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TOYOTA GR010 HYBRID
序盤のスピンで大きくポジションダウン
現地時間11月2日午後2時、砂漠の強い日差しのもとで、8時間にわたるWEC最終戦決勝レースのスタートが切られた。ポールポジションの「GR010 ハイブリッド」8号車はブエミがスタートを担当し、大きな波乱もなく1周目をクリア。しかし、スタートから僅か18分後、LMGT3クラスのマシンに追突されてスピンを喫し、7番手にポジションダウンしてしまう。それでもブエミは挽回し、スタートから2時間後に5番手でハートレーへと交代する。
第2スティントを担当したハートレー、その後を引き継いだ第3スティントの平川は、タイヤ摩耗に苦しみながらも、トップ6をキープ。8時間という長丁場のレースでトップを目指して奮闘を続ける。レースが折り返しを過ぎた段階で、2度のセーフティカー導入により各車間のギャップが縮まり、18台のハイパーカーによるバトルはリセットされることとなった。
残り1時間半の段階でセーフティカーが退出し、リスタートが切られた段階で、最終スティントを担当したブエミは10番手を走行していたが、首位との差はわずか15秒。そこからブエミは世界チャンピオンの可能性を求めて、鬼神の追い上げを繰り広げる。コース上で次々とライバルをオーバーテイクし、さらに素晴らしいピット戦略にも助けられ、最後のピットストップを終えた時点で、2番手まで順位を上げた。
鬼神の追い上げを披露したブエミ
首位を走行する「ポルシェ 963」5号車(マット・キャンベル、ミカエル・クリステンセン、フレデリック・マコヴィッキィ)を射程に捕らえたブエミは、残り30分を切った頃にトップの座を奪取。その後もハイペースで周回を続け、2位に29秒177の大差をつけてトップチェッカーを受けた。8号車は第5戦サンパウロ6時間レース以来となるシーズン2勝目となる優勝を果たしている。
この結果、トヨタは、ライバルのポルシェをわずか2ポイント上まわり、マニュファクチャラーズ選手権タイトルを獲得。レースを終えた平川は、次のように喜びを語った。
「何という1日でしょう! まさに波瀾万丈のレースでしたが、僕たちは最後まで諦めることなく、チーム一丸となって戦い続けました。今回、ポールポジションからスタートしましたが、GT3車両に追突されるアクシデントなどにも見舞われることになりました。それでも全力を尽くして戦い続け、最後はセブ(ブエミ)が最高の走りで逆境をはねのけてくれました」
「僕ら8号車は今シーズン、困難なレースが多かったので、ようやく最後に幸運を引き寄せることができて嬉しいです。シーズンを勝利で締めくくることができたことも素晴らしいですし、チームはもちろん、トヨタ、そしてパートナーの皆さんにも本当に感謝しています」
燃料ポンプトラブルに見舞われた7号車
予選2番手からスタートしたGR010 ハイブリッド 7号車(小林可夢偉、マイク・コンウェイ、ニック・デ・フリース)は、レースの中盤過まで上位争いを展開する。スタートを担当したコンウェイは、1周目を4番手で終えた後、3番手へとポジションを取り戻して小林へとドライバーチェンジ。小林は日没後の視界が悪い中で劇的なオーバーテイクを演じ、2番手へとポジションアップを上げて見せる。
しかし、7号車は燃料ポンプのトラブルに見舞われ、スローダウン。チームの奮闘もあり、小林のペースは復活し、素早いピットストップでデ・フリースに代わった段階で首位へと浮上する。ところが7号車は再びスローダウン。残り2時間を切った段階で、修復のためガレージへと入ることになった。
トラブル解消に長時間を要することが予想されたため、チームはマニュファクチャラーズ選手権獲得と、そのために必要な8号車の勝利を優先し、7号車のリタイアを決定。7号車のクルーも8号車のサポートにまわり、マニュファクチャラーズ6連覇を達成している。悔しいリタイアとなったコンウェイは、以下のようにレースを振り返った。
「我々7号車にとっては、厳しい結果となってしまいました。今日の私たちは強く、勝てる可能性が見えていました。しかし、トラブルに見舞われ、残念ながらリタイアせざるを得ませんでした。それでも8号車が勝ってくれたことで、我々の目標であったマニュファクチャラーズ選手権チャンピオンを獲得することができました。チームとトヨタにとって、とても嬉しい結果ですし、最後まで力強い走りで見事勝利を勝ち取った8号車に祝福を贈ります」