峠の輪郭を示している。これは、作中でゴールドフィンガーがスイス・アルプスの製錬工場へと向かうのを、ジェームズ・ボンドが追跡する様子を表現している。
アートワークに使用されたステンレススチールは、物理蒸着法と呼ばれる方法で黒く着色。等高線と標高の数値が暗色の基質に刻み込まれ、その下にある明るい金属が露出している。この非常に複雑なアートワークを完成させるには、実に1年間もの入念な開発作業が必要となった。ビスポーク・コレクティブは、デザインを完成させるために10個もの試作品を製作したという。
アートワークの中央にあるボスポーク・クロックは、1962年の『007/ドクター・ノオ』以降、すべてのジェームズ・ボンド作品に登場した、「銃身」のイメージからインスピレーションを得ている。
スターライト・ヘッドライナーは、1964年7月11日、スイスでの撮影最終日にフルカ峠上空に浮かんでいた星座を完璧に再現。719個もの星はほのかな金色に輝き、さらに8個の「流れ星」がスターライト・ヘッドライナーを取り囲む。すべての星は、ハンドメイドでヘッドライナーに入れられている。