ベントレー史上最高の燃費を誇るベンテイガ ハイブリッドを試す

文武両道の異才。ベントレー ベンテイガ ハイブリッド初試乗!

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドの走行シーン
各部をブラッシュアップしたベントレー ベンテイガ ハイブリッドを公道初試乗。
現行ベンテイガにプラグインハイブリッド(PHV)が加わった。ベンテイガのPHVは先代に続いてのラインナップだ。V6エンジンにモーターを組み合わせ、約50kmのEV走行を可能としている。上陸を果たしたばかりの注目の1台を路上に連れ出した。

Bentley Bentayga Hybrid

熟成を重ねたスーパーラグジュアリーSUVのハイブリッドモデル

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドの走行シーン
ベンテイガ ハイブリッドは3.0リッターV6ツインターボと電動モーターを協調させ、最高速度254km/h、0-100km/h加速5.5秒のパフォーマンスを計上。総走行距離は約858km(NEDC)を標榜する。

2019年7月、ベントレーは創立100周年を記念し、コンセプトカーのEXP100GTを発表した。最高速300km/h、0-100km/h加速2.5秒のハイパフォーマンスも話題となったが、それ以上にインテリアにサステイナブルな素材が用いられたことが注目された。ベントレーはこのコンセプトカーによって、脱炭素という世間の要請を受け入れ、次の100年もラグジュアリーブランドとして君臨することを宣言したのだった。

その2ヵ月後に発売されたのが初代ベンテイガ ハイブリッドだ。スーパーラグジュアリーSUVジャンルとしては初の電動車だ。ただそのモデルは欧州を中心に販売され、日本へは導入されなかった。2年後、モデルチェンジしたベンテイガにもハイブリッドが追加され、今度は日本にも導入されることになった。11月2日に国内発表会が開催され、そのわずか2日後に会場でアンヴェールされた車両そのものを試乗することができた。

エンジン+モーターでシステム最高出力は449ps、最大トルク700Nmを発生

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドのエンジン
3.0リッターのV6ツインスクロールターボを搭載。さらにモーターが加わることで約2.7トンのボディを0-100km/h加速5.5秒で引っ張る。

じっくり眺めても、外観からは電動車であることを示す部分はボディサイドに小さく「ハイブリッド」のバッジがあるのみ。パワートレインは3.0リッターV6ツインスクロールターボエンジンと電気モーターを組み合わせたPHVで、リチウムイオンバッテリーの総電力量は17.3kWh。エンジンは最高出力340ps、最大トルク450Nmを発揮し、モーターは同128ps、同350Nmを発揮する。システム全体としての最高出力は449ps、最大トルクは700Nm。

4.0リッターV8ツインターボエンジン(同550ps、同770Nm)を搭載するベンテイガV8と比較すると、最高速はV8の290km/hに対しハイブリッドは254km/h、0-100km/h加速はV8の4.5秒に対しハイブリッドが5.5秒。いずれも十分なスペックであることは間違いないが、ピーク値はハイブリッドのほうがやや控えめだ。

粛々と進むドライブフィール

こうしたスペックをざっと頭に入れた上でハイブリッドのステアリングホイールを握った。バッテリーに十分な電力が残っている限り、スタートボタンを押すと毎回EVモードが選択される。アクセルペダルを穏やかに踏み込むと、2648kgの巨体は静々と前進を始める。この辺りのスムーズさはモーター駆動ならではと言いたいところだが、ベンテイガの場合、純内燃機関モデルであっても静々と発進するため、特別な感じはしない。

一般道を走行する限り、EVモードで事足りる。より正確に伝えると、これ以上高い負荷をかけるとEVモードではカバーしきれずエンジンがかかるよ、ということをアクセルペダルに抵抗感を設定することでドライバーに伝えてくれる。これを受け、踏み越えない範囲で走行すればエンジンはかからない。抵抗を感じるところで踏みとどまってもじわじわと車速は上がるので、できるだけエンジンを始動させないゲームを楽しむかのように走行することもできる。ベントレーはこれを「エフィシェンシー・アクセルペダル」と命名し、キャンセルすることもできる。より勢いのある加速を望むなら、抵抗を踏み越えるように右足に力を込めればよい。それでもほとんど振動は感じず、エンジン音だけがほんのりと車内に響くと同時に勢いのある加速が手に入る。

最大約50kmのEV走行が可能

EVモードは最大31マイル(50km)の走行が可能(NEDC)。また車速が時速84マイル(135km/h)を超えるとバッテリー残量にかかわらずエンジンによる走行に切り替わる。

EVモードのほかにハイブリッドモードとホールドモードがある。ハイブリッドモードを選んでもEVモード同様、低負荷時にモーター走行、高負荷時にエンジンが加勢という基本パターンは変わらないのだが、実はこのモード、インテリジェントモードと呼んでもおかしくない。カーナビと連動し、ルートの途中に市街地がある場合、その区間でできるだけEV走行ができるように、その手前でバッテリーを使い切ってしまわぬよう、負荷にかかわらず適宜エンジンがかかるほか、目的地に到着した時点でバッテリーの電力を使い切るような設定となるのだそうだ。

短時間の試乗だったため、実感する機会はなかった。ホールドモードは選択した時点のバッテリー残量を維持すべく調整される。またスポーツモードを選ぶと自動的にホールドモードとなる。近所を走行する場合はEVモードを選び(というか毎回これで始まる)、カーナビに目的地を設定して遠出する場合にはハイブリッドモードを選ぶのが、賢く正しい使い方といえそうだ。

多くのベンテイガユーザーにとって最適なパワートレインだ

ベントレー ベンテイガ ハイブリッドのリヤスタイル
ベントレー史上最高の省燃費モデル、ベンテイガ ハイブリッド。試乗を終えた筆者は「パフォーマンスのピーク値はV8よりも控えめだが、日常域でパワー不足を感じたことは一瞬たりともないという事実を付け加えておきたい」と語る。

こうしたインテリジェントな機能のかいもあってか、ベンテイガハイブリッドのCO2排出量はV8モデルの294g/kmの3分の1未満の83g/kmにとどまる(WLTP)。これがどの程度実質的な燃費の差となって現れるかは使い方次第だが、都市部中心の使い方であれば、過去100年のどのベントレーよりも圧倒的に燃費のよいモデルとなることは間違いない。

そしてベントレーによれば、ベンテイガユーザーの74%が日常的に街なかで運転するという。つまりベンテイガハイブリッドは、多くのベンテイガユーザーにとって最適なパワートレインと言える。パフォーマンスのピーク値はV8よりも控えめだが、日常域でパワー不足を感じたことは一瞬たりともないという事実を付け加えておきたい。価格はV8モデルと同一の2269万円。悩ましい選択となりそうだ。

ベントレー ベンテイガ V8とベンテイガ スピードの2ショット

非公開: ハイブランドSUVを牽引するベンテイガ! V8とW12、それぞれの魅力を探る 【ベントレー特集:01】

ベントレー初のSUVであるベンテイガ。道なき道を行くタフネスさとファミリーの長距離移動も余裕でこなす実用性、そしてベントレーならではの美しさと豪華さを併せ持つ究極の1台だ。W12とV8という異なるパワーユニットのベンテイガを連れ出し、その魅力の本質を探ろう。

REPORT/塩見 智(Satoshi SHIOMI)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2022年 1月号

【SPECIFICATIONS】
ベントレー ベンテイガ ハイブリッド
ボディサイズ:全長5125 全幅2010 全高1710mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:2648kg
エンジン:V型6気筒DOHCツインターボ
排気量:2995cc
最高出力:250kW(340ps)/5300-6400rpm
最大トルク:450Nm/1340-5300rpm
モーター最高出力:128ps
モーター最大トルク:350Nm
システム最高出力:330kW(449ps)/-rpm
システム最大トルク:700Nm(71.4kgm)/-rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後285/45ZR21
最高速度:254km/h
0-100km/h加速:5.5秒
車両本体価格(税込):2269万円

【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797

【関連リンク】
・ベントレー 公式サイト
https://www.bentleymotors.jp/

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著者プロフィール

塩見 智 近影

塩見 智

1972年岡山県生まれ。1995年に山陽新聞社入社、2000年に『ベストカー』編集部へ。2004年に二玄社『NAVI』…