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911 2.7 / 911 SC / 911 Carrera 3.2(1974-1989)
Gシリーズの誕生
1972年登場の「911 2.4」でRRレイアウトを持つ2+2のGTとして、完成の域に達した911ではあったが、1970年代に入って声高に叫ばれるようになってきた衝突安全対策と、排ガス規制への対応が迫られるようになってきた。
そこでポルシェは1973年8月に、Gシリーズと呼ばれる新しい911を発表する。これはアメリカ連邦自動車安全基準(FMVSS)の新しい衝突安全基準にあわせて、前後に大型の5マイルバンパーを装着したモデルで、それまでの“ナロー”に対し、“ビッグバンパー”の愛称で呼ばれた。ちなみに欧州仕様ではバンパー内部に収縮式鋼管、北米仕様では油圧ダンパーを内蔵し、衝撃を吸収する仕組みになっている。
それに伴いフロントのホーングリル、ウインカーレンズがなくなり、バンパー一体式のデザインへと変更。無骨な5マイルバンパーのスタイリングに苦労したライバルを尻目に、スタイリングをモダナイスすることにも成功した。また1975年モデルでは遮音性の強化、1976年モデルからは亜鉛皮膜鋼板を使用し防錆処理が強化されるなど実用本意の改良が施されていったのもトピックと言えた。
一方空冷フラット6 SOHCエンジンに関しては、排ガス対策でのパワーロスに対応するために排気量を2687ccへと拡大。当初は北米仕様の911と911SにのみボッシュKジェトロニック機械式燃料噴射システムが装着されていたが、のちに全モデルへと拡大。そのほか排気系統の改良が進められた結果、出力は相対的に落ちてしまうこととなる。
車両型式が930型に変更
そんな中、1974年にはグループ3のホモロゲ取得用に230PSの2994ccユニットを搭載した「カレラ RS 3.0」が106台限定で登場。1976年には「911S」に代わり、930ターボのエンジンをベースとした200PSの2994ccフラット6を搭載した「カレラ 3.0」がラインナップに加わった。
1978年、ポルシェは911の体系を改め、ターボ用をベースとする2994cc空冷フラット6 SOHC 930型ユニットを搭載した「911 SC」へと統一。カレラと同じワイドボディとなるとともに、915型5速MTが標準装備となり、車両型式も911型から930型に変更された。
本来ならこの911SCで911は役目を終え、フラッグシップの「928」、そして「924」へとバトンタッチを行う予定だったのだが、両車の販売が思わしくなくポルシェ自体の経営悪化もあり、1981年にエルンスト・フールマンに代わって新社長に就任したピーター・シュッツは、まだ販売が好調な911の延命を決断。一時、凍結されていたAWDなどの新技術の開発も積極的に推進し、同年のフランクフルト・ショーでAWD&フルオープンの「911ターボ・カブリオ・スタディ」を発表する。結局AWDの911が市販されるまでには、まだ時間を要することになるが、1983年10月からレギュラーモデルに加わった「911 SC カブリオレ」が北米市場を中心にヒットし、ポルシェの業績は回復をみた。
そして1984年モデルから、911 SCに代わって排気量を3164ccへと拡大、ボッシュ・モトロニック・エンジン・マネージメントシステムを採用することで冷間時の始動性などが改善された「911 カレラ 3.2」が登場する。
復活した2シーター「スピードスター」
このカレラ3.2には当初、915型5速MTが搭載されていたが、1987年モデルからボルグワーナー式シンクロをもつゲトラク製G50型5速MTを採用。ギヤボックス自体の容量が増えただけでなく、シフトフィールも大幅に改善された。
その他、1984年にはグループBのホモロゲーション取得のために、ターボのワイドボディに270PSの3.0リッター・フラット6を搭載し、アルミパネルなど多用し各部を軽量化した「911 SC / RS」を20台限定で製造。
1985年モデルからクーペ、カブリオレともに“ターボルック”が用意されたほか、1987年には快適装備を外して軽量化した「911 カレラ・クラブスポーツ」が登場している。
そしてモデル末期となった1989年には、低いウインドスクリーンとハードトノカバーを備えた2シーターの「スピードスター」が復活。最終的に2065台が発売され“ビッグバンパー”の長い歴史の終幕に華を添えた。