50周年を迎えた「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」充実のメニュー

“来年こそ!”ポルシェでサーキットドライビングを極める「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」とは?【動画】

ポルシェが展開するドライビングスクール「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」。50周年を迎え、フランスのポール・リカールを舞台に、多くの参加者を集めて開催された。
ポルシェが展開するドライビングスクール「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」。50周年を迎え、フランスのポール・リカールを舞台に、多くの参加者を集めて開催された。
ポルシェは、世界中のグランプリサーキットを舞台に、公式ドラビングレッスン「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス(Porsche Track Experience)」を実施している。導入から50周年を迎えたポルシェ・トラック・エクスペリエンスが、フランスのポール・リカール・サーキットで開催された。その充実のレッスン内容、そして魅力を紹介しよう。

Porsche Track Experience

インストラクター共にコースイン!

ポルシェ・トラック・エクスペリエンスでは、座学の後、ポルシェ・インストラクターのドライブでサーキットを経験する。
ポルシェ・トラック・エクスペリエンスでは、座学の後、ポルシェ・インストラクターのドライブでサーキットを経験する。

いくつかの座学の後、ポルシェ・トラック・エクスペリエンスの参加者は、「911 GT3 RS(992)」のパッセンジャーシートに座り、ポール・リカール・サーキットのピットレーンからコースへと向かう。アクセルを踏み込む前に、インストラクターのフィル・バスティアンスが貴重なアドバイスを与えてくれた。

「走り出す前、サーキットを分析中に話したことを思い出してください」と、参加者と常につながる無線を通して声が聞こえる。「レーシングラインに注意してください。ブレーキングポイントを覚えておくこと。そして何よりも楽しんで!」と言うと、バスティアンスは最高出力525PSを発揮する4.0リッター水平対向エンジンを、わずか3.2秒で100km/hまで加速させた。

911 GT3 RSが赤と白の縁石に触れると、遠心力がパッセンジャーシートに座る参加者をとらえ、全身に振動が伝わってくるだろう。しかし、これこそが貴重な経験となる。経験豊富なポルシェ・インストラクターが操る、911 GT3 RS が全長1kmのミストラル・ストレートで258km/hに達した。可能な限りギリギリのタイミングでブレーキをかけ、130km/hのスピードでシグネス・コーナーを通過する。

オランダ出身で、様々なレースに200回以上参戦しているバスティアンスは、全長5.8kmのポール・リカールの難所、ヘアピンカーブを巧みにクリアする。純粋なドライビングの楽しさとアドレナリン、最高のパフォーマンス。このような瞬間が、モータースポーツファンを魅了し、世界中のレースコースで「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」への参加者を集めている理由だろう。

4つのレベルに分かれたレッスンメニュー

ポルシェが展開するドライビングスクール「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」。50周年を迎え、フランスのポール・リカールを舞台に、多くの参加者を集めて開催された。
サーキットを初体験する「ディスカバー」から、ポルシェでのレーシングドライバーになるための「レース」まで、ポルシェ・トラック・エクスペリエンスは4段階のコースを用意している。

1974年に「ポルシェ・モータースポーツ・スクール」として設立されたポルシェ・トラック・エクスペリエンスは、今年で50周年を迎える。名称と車両は新しくなったが、コンセプトは導入当初から変わらない。ポルシェ製スポーツカーの性能をフルに体験することに興味があるなら、ドライビングレベルに関わらず、誰でも参加して学ぶことができる。

ポルシェ・トラック・エクスペリエンスでは、1回限りのレースコース体験イベントから、レーシングドライバーになるためのトレーニングまで、4つのレベルに分かれており、それぞれのレベルは相互関連している。 

ポルシェ・エクスペリエンス・センターの周回コースで、サーキット初回体験を提供する 「ディスカバー(Discover)」、ドライビングの安全性と車両コントロールに焦点を当てた 「ラーン(Learn)」、国際的なグランプリコースでのトレーニングを行う「ブースト(Boost)」、そしてレーシングドライバーになるための最終トレーニングコースである「レース(Race)」。

ピラミッドの頂点「レース」に上り詰めたいなら、最初のレベルからスタートし、レースゲームのように、ただし実体験を新調に積み重ねながら、上のレベルを目指していく必要がある。最初のサーキット体験イベントからプロフェッショナルが戦うモータースポーツへのステップアップまで、ポルシェのトラック・エクスペリエンス・チームがトレーニングピラミッド全体を通して、カスタマーにしっかりと伴走し、サポートしてくれるだろう。

マンタイ・レーシングがサポート

ポルシェが展開するドライビングスクール「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」。50周年を迎え、フランスのポール・リカールを舞台に、多くの参加者を集めて開催された。
今回、ポール・リカールには合計120台の車両が持ち込まれ、様々なレベルのポルシェ・トラック・エクスペリエンスを実施。サポートは、GTレースを戦うマンタイ・レーシングが行っている。

近年、ポルシェは、ポルシェ・トラック・エクスペリエンスのイベントを束ねることで効率化を図っている。年に5回、トラック・エクスペリエンス・チームは国際的なグランプリコースで、一回で約10日間を過ごす。この間、マンタイ・レーシングとのコラボレーションにより、様々なレベルのドライビングイベントが開催される。2024年6月中旬、911 GT3 RSに特化した上級ドライバー向け、2日間の「マスターGT3 RS」トレーニングも実施された。

「カスタマーの皆さんは、ポルシェ・ドライバーのために用意された、他にはない幅広いパフォーマンス・パッケージを現地で手に入れることができます。レーシングスーツからから、レンタル可能な車両に至るまで、私たちがすべて面倒を見ます」と、説明するのは、ポルシェ・トラックツアー・プロジェクト・マネージャーを務めるモニカ・ティッゲス。

ティッゲスの仕事は、イベントが始まるまでにインフラが整っているかを確認すること。実際、90台のロードカーと30台のレーシングカー、合計120台のスポーツカーをトランスポーターで南フランスへと運ばなければならない。

「マンタイ・レーシングをパートナーに迎えられて本当に幸運でした。彼らはポルシェのモータースポーツ開発チームと密接に協力しながら、並外れたレベルの車両メンテナンスを提供してくれます」と、ティッゲスは説明する。

すべてをプラン通りに進めるため、彼女とマンタイ・レーシングのチームは次から次へと起こるロジスティック上の難題に対処する。「スペアパーツとタイヤだけでもう4台のトラックが必要です」と、ティゲスは肩をすくめた。作業は膨大で、細部にまで気を配る必要がある。

参加者が心からドライビングを楽しめるように

ポルシェが展開するドライビングスクール「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」。50周年を迎え、フランスのポール・リカールを舞台に、多くの参加者を集めて開催された。
50年という長きにわたって、カスタマーへのドライビング機会を提供してきたポルシェ。様々なスタッフが入念に準備を重ね、当日もカスタマーへの迅速なサポートを行っている。

「私たちは、個々の顧客の希望に合わせて車両をカスタマイズします。車内の温度もお客様のご希望に合わせるのです」と、マンタイ・オペレーションズ・チームの一員であるフローリアン・ケッテルが説明を加えた。

「インフラの準備はもちろんですが、その他にもいくつかの組織的な問題を、事前に解決しておく必要があります」と語るのは、ポルシェのイベントオペレーション・プロジェクトマネージャーのフレデリック・クライン。カスタマーと直接接するクラインは、常にイベントに立ち会い、すべてが計画通りに進むようにチェックを行う。

「それこそ『誰が、どの車両を使用するのか?』など、私たちは予約からコースでの最終ラップまで、カスタマーの行動すべてを把握している必要があります。ただ、現在ではルーティンが確立されているので、物事はスムーズに進む傾向にありますね。お客様はポルシェについて、いつでも熱く語ってくれます。それが私たちの日々のモチベーションになっています」と、クライン。

自身の経験を活かすインストラクターたち

ポルシェが展開するドライビングスクール「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」。50周年を迎え、フランスのポール・リカールを舞台に、多くの参加者を集めて開催された。
ポルシェ・トラック・エクスペリエンスには、多くの経験豊富なインストラクターが在籍。自身の経験をベースに様々なアドバイスを参加者へと渡す。

「マスター GT3 RS」ドライビングプログラムは、車両のセッティング、サーキットでのチェック、ビデオとデータの分析、そしてレースコースでの走行という、モータースポーツに関連する様々な要素で構成。参加者はインストラクターと共に、たっぷりと週末を過ごすことになる。インストラクターは分析セッションをリードし、コース上で無線によりリアルタイムで貴重なヒントを提供する。

ポルシェのインストラクターとして14年のキャリアを持つコンスタンチン・ドレスラーは、「私の主な目標は、お客様のドライビングの質を向上させること。常にアドバイスするのは『遠くを見なさい』ということ。実は、これは誰にでも勧めたいことなんです。目の前の道路に集中していると、次のカーブを見逃してしまうかもしれません」と、語る。

ドレスラーと同じく、ニコ・カストラップも2010年からポルシェのインストラクターを務めている。二人とも個人的に小規模なレースシリーズに参戦しており、カスタマーへとアドバイスする際に、自身の豊富な経験を生かすことができるという。

2人のル・マン24時間ウィナーが参加

今回、ポール・リカールで行われたポルシェ・トラック・エクスペリエンスでは、ティモ・ベルンハルト(写真)とアンドレ・ロッテラーという、二人のル・マン・ウィナーが参加した。
今回、ポール・リカールで行われたポルシェ・トラック・エクスペリエンスでは、ティモ・ベルンハルト(写真)とアンドレ・ロッテラーという、2人のル・マン・ウィナーが参加した。

ポール・リカールでは、2名のル・マン・チャンピオンが参加した。ドイツから遠征してきたティモ・ベルンハルトと、モナコから911 ターボS カブリオレに乗ってやってきたアンドレ・ロッテラーだ。2人は世界トップレベルの耐久レースで多くの経験を持っており、それをトラック・エクスペリエンスの参加者に伝えたいと考えている。

ワークショップ、レーシングラインや最適なブレーキングポイントに関するアドバイス、サーキットでのフリー走行など、ポルシェはワークスドライバーやブランドアンバサダーを世界中のイベントに派遣している。

「ポール・リカールのコースは長いカーブが多く、優れたテクニックが要求されます」とロッテラーは説明する。ティモ・ベルンハルトもまた、このコースとその危険性を熟知している。彼はポルシェ 919 ハイブリッドでル・マン総合優勝を果たす前に、ここポール・リカールで集中的な走り込みを行っている。

 「長いストレートがあるポール・リカールは、ル・マンのサルト・サーキットによくにています。私たちはここで数え切れないほど、30時間連続耐久テストをこなしてきました。今回、コース上でのテクニックに不安を抱えた参加者がいました。雨が降り出すなか45分単位で走りましたが、その結果、彼は10秒もタイムを縮めたのです」と、ベルンハルトは嬉しそうに教えてくれた。

世界各地から集まる参加者たち

ポルシェが展開するドライビングスクール「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」。50周年を迎え、フランスのポール・リカールを舞台に、多くの参加者を集めて開催された。
ポルシェ・トラック・エクスペリエンスは、リピーターが多いことでも知られている。今回紹介するアンドレアス・フローンは、29年間もポルシェのドライビングを学び続けているという。

今回、ドイツ・ジーゲンから、ポルシェ・トラック・エクスペリエンスに参加しているのが、眼科医のアンドレアス・フローンだ。

「私が初めて手に入れた、タイプ964型『911 カブリオレ』はブラックのボディカラーにホワイトのシートの組み合わせでした。ドライブ中、立木にぶつけてしまったのです。少し恥ずかしい思いをしながら、ディーラーへと964を持ち込みました」と、彼は笑いながら振り返った。

「すると、当時のセールスマンが『修理はまったく問題ありません。でも、ポルシェが行っているモータースポーツスクールに参加してみませんか?』と言ってくれました。 それが29年前のことです」

以来、フローンと彼の妻はポルシェ・トラック・エクスペリエンスに参加し続けている。「最初は安全のために参加しました。いつも楽しく受講しています。今は、911 GT3 RSのすべてについて、学び続けていますよ」と、フローンは肩をすくめた。

ブラジルのポルトアレグレからはるばるやってきたのは、レオナルド・フラサォン。彼は年に4回はヨーロッパへと飛び、ポルシェ・トラック・エクスペリエンスに参加している。

「本当に最高のイベントです。世界中から同じ情熱を持った友達がたくさんできますから……。そしてレースと変わらないドライビングを体験できます。昨日と今日だけで、4秒もタイムが上がったんです!」と、フラサォンは興奮を隠さない。

過去50年間、ポルシェはこのように情熱的なアマチュアドライバーを、野心的なレーシングドライバーへと育ててきた。夕方、参加者全員が再びパドックに集まり、ポルシェ・トラック・エクスペリエンスは幕を下ろす。スティーヴィー・ワンダーのハッピー・バースデーがスピーカーから流れる中、大きな「50」の文字が描かれたケーキが、参加者に振る舞われた。

50年前に始まったポルシェらしい試みは、この場所から次の50年へと続いていくのだ。

「ポルシェ・トラック・エクスペリエンス」を動画でチェック!

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…