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Porsche Cayenne
ポルシェの世界に多様性をもたらしたカイエン
20年という歳月で世界を変えることは、そうそうあることではない。しかし、カイエンは少なくともポルシェの世界に革命をもたらすことになった。911、ボクスターに続く“第3のポルシェ”として2002年にデビューしたカイエンは、当時はまだポルシェになかったラグジュアリーSUVモデルという、新たなセグメントを開拓した。
SUVマーケットの新たな選択肢として販売的に大成功しただけでなく、ポルシェのラインナップにさらなる”多様性”を持ち込むことになった。カイエンに続き、ポルシェはパナメーラ、マカン、そしてフル電動モデルのタイカンをデビュさせ、矢継ぎ早に4ドアモデルのラインアップを充実化させていった。
2017年に発売された現行型3代目カイエンは、パワーユニットや仕様など豊富なバリエーションを展開している。ファミリーカー、堅牢なオフローダー、広々としたスペースを持つスポーツカーなど、その高いユーティリティ性能をいかんなく発揮し、使う人によって、その可能性は無限大に広げられる。その一部をご紹介しよう。
カイエン カメラカー(2014)
娯楽映画においては、ワイルドなカーチェイス、ダイナミックなスタントなど、様々なアクションが肝要となる。息を呑むようなシーンであればあるほど観客は熱狂する。ウクライナ出身のエンジニア、アナトリー・コクシュ(Anatoliy Kokush)は1980年代、スリリングなシーンを撮影するために究極のシステムを開発した。
ロシア製アームはリモコンで360度回転し、150km/h巡航中でもカメラを全方位に向けることが可能。このハイテククレーンのベースに、ダイナミックな性能を持つカイエンは最適な存在だった。スピードと俊敏性を持つだけでなく、撮影クルーのための十分なスペースも確保。コクシュは、自由自在に動くクレーンの発明を評価され、2006年にアカデミー賞を獲得した。
写真のカメラカーのベースとなったのは、2014年式カイエン ターボだ。リモコンで操作可能なクレーンアームは4~7mで伸縮し、360度回転するカメラは電子制御で常に安定した画角が維持され、振動も補正されるという。
カイエン キャンパー(2021)
海軍出身のハリソン・ショーエン(Harrison Schoen)は、走行距離は20万kmの2008年式カイエン Sをベースにキャンピングカーを製作した。3インチのリフトアップキット、チューブラー式アッパーコントロールアーム、ポリブッシュ式ロワフロント・コントロールアーム、ストレージボックス、ルーフラックを追加し、2021年春に移動式の「ホーム」が完成した。
「海軍を退役し、私は人生の短さを実感しました。様々な場所を訪れながら、その途中で生計を立てるチャンスがあるのなら、そうすべきだと考えたのです」と、ショーエン。
以来、ショーエンはカイエンの中で眠り、キャンプ用コンロで料理を作り、屋根に取り付けたストレージに納められたシャワーで入浴している。彼はアメリカ西部の最も困難な山岳部を走破し、アメリカに存在するすべての国立公園を訪れ、さらにはアラスカまで到達することを目指しているという。そして、この旅のすべての過程はインスタグラム(@harry.schoen)で公開中だ。
カイエン セーフティカー(2017)
2017年、ポルシェ・カーズ・オーストラリアは、オーストラリアで最も人気のあるツーリングカーシリーズ「スーパーカー・チャンピオンシップ」に3台のサーキット用オフィシャルカーを提供。パワフルな4.2リッターV型8気筒ターボディーゼルを搭載する2017年式カイエン S ディーゼルをベースに、2台のセーフティカーと1台のメディカルカーが製造された。
カイエン サファリカー(2004)
南アフリカ出身のシェーン・ウェストヘーゼン(Shane Oosthuizen)は、フィアンセと一緒にアフリカ大陸を縦断することを企画する。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックに阻まれたため、計画を変更を余儀なくされてしまった。
2004年式カイエン ターボをベースに、40リットルタンクを増設したルーフラック、ルーフテント、12V冷蔵庫やデジタルサウンドシステムを搭載。ウェストヘーゼンはオーストリアでの改造後、ヨーロッパを横断してオランダへと向かい、そこから南アフリカまで船でカイエンを搬送した。
その後、レソトやボツワナなど、アフリカ南部で様々なトレイルランを敢行。彼らはすでにアフリカとヨーロッパで約10万kmを走破しており、さらなる冒険を計画しているという。
カイエン アンビュランス(2015)
スペイン・マドリードの救急サービス「Servicio de Asistencia Municipal de Urgencia y Rescate(SAMUR)」は、2015年から、心肺停止に特化した特別な救急車を使用している。2015年式カイエン S E-ハイブリッドをベースに製作された救急車は、心臓と肺の機能をサポートする体外式膜酸素化(ECMO)装置を搭載しており、心臓発作を起こした人の命を救うことが可能になっている。
製造を担当したポルシェ イベリカは、カイエン アンビュランスをSAMURに寄贈。カイエン S E-ハイブリッドは高い走行性能に加えて、必要な機器を搭載するのに十分なスペースが確保されている。また、プラグインハイブリッド・パワートレインを搭載しているため、マドリード市内ではEVモードで走行する。